名門!?霞ヶ咲高校!!
新入生を祝うかのように桜の花びらが舞う中、校門の前で一人佇む男子生徒。
この春からこの県立・霞ヶ咲高等学校に入学することになった彼、御沢恭介は他の生徒が
まだ慣れていない校内でキョロキョロとしているのとは対照的に迷うことなくある場所へと向かっていた。
第二グラウンド。
県内でも屈指のスポーツ校であるここ霞ヶ咲高校ではグラウンド、体育館などといった設備が整っている。
その中でも何故、御沢が第二グラウンドへ向かっているかというと…
「それにしても強豪校でもこういうのってあるんだなあ」
手に持った紙を見ながら御沢が呟く。
そこには「めざせ!甲子園!!霞ヶ咲高校硬式野球部!! ※第二グラウンドにて活動中」と書かれていた。
御沢が疑問に思うのも無理はなかった。
県内でも有数のスポーツの名門である霞ヶ咲の中でも特に輝かしい成績を残しているのが野球部なのだ。
県で甲子園を目指している者ならまずここの野球部に入部する筈であり、こんな胡散臭い勧誘のチラシなど作らずとも
入部希望者は山ほど訪れるはずだ。
「まあこんな名門のことだからな…おおかた入部者は多くても一週間もたないで辞めてく奴が多いんだろうな。それで以外にも人が足りないってわけか」
どうにか無理矢理結論を導き出したころ、御沢は目的地である第二グラウンドに到着した。
しかし、そこで御沢の目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。
血ヘドを吐きながら練習に身を削る上級生達…といった名門らしい光景ではもちろんなく、
そこにはグラウンドの真ん中で机を構えた眼鏡の男がいた。
そうただそれだけ。
野球部の練習など行われていないどころか、その怪しげな眼鏡の男のみだったのだ。
「あれ~?確かに第二グラウンドだよなココ…」
目の前の光景が信じられずに手に持ったチラシとグラウンドの看板を見比べる御沢。
そんな彼をグラウンドの中にいる眼鏡の男が発見する。
「おーいっっ!!!もしかしてキミ、野球部の入部希望者ー?」
グラウンドの中央から大声で語りかけてくる眼鏡の男。
どう見ても普通じゃないその男に対して警戒心を抱いていた御沢だったが、
『野球部』という言葉に反応し、とりあえずグラウンドに足を踏み入れ、男の元へと歩き出した。