とある青年の、第二の人生の始まりのお話
「……って感じですかね」
『マジ、すびばぜんでじだ……!』
『今回の不手際、何とお詫び申し上げたら良いか……!』
真っ白な空間にポツンと置かれたちゃぶ台を挟み、一息ついてお茶を啜る青年と、深々と綺麗な土下座を決める銀髪の少女、そしてその保護者っぽい、凄い申し訳なさそうな表情を浮かべる女性の姿がありました。
……あ、青年って俺ね。んでここは所謂天国?ってとこなんだってさ。ここに来た経緯については……前話の最後の一行読んだら分かるよ、うん。
メタい?コレ日記だからそんなの関係ねぇです。
そんで何故俺が銀髪の少女と美女に謝罪されてるかと言うと、これまたありきたりと言うか何と言うか、さっきの事故に遭い掛けてた少女がその銀髪の少女らしい。
なんでも、地球にお忍びで来てたらしいんだけど、現地人に怪しまれないように、能力が制限してたんだと。で、どうやらこの少女、天国でそれなりの地位にありながら、仕事が杜撰だからって他の人達に随分と恨みを買っていたようで。
一応天国の人間だから、下界では何やっても死なないっていう話らしく、地球に行ったまさに今!恨み晴らさで置くべきかー!って集団決起されたらしい。
……お前ら天国の人間だろ?俺らからすると天使とかその辺のポジションなんだろ?何ゲスい事考えて実行したの?って思うのは、きっと俺だけじゃない。
ま、恨みを買った人間も大概だろうとは思うけど。
んで、その人達は考えた。地球でごく自然にプチッと殺るには、居眠り運転でもしたトラックやらバスやらに轢かせればいいんじゃね?と。
この間僅か0.2秒……とはいかないけど、ほんの数分で決定となったその作戦なんだけど、いざ天国のスーパーパワー的な何かを使って少女を道路に向けて転ばせて、待ってましたと言わんばかりに用意した居眠り運転手付きバスを時速140キロでぶつけようとしたら……そこには少女を助けている最中の俺がいた。
あ、と思った瞬間には既に俺は某サッカー漫画のように『ふっとばされたー』状態になってて、俺に抱きかかえられた少女はなんとか無傷。
やっべぇ、逃げよう、と思った時には時既に遅し。その集団の眼前にはこの『申し訳なさそうな表情を浮かべてる銀髪の美女』が、笑顔で『テメェら何しくさっとんじゃゴルァ』と言わんばかりのオーラを放って仁王立ちしておられたそうな。
……つまり、俺は天国の集団による怨恨凄まじい『故意の事故』に巻き込まれて死んだ、そういう事なんだって。
んで、俺は気がついたらここにいて、前にはちゃぶ台を挟んで土下座する少女と頭を下げる美女、傍らには積まれた数人の女性の屍の山があった、というワケ。
まぁ死んでないけどさ、その女性達。
そこから何故か俺の一生を教えてくださいって美女の方に言われたから、またメタいけど前話の内容を説明してたら、少女がガチ泣きし出して若干困惑してるってのが現状です。
「……で、俺は何で前世……前世?まぁいいや、とりあえず一生について語らなきゃならんかったんですかね?」
自分で言うのもなんだけど、他人が聞いても対応に困る内容だったと思うんだけど。…あ、佐藤さん達どうしてんだろ?一応両親の保険金はタンス預金にしてたから好きに使ってくれとは伝えてたし…大丈夫かな?
あとは俺のPCのDドライブは抜かりなく消去してくださいね利夫さん…!
あ、佐藤さんご夫妻の旦那さんの方ね。あの人も畳の下の危ないDVDとか持ってるし、PCの外付けHDDに画像もたっぷりあるから、俺のPCの事も分かってくれてるハズ…!
『……今回はこちらの落ち度で、まだ先の長い貴方様の人生を終わらせてしまいました。なので、私が管理する別の世界での、第二の人生を始めてみませんか?』
「何ですかそのケータイ小説よろしくなテンプレなシチュエーション。別の世界とやらには魔物とかが跋扈していて、地球の人間がそのまま行っても無駄死にするだけだから能力を差し上げますーとかそんなオプションも付くんですか?」
『え?よくご存知ですね。以前に一度だけ転生させた方々はよくご存じ無くて、こちらが提供する度に大歓声で驚いてらっしゃったものですが』
おっほっほぅ、元気だ……じゃねぇや。
え?ホント何この状況。俺が異世界に転生?チートも貰える?
「いや、ちょっと家族に申し訳ないんですけどその待遇。別に今までの人生でやり残した事も……無くはないですけど、言う程悔いが残る人生じゃなかったんで、このまま天国に続く扉開けちゃったりしても全然いいんですけど。」
俺だけ……ってのはなぁ。別に、両親と妹の魂呼び寄せて、この人達も一緒じゃなきゃ嫌ですーなんてワガママを通したいと思ってるワケじゃないけどさ…
『あ、いえ…。以前転生させたご夫妻と少女からのお願いですのでコレ。』
「え?」
―紗神 悠斗という人間がもし、天寿を全うしてもそうでなくても、私達と同じようにもう一度人生を歩み出せるのであれば、家族でなくてもいい、また同じ世界で会えますように―
『あなたがその紗神悠斗さん、ですよね?』
「アッハイ」
……
え?