2 未来を変える決意
茶会が終わり、帰り道。
俺は馬車に揺られながら考えていた。
(……やっぱりカトレアは悪い子じゃねぇ)
あれほどやり込んだのに原作の細かいイベントは覚えてねぇ。
でも“追放される未来”だけは強烈に覚えている。
胸がざわつく。
(イベント覚えてないの、致命的じゃねぇか…!どう守りゃいいんだよ…!)
でも、ひとつだけ確信がある。
(カトレアは悪くない。それだけは絶対だ)
だから――
(覚えてないなら、全部潰すしかねぇ。誤解も、イベントも、フラグも、全部)
幼い顔に似合わない決意が宿る。
(俺が守る。未来がどうだったかなんて関係ねぇ。カトレアが泣く未来だけは絶対に変える)
だからこそ、原作の未来が許せねぇ。
(まずは……仲良くなるところからだな)
ルシウスとも距離を縮めて、カトレアの誤解を減らして、原作のイベントを少しずつ変えていく。
馬車が屋敷に着く頃には、エルムの中でひとつの答えが固まっていた。
(カトレアを守る。それが俺の使命だ)
夕暮れの光が、その決意を静かに照らしていた。
自室に戻った俺は机に向かい、紙に「覚えてるイベント」を書き殴っていく。
・ヒロイン、リリィとルシウスの出会い
・カトレアの取り巻き暴走
・誤解イベント連発
・カトレア孤立
・カトレア追放
(…うん、全部地獄だな)
そして、ひとつのイベントに目が止まる。
「入学式後:リリィが転び、ルシウスが受け止める」
(これだ……!ここから全部が始まるんだよな……!)
原作では、この“運命の出会い”をきっかけに
ルシウスの好感度が上がり、
カトレアの立場がじわじわ悪くなる。
(でも俺、細かい場所とかタイミング覚えてねぇ…!中庭?廊下?階段?どこで転ぶんだよリリィ……!)
頭を抱える。
でも、ひとつだけ確実なことがある。
「リリィは転ぶ」
そして、「ルシウスが受け止める」
(…なら、ルシウスより先に俺が受け止めればよくね?)
自分で考えておいて、俺はしばらく固まった。
(いやいやいや…俺がヒロイン受け止めてどうすんだよ…!そんなの原作改変どころか、"別ルート開放"じゃねぇか…!)
でも、他に方法が思いつかない。
(リリィが転ぶのを止める?いや、どこで転ぶか分かんねぇし…そもそも転ぶのが"イベント"だから、止めようとすると逆に発動しそうだし…
ルシウスを遠ざけるとか?いや、王太子だぞ?入学式でそんなことできるかよ……
やっぱ俺が受け止めるしかねぇのか?)
紙に書き足す。
「入学式後:リリィを俺が受け止める(?)」
書いた瞬間、自分で「(?)」をつけたくなるほど不安になる。
(いやでも…これで“運命の出会い”は阻止できるはず…カトレアの未来を守るためなら多少の原作改変くらい…いや、多少じゃねぇなこれ…)
エルムは頭を抱えながらも、
最後には深く息を吐いた。
(……やるしかねぇか)
カトレアの笑顔が脳裏に浮かぶ。
(あの子が泣く未来だけは、絶対に変える)
エルムは決意を固めた。
(よし。入学式後、俺がリリィを受け止める)
その瞬間、未来が大きく動き始めた。




