蠱毒を勝ち抜いたアダルトDVDの話
いやまあ、ホントたいした話じゃないんですよ。
私がまだ20代の頃ですが、ある小規模な古書店チェーンに勤めておりました。私はそこで主にゲームの仕事を任されていまして。新品ゲームの発注とか値付け、中古の買取価格や販売価格の調整、売り場作りなどですね。PS2全盛でニンテンドーDSやPSPが発売されたりしましたね。
あとXBOX360を試遊台付きで大々的にコーナー展開した覚えもあります。PS3との小競合い、やってて面白かったなあ。GK、痴漢、妊娠でしたっけ?ゲハ戦争熱かったですね。
うちの地域には競合は少し離れたところにあるGEOさんくらいで、まあまあ商売になっていたように思います。街の需要をちょうど二分する感じで。地理的にもいい塩梅でした。
しかしここに近々大物が参入してくる。TSUTAYAさんがやってくるぞぉというニュースが届きます。とはいえですね、食い合うのはゲーム分野だけですしね、古書や中古CD・DVDなんかにそう影響はないと思うんですよね。むしろ新刊本や新品CD・DVDがたくさん流通するわけですから、うまくやればビジネスが回りそうです。
ところがうちのオーナーは早々と白旗を揚げることにしました。赤が出る前に撤退しようってね。まあいい判断ですよ。オーナーは他の業種の商売もやってましたし。この商売にさほど思い入れもないし、ここらで手仕舞いにしておこうかとね。
◯ヶ月後に閉店します(覚えてない)。だからいまある在庫をガンガン減らしていきましょうってなりました。たしか残り3カ月くらいの時点だったかな、お客さんにも告知しましてね、段階的に値段を下げていきます。古本をまとめて買うと割引になるとか、そういうのもやりました。
さて、ここからですよ。うちの商材に中古のアダルトDVDがあったんですね。これいいんですよ。これ売りに来る人って処分するのが目的なわけです。買取価格安くても文句言う人なんてほぼいない。でもそこそこの価格で売れていく。利益率ハンパねえって話ですよ。
そのアダルトDVDも減らしていかなければならない。まずちょっと値下げしますね。すると、いいのから売れていくわけです。 動かなくなってきたなあってなったら次の施策。3本まとめ買いで幾ら、5本以上だとさらにお得、みたいなね。また様子見て動かなくなったら値下げ。この繰り返しですね。
そうするとね、いいのがだんだん減っていって、煮詰まってくるんですよ。可視化されてきますよ、負の強豪たちが。早いもの勝ちですからね。私だって最初の方で買いましたよ、いいのを。さっきゴソゴソと押し入れ漁って確認しました。
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!南波杏の登場だ!2本も。懐かしいですね。ムーディーズ史上最も人気だった専属女優だそうですよ。2003年、2004年、2005年と3年連続でMOODYZ大賞・最優秀女優賞を受賞したそうです。スゴイですね。そんな彼女のハイパーデジタルモザイク作品だそうで、もうね、そんじょそこらのモザイクとは見え方が違うと、そうパッケージに書いてありました。いや、ほんとスゴイですね。
なんの話でしたっけ?⋯⋯ああ、そうそう、煮詰まってくるって話ですね。南波杏さんにはまったく関係のない話です。彼女はずっとずっとずっと上澄みですから。
もう閉店まであとわずかとなりました。ここまで勝ち抜いてきたのはいずれ劣らぬ強豪たちです。見守る我々もこのレースの行方が気になってまいりました。いったい誰が最後まで残るのか?
だいたいね、3本とか5本とか選ぼうとするとですよ、まずパッケージの見栄えがいい、単体で名前のある女優をチョイスしますね。それから素人ナンパ物とか、痴漢電車物とか、企画物を選ぶでしょう。人によってはここでネタに走るかもしれない。こんなオモロイのあったぞと、男友だちの家にお土産に持っていったりね。
だから変なのだってけっこう売れるんです。そんな状況を勝ち抜いてきた奴らですよ。まあいろいろありますよね。えげつないハード目なSMとか、スカとかトロとか、だいぶお年を召してらっしゃる女優さんもいましたね。還暦とかなんとか、見た覚えがあります。
でもその程度ならたいしたことないですね。これは余談だが、漫画家の桜玉吉さんがビームの奥村編集長へのお歳暮用に買ったって言ってたの、たしか『大正生まれのAV女優』ってタイトルでしたからね。還暦?若い若い。
お得意の司馬遼太郎先生風余談も飛び出しましたし、そろそろ決着をつけたいとこです。そういう猛者どもの中でついに最後まで勝ち残ったのは?どんなヤベえ奴なんだ?気になるところでしょう。最後はもう持ってけ泥棒的な安さでしたからね。なんでしょうね、まとめ買いからもあぶれ、閉店後1本だけそこに残っておりました。
まさしくタイトルの通り、「蠱毒を勝ち抜いたアダルトDVD」ですよ。特級呪物です。どんなハードなプレイをやってるのか?やっぱあれか、うんこ食ったりしてんのか?
いえいえ、そうじゃないんです。最後に残った1本はとてもシンプルな単体女優物でした。出演者の名前がパッケージに燦然と輝いております。裏返してみてもまったく変態っぽいプレイもしていない。
こう言っちゃなんですが、ただただ、その娘のルックスのクオリティが低い。当時でもすでに修正は当たり前だったはずですが、パッケージ写真ですらかわいくない。出るとこあんま出てないし、引っ込むとこそんな引っ込んでいない。
なんなんだ、どういうことだ?なぜこれを単体作品として世に出した?企画物の詰め合わせの中にいてもチャプタースキップされるレベルだぞ。もう意味がわかりません。こういうことってあるものなんでしょうか?AV有識者の方いらっしゃいましたら教えてください。
それでね、残った特級呪物を私はちゃんと買い取って来たわけです。そりゃそうでしょ、そんなヤベえの捨て置けませんよ。一応中身も確認しました。ごくごく普通のプレイでしたね。せめて声がかわいいのかと最後の望みをかけましたが、そんなこともありませんでした。いっそ彼女がうんこ食ってた方が売れたのかもしれません。そういうの好事家にはプラス要素でしょうし。
さて、我が家にやってきたこのDVD、いまどこにあるでしょうか?
もちろんうちにはありませんよ。どうしたかなんて簡単に予測ができるんじゃないですかね。蠱毒を勝ち抜いた虫さんをどうしますか?誰かに送りつけますよね?
私もその例に漏れず、ちょうど知人の慶事がありましたんで、お祝いの品として送りつけました。ちゃんと由来のひと言添えてね。新婚夫婦の活力にでもなればと、そんな思いです。
いまはその知人との交流は途絶えています。なぜでしょうね。なにか悪いことでも起こっていなければいいのですが⋯⋯




