「私を探さないでください」と置き手紙を残したけど、ごめん撤回させてくれ
「私を探さないでください。絶対に探さないでください」
そう手紙を置いて、私は家を出てきた。
なぜそんな手紙を置いたのか。簡単に説明させてほしい。
私は家族と一緒にまとめて異世界に飛ばされた。
ただ、道路でみんなでビー○ルズごっこをしていただけなのに。
全くひどいじゃないか。トラックが突っ込んで来るなんて。
ただ幸いなことに誰も欠けることなく、しかも家付きの状態から第二の家族生活が始まったんだ。
この世界はいわゆるな剣と魔法のファンタジー世界なのに、それなのに。
私の能力は、ハンバーグが上手に焼けるだけなんだ。みんな氷魔法とかそんなのだったのに。
このままじゃ追放ものみたいに家を追い出されるんだ。
でも、ハンバーグを焼くための牛肉も豚肉もないんだ、この世界。だから、実はこの能力が必要だったんだってことはないんだ。
そうなる前に修行してなんかましなスキルを手に入れてかっこよくなるんだ。
そしたら、かっこいいパパでいられるじゃんね。
後この世界、FXあったからやったら大負けしたのもある。やばい。
ということがあったんだ。
二回探さないで下さいとしたのは念押しの意味と、3回にすると、どうぞどうぞ倶楽部の効果でむしろ探されてしまうから増やせなかったのもある。
そして、今困っている。
何でそんなバカな置き手紙をしたんだ。
探索スキルも何も持ってないからダンジョンから出られん。
「私を探さないでください」と置き手紙を残したけど、ごめん撤回させてくれ。
さっぱり分からん。ほんと探してくれ。
この世界のダンジョンは時間経過で地形が変わるって、敵モンスターが心配して教えてくれたもん。
攻撃すらしてくれなかった。
お前は経験値落ちなそうだからいいや、だって。
確かに弱いし、お金もないからドロップもしないでしょうよ。
そして、ここまでのことを今は、出会ったボス部屋のオークに話していたところだ。
「かわいそうに......流石にお前を襲う気にはなれないわ。そうだ、お金貸してあげようか?」
「どうしてだ?」
「ほら、FXで取り返したらいいじゃん」
「確かに」
オークがお金を貸してくれた。
10分後......
「お前、FXやめたほうがいいよ」
全部溶けた。
「はぁ......」
「げ、元気出せよ。ほら、俺と一緒にダンジョン探索、がんばろ? な?」
オークが優しい。
オークと一緒に隠し部屋がないかを探すことにした。
だって、ボスはこのオークさんだし。
「あったぞ、こっちだ!!」
うろうろしながら、近くのスライムたちもオークさんの指示に従って、隠し部屋探しを手伝ってくれた。
そして、隠し部屋の宝箱を開けると、そこにはなんと......!
「すごい、牛肉のミンチだ。保冷バッグも一緒に入ってる」
「お前、良かったな。早く家に帰って、家族に謝ってこいよ。それで美味しいハンバーグ作ってやれ」
「ありがとう!! またな!!」
そう言って私は駆け出した。
出口どこだ。
「あのー......お久しぶりです。オークさん、道案内お願いしてもいいですか」
「お。おう」
優しさが染みるぜ。
なんとかダンジョンから出ることができた。
「今度こそ、ありがとう!!」
オークさんに感謝を告げて、家に帰った。
「あ、な、た?」
「ひゃいい......」
「まず謝ることは?」
「FXで大負けしました」
「うん。他には?」
「スキル弱すぎて悲しかったので家出しました」
「そうね。それで、そこにある保冷バッグは何?」
「あ、これは、牛肉のミンチです」
「え、ほんとに?」
「はい」
なんでFXのことそんなにあっさりなんだろう。結構溶かしたはずなんだけど。
「あの、FXのこと、いいの? というか、さっきから子供たちを見かけないんだけど」
「いいわよ」
妻が私、いやその後ろに声をかける。
「「えーい」」
二人分の体当たりを後ろから受ける。
「「どっきり大成功!!!」」
ん?
どっきり?
「えっとね、パパがやってたえふ、えっくす? ってやつママが作った嘘のサイトだよ!!」
「あとね、ダンジョン行ったでしょ、オークさんとママ仲良しだから、なんか話聞いてあげて、って頼んでたみたい」
子供たちがくちぐちに喜んだように説明をする。
つまり、妻の手のひらの上で遊ばれていたわけだ。
恥ずかしい。
「えーっと、その置き手紙あるだろ?」
机に置いてある、私を探さないでくださいのやつだ。
「ん、ええ」
「一回それ撤回したつもりだったんだけど、それもう一回撤回で!!」
私は走って逃げた。
「まちなさーい!!! ハンバーグ頑張って作ってよ!!!」
後ろから妻の声がする。
「パパまてー!!」
「ハンバーグ、俺も食いたーい!!」
オークさんの声もする。
程なくして俺は捕まった。
そしてみんなで笑い合って俺はハンバーグを作った。
その時のみんなの笑顔が忘れられなくて、俺はまた置き手紙を残した。
「私を探さないでください、ハンバーグ職人になって帰ってきます」




