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あなたの感情、買い取ります。  作者: ここ
第2章 自己嫌悪
7/8

無能、人生負け組、ゲームオーバー。

渡辺凌 23歳 会社員

「まぁ、次があるさ。頑張れよ。」


そんなこと、言わないでくれないか。


その言葉は優しさのはずなのに、余計に自分の情けなさを突きつけられる。


入社して一年が経った。

それなのに、このプレゼンの出来栄え。


正直、しんどい。


同期はどんどん成長している。

俺は、プレゼンができないだけじゃない。取引先との会話も噛み合わない。


対人が無理なら資料作りで挽回しようと思った。

けれど、一つの資料を作るのに、他の人の二倍は時間がかかる。


もう分かるだろう。


俺は、いわゆるー



「無能」だ。



学生の頃は、こんなんじゃなかった。


黙々と勉強していればよかった。

やればやるほど結果が出る世界は、俺にとって分かりやすかった。


そこそこ努力して、頭が良いとされる国立大学に進学した。



就職するまでは、自分は“勝ち組”なんだと思っていた。



高校までは、明るい性格とは言えなかったが、勉強はできたし、狭いコミュニティながら友達もいた。


人生の雲行きが怪しくなったのは、大学四年、就職活動のときだ。


内定が、なかなかもらえなかった。


学歴フィルターで落とされることはなかった。

一次審査は毎回通った。


問題は、その先だった。


面接が、壊滅的にできなかった。


周りがハキハキと学生時代の経験や将来の展望を語る中、俺だけが口ごもる。


「えっと、その……あの、すみません。」


その時点で、もう分かっていた。


勉強ができることと、社会で通用することは違うのだと。


何社も落ち、ようやく名の知れた企業から内定をもらえた。


だが、内定式後の飲み会の時点で、俺は少し浮いていた。


それをごまかすように、酒を注ぎ、料理を取り分け、笑顔を作る。


そんなやつが、社会人として上手くやれるはずもなく。


今日。

今までで一番力を入れたプレゼンで、見事に失敗した。


上司には呆れられ、同期は同情の目を向けられた。

最近入った後輩にさえも影で笑われた。



いつからこうなった。

俺の人生、こんなストーリーじゃなかったはずだ。



残った仕事に手をつける気にもなれず、周囲が帰り始めるのに合わせて、目立たないように会社を出た。


空は暗い。

ぽつぽつと雨が落ちてくる。


だからだろうか。


顔が、水でぐしゃぐしゃだった。



「あぁ……全部、」



やり直せたらいいのに。



その言葉がこぼれ落ちる寸前。


ガッシャン!!


何かが割れる音がした。


やってしまった。


視線を落とすと、プランターが倒れている。

俺の足が当たったのだ。


見事に咲いていたはずの花は、土ごと崩れ、無惨に潰れていた。


俺は、何一つまともにできない。


とにかく、謝らなければ。


この花を育てていたであろう建物を見上げる。


小さな看板が目に入った。


「こころ堂?」


いつもの帰り道のはずなのに、こんな店があっただろうか。


考えている場合じゃない。


俺は、錆びて茶色くなったドアハンドルに手をかけた。

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