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下宿のトイレで泣いた夜

掲載日:2026/02/01

※本作は、筆者自身の実体験をもとにした物語です。

読んでくださり、ありがとうございます。

これは、ある高校一年生の実話だ。


本当は、サッカーがしたかった。

けれど兄の影響で、気づけばバスケットボールをしていた。

正直、最初は気が進まなかった。それでもボールを触る時間が増えるにつれ、

いつの間にか、バスケが生活の中心になっていた。


小学校では五年生から二年間、キャプテンを任された。

中学ではもっと強い環境でプレーしたくて、Bリーグユースを目指した。

毎日、自主練を続け、トライアウトに合格した。

三年生になる頃にはスタメンにもなり、全国大会にも出場した。


結果は、満足できるものじゃなかった。

それでも、バスケ中心の人生を歩いてきたという自負はあった。


高校を決める時、正直もっと推薦が来ると思っていた。

だが実際は、四校ほどだった。

その中で選んだのが、偏差値六十八、県内三位の高校だった。


進学と同時に、下宿生活が始まった。


学校、練習、帰宅。

風呂に入り、飯を食い、皿を洗い、洗濯をして、干して、畳む。

練習後の体には、想像以上にきつかった。


その時、初めて思った。

――親って、こんな生活を何年も続けてきたんだ。


両親は朝から晩まで働き、四人兄弟分の生活を支えてきた。

一人分ですら音を上げそうな俺が、

文句を言う資格なんてないと思った。


高一の冬。

大学進学という現実が、急に目の前に現れた。


この高校では、大学進学が当たり前だった。

周りは頭のいいやつばかりで、

進路の話が日常的に飛び交っていた。


俺は、自分の学力を分かっていた。

公立は厳しい。だから私立に行こう。

そう、簡単に決めていた。


帰省した時、親に言った。

「俺、私立に行くけん」


返事は、反対だった。

当然だと思った。

裕福な家じゃない。下宿費だって、楽じゃない。


担任の先生に相談すると、

「ちゃんと説明しよう」と言ってくれた。


なぜ大学に行くのか。

そこで何をしたいのか。


二週間かけて、それをまとめた。


そして、父との電話の日が来た。


「言いたいこと、話してみ」


震える声で、全部話した。

公立は厳しいこと。

私立でやりたいことがあること。

将来の就職のこと。


父は少し考えてから言った。

「大学に行かんで、高卒で働く選択もある」


兄の話をされた。

高卒で働いている兄。

公立大学に通っている兄。


どちらの生き方も、間違いじゃない。


最後に父は聞いた。

「お前が私立に行って、ちゃんと学べるんか?」


その質問が、一番刺さった。


しばらく話したあと、父は言った。

「とりあえず、私立コースはやむを得ない」

「でも、これからもたくさん調べろ」


そして、少し間を置いて、続けた。


「俺と母さんは、朝から晩まで働いとる」

「それでも、お前が最後まで頑張るなら」

「俺たちも、最後まで頑張って支える」


言葉が、出なかった。


電話を切ったあと、

下宿のトイレに入り、ドアを閉めた。

その瞬間、涙が止まらなくなった。


俺は、支えられていた。

分かっていたつもりで、

本当には分かっていなかった。


頑張れよ。

そう言ってくれた父の声が、今も残っている。


親が頑張っていることは、当たり前じゃない。

自分が生きていることも、当たり前じゃない。


人は必ず、誰かに背中を押されている。

それを忘れずに、

今やっていることに、全力で向き合ってほしい。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


この作品は、僕自身が高校一年生である今経験した出来事をもとに書きました。

読んで何か一つでも感じるものがあったなら嬉しいです。


感想やご意見をいただけたら、今後の励みになります。

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