いざ出発ー!
おじいちゃんに別れを告げた後、わたしたちは一旦宿に戻った。荷物をまとめたり精算したりしたら、とうとう旅立ちのときだった。
ニーニヤの街の外に出ると、カイが指笛をピュイ、と鳴らし、クロムを呼び寄せる。しばらくすると、空からバサバサと羽の音をさせながらクロムが舞い降りてきた。すごい! 今くらいの小さな音でも聞こえるんだね!
「クロムー!」
嬉しくなって思わず抱きつく。初めは怖かったけど、名前を呼んで乗せてもらったりしたせいだろうか、今はただ可愛くて仕方がない。クロム可愛いよクロム。
そんな風にクロムのもふもふの毛皮を堪能してると、背後でカイが楽しそうに笑う。さっきまでの怖いオーラどこいったんですかあなた。
「慣れるの早いな、ナギ。よかったな、クロム。怖がられなくて」
クロムがぐるる、と喉を鳴らして応える。今まで猫派だったけど、これから虎派に乗り換えよう。いやほぼ一緒だけど。
「クロム〜、よろしく頼む〜」
クロムにそう言うと、顔をスリスリしてくれた。も〜、賢いやつめ。可愛い!
わたしがひとしきりクロムと戯れて満足したのを見たカイは、鞍らしきものをクロムに乗せ、そこに荷物をくくりつけた。あ、鞍あったのね。なんで鞍なしで乗ってたの、前回。
「これ」
「鞍か? さすがに荷物があるのに鞍なしはキツイからな。ナギもあったほうが楽だろう?」
「鞍。クロム荷物、鞍?」
「そうだ」
「俺も?」
「……わたし、だ」
「わたしも」
荷物は少なかった。どこぞの猫型ロボットのポケットのように、買ったものがすべて鞄にしまわれたのを見たときは驚いたものだ。この鞍もそこから出てきた。
[なんかワクワクするね!]
「楽しそうだな、ナギ」
「楽しそう!」
テンションがあがったわたしに、カイが破顔する。笑うと優しそうなのになぁ。普段はやや強面なイケメンなのが残念な人である。無精髭剃って笑ってればモテそうなのに。いや、わたしが知らないだけでモテモテかもだけど。
「カイ、行くぞ?」
「ん? どこに行くか気になるのか?」
「どこに行くか?」
カイはひらりとクロムにまたがると、わたしにむかって手を伸ばす。その手を借りて、えいやっとクロムによじ登ると、待ち構えていたカイが引き上げてくれた。
「特に決めてないが、これから南は雨季に入る。だから……うーん、北のほうかな」
「北のほうかな行くぞ?」
「北のほうに行く」
「北のほうに行く!」
訊いたものの、“行く”しか理解できていないので、結局どこに行くかは不明だった。まぁ行けばわかるか!
旅と言えば、夏に幼なじみのアヤちゃんと、秋に大学の友達であるみぃちゃんとチサと、それぞれ旅行に行く予定立ててたんだっけ。それまでに帰りたいなぁ。帰れるといいなぁ。
--いけない、つい感傷に浸りそうになる。帰るためにはこの世界に慣れて方法を探さなきゃダメだ。そのためには立ち止まってる暇なんかない!
「行くぞ〜!」
わたしは気合いを入れた。クロムの頸にしがみつく。カイがまたわたしを固定してくれたので、一安心だ。
背中でカイとわたしが安定したのがわかったのか、クロムがばさりと翼を広げた。
バイバイ、ニーニヤの街。では、いざ、しゅっぱ〜つ‼︎




