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ギルドに行こう!

 猫みたいな名前の街は、なんてことない普通の街だった。当たり前だけれども、行き交う人々も普通の人に見える。


[なんか映画みたい〜]


 カイは鎧を着てるからよくわからなかったけれど、この世界の住人は中世ヨーロッパ的というか、よくあるファンタジー的な服装をしていた。顔だちも彫りが深い人が多いし、髪や目の色も明るい色彩が主のようだ。建物もアジアよりヨーロッパに似ている。


 ときおりチラチラとこちらを見ていく人が多いのは、やはりわたしの格好が浮いているからだろうか。ドイツやフランスの雑踏にアジア人が一人。そりゃ浮くのも仕方ないというものである。


「ギルドはこっちだ」


 カイが立ち止まるわたしの手を引いた。はぐれないようにということだろうけど、男性と手をつないで歩くのが久しぶりすぎてドキドキしてしまう。小さなわたしの手をすっぽり包んでしまうくらい大きな手。安心感とドキドキがないまぜになって、頭がぐるぐるする。落ち着け、わたし。

 内心葛藤しているわたしをよそに、カイは平気な顔をしている。慣れてるのか、このおっさん。あれ、それとも子ども扱いされてる⁇


「ナギ」

[ふわぁあぃっっ⁉︎]


 突然声をかけられて声がうわずった。慌てるわたしを見てカイが笑う。失敬な。


「ギルドだ」

「ギルド?」


 たどり着いたところは二階建ての大きな建物だった。入り口にドアがなく、大きな間口を広げているのが特徴的だ。通りに突き出すように、洒落たアイアンの看板が飾られている。


「ここは職業ギルド。商業ギルドはまた別にある。まずは依頼終了の手続きをするからついてこい」


 剣と盾が交差している看板を指差して、カイがなにかを説明してくれた。多分どういうお店かという話なんだろうけど、いかんせんちんぷんかんぷんだ。


 武器屋かな?と覗き込んだら、まったく違っていた。奥に大きなカウンターがあり、受付らしい人が何人かいる。壁にはたくさんの紙が貼られており、カウンターと掲示板の前には、何人かいかつい容貌の男性がたむろしていた。どちらかというと役所に近い雰囲気だ。


 カイはそのうちのひとつの窓口に進んだ。そこだけ人が並んでいないところを見ると、きっと担当が違うのだろう。


「依頼終了の手続きを頼む。あとギルマスはいるか? 至急確認したいことがある」

「依頼終了ですね、わかりました。ギルドマスターは今なら手隙かと思いますので、うかがってまいります」


 受付は眼鏡をかけた男性だった。カイと同じくらいの年頃に見える、いかにも役所にいそうな、真面目そうな人だった。

 この世界にも眼鏡ってあるんだ、と興味津々で覗いていたのがバレたのか、男性がちらりとこちらへ視線を寄越した。ジャパニーズ曖昧スマイルでごまかす。


 受付の人はなにも言わず書類を持って奥へ引っ込んだ。入り口に扉はなかったが、カウンターの奥には重厚な扉が設えてあった。


「ここのギルマスは見た目怖い爺さんだが、悪い人間じゃねえ。安心しな」


 眼鏡さんはすぐ戻ってきた。一言二言カイと言葉を交わすと、カウンター脇の出入り口から出てくる。


「行くぞ」


 カイが眼鏡さんの立つ出入り口を指すと、わたしの手を引いたまま歩き出した。今のは「行く」って言ったのかな? これは今後使えそうな単語だ。


「行くぞ!」


 嬉しくなって早速使ってみると、眼鏡さんが変な顔をした。あれ、間違ってました⁇

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