表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/122

やっぱり夢ではありませんでした!

 窓から差し込む陽の光で目が醒めた。今何時だろう。時計代わりのスマホを探そうと枕元に手をやって気づいた。見慣れた天井がない。ここはどこだ。


[……っ!]


 一瞬にして正気に返る。どうやら昨日の出来事は夢ではなかったらしい。あのあとさらに着替えた寝間着代わりのシャツの胸元を握りしめ、ため息をひとつつく。


[やっぱり、現実かぁ……]


 万に一つの“夢でした!”というオチはありえなかったようだ。

 現実ならば仕方がない。頑張るだけだ。幸い、努力するのは嫌いではない。


[目標は帰ること。そのためには情報収集が必要よね。で、やっぱりまずは言葉を覚えるのが先決か]


 自分がやるべきことを改めて確認する。よぉっし、今日も頑張るぞ!

 決意も新たに、わたしは昨夜メルルさんに教わった通りに身支度を整えた。


「カーイー」

「おう、おはよう」

「おはよう!」


 カイと合流し、食堂へ行く。そうだ、お金のこと、今訊いておかねば!


[あのね、宿泊代と洋服代、立て替えてくれてるでしょ? 返したいのでお仕事紹介してください]


 身振り手振りでお金を稼ぎたい旨を伝える。伝わるかなー。

 必死でジェスチャーしていると、ようやくわかってもらえたようだ。まさにジェスチャーゲーム。意外と難しい。


「お金? ん? あぁ、代金のこと気にしてるのか。気にすんな、金にはさして困らん」


 カイは手をひらひらとさせた。えー、紹介してくれないの? 仕事ないと不安なんですが。これからどうしたらいいの、わたし⁇


「そんなことより、これからギルドに行くぞ」

「ギルド?」

「そうだ、練習室をちょっと借りようと思ってな」


 おお、どうやらギルドに行くらしい。ギルドって仕事斡旋してくれるのかな。お願いしてみよう。昨日のおじいちゃんとか偉い立場っぽいし。


「とりあえず飯だな、飯。姐さん、よろしく頼む」

「よろしく頼む!」


 カイが手をあげると、メルルさんがお盆を持って近寄ってきた。見ると、ハムとチーズが挟んであるサンドイッチみたいなのと、サラダが乗っている。


「おいしい!」

「おいしそう、だな」

「メルルさん、おいしそう!」

「ありがとね、うちの人もそう言ってもらえると喜ぶよ」


 カイに教わりつつ褒めると、メルルさんはニコニコ素敵な笑顔を返してくれた。


[いただきまーす]


 地道に言葉数を増やしつつ、朝食にありつく。残念なことに“いただきます”に相当する言葉がないのか、はたまたカイにその習慣がないのか、ごはん食べるときの挨拶は覚えられなかったが、“おはよう”と“おいしそう”は覚えたぞ。身振り手振りとリスニングだけでも、意外とイケるじゃん、わたし!


 ご機嫌でサンドイッチを頬張る。チーズもハムも、日本のよりもっと濃い味がした。サラダも野菜がシャキシャキしてておいしい。惜しむらくはドレッシングがないことか。サンドイッチもマヨネーズとかあるとよさそうだけど、そういうのないのかな。せめてパンにバター塗ればおいしさアップだろうに、返す返すも残念である。


「おいしい!」

「よかったな」


 誰かと会話しながらおいしい食べものを食べるとか、最高!

 異世界二日目のはじめは、ご機嫌に始まった。

 ……我ながら図太いな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ