めざせ、魔法使い凪沙!
その後、料理や食器などの目につくものの名前を訊いて覚えつつ、楽しく食事を終えた。有意義な時間だった。
「カイ、ありがとう!」
「おう」
「おう!」
「……どういたしまして」
「どういたしまして!」
ほらね、たった一日でこんな風に会話もできるようになったよ! 記憶力と耳がよくてよかった! ノートと筆記用具もあったから、メモもしとけるし。
よかったといえば、視力もよくてよかったなぁとつくづく思う。目が悪い人が異世界トリップなんかした日には、コンタクトのケアに心底困ると思う。眼鏡ならまだいいけど。
ホント、両親に感謝だ。お父さんお母さんありがとう!
「ナギ、行くぞ」
会話が上達してニマニマしてるわたしに、カイが言う。あ、出かけるんだね!
「そうだ、ギルド行くぞ!」
うん、ギルドに行こう行こう!
元気にそう返すと、食器を引きに来たメルルさんが、心底残念そうにカイを見やった。
「……カイ、あんたの言葉が荒くて、ナギちゃん不憫なことになってるよ」
「……善処する」
なんで二人ともため息つくの⁉︎
さて、昨日来た道を逆にたどり、わたしとカイはギルドにやってきた。朝まだ早いせいか、人はまばらだ。
カイは昨日とは違う窓口に向かうと、担当のお姉さんに話しかける。
「練習室を借りたい。一番広い場所はあいてるか?」
「はい、今日はまだどなたも使用していませんので、大丈夫ですよ。時間はどれだけですか?」
「とりあえず二刻で」
カイが指を二本立てる。二つ? 二人? 二時間? 二日? よくわからないけどなにかを頼んでいるようだ。
カイがカードを渡す。お姉さんはカードを預かって手前の機械で作業をすると、カードと一緒に鍵を一本渡してきた。
「行くぞ」
どこへ行くんだろう? 昨日みたくカウンター奥に案内されないということは、違う部屋に行くのだろう。
カイについて行くと、石造りのなにもない部屋に着いた。窓もない、だだっ広い部屋だ。壁に空気を通すための細いスリットがいくつか入っていて、その近くに松明がかかげてある。
「ナギ、魔法を使ってみよう」
「魔法?」
「これが使えるか使えないかで、これからの行動が変わる。使えるといいんだが……。俺は魔力がほぼないから魔法は使えないが、使い方を教えることはできると思う」
カイが真剣な顔をした。わたしも倣って真面目な表情を作る。
カイはちょっとためらった後、わたしの手を取った。
「初歩魔法だ。魔力の誘導くらいはできると思うから、俺と同じ言葉を言え。わかるか?」
すう、とカイが深呼吸をした。ぽわ、とつないだ手にあたたかいなにかが伝わる。
「《光あれ》」
「《光あれ》」
カイの真似をして深呼吸をし、耳をすます。ゆっくり呟くカイの声を聞きながら、同じように発音してみた。とても短い単語だったので、難なく繰り返せた。なんだろう、なにが起きるのかな⁇
そう思った瞬間だった。弾けるように、カッと眩いばかりの閃光が奔った。




