恋はサバイバル!お嬢様は挫けない
私立聖アリスガワ女学園の朝。高貴な香水を漂わせ、廊下を優雅に歩くのが私、奈津美ですわ。
「あ、ごめん! 大丈夫?」
曲がり角で衝突した。そこには、朝日のように眩しい笑顔を浮かべる学園のアイドル、高村様がいらっしゃいました。差し出された大きな手。その瞬間、私の心臓はドラムセットをひっくり返したような爆音を奏でましたの。
「……っ! 失礼いたしますわ!」
私は返事もそこそこに、脱兎のごとく逃げ出しました。これが、全ての始まりでした。
放課後。私は親友の若月を屋上に呼び出しました。
「若月! 大変ですわ! さっきから心臓の鼓動が激しくて、まるでサバンナを駆けるシマウマのようですの。これは致死性の病でしょうか? それとも呪い?」
「……奈津美。それは、一般的に『恋』と呼ばれる状態。あと、例えがうるさい」
若月は読みかけの文庫本から目を離さず、淡々と答えました。
「コイ……? 私が、あの高村様に? 冗談ではありませんわ! 私はお嬢様。常に冷静沈着、気高くあらねば……。でも、彼の顔を思い出すと、視界がピンク色に染まって、お花畑が見えるんですの!」
「重症。早く自覚して、さっさと告白してくれば」
それからの私は、まさに「恋のサバイバル訓練」ですわ!
高村様の後を(優雅に)尾行し、彼がサッカー部で汗を流す姿を双眼鏡(特注品)で眺める日々。若月に「ストーカーと紙一重」と毒を吐かれようとも、私はこの高鳴りを止めることはできませんでした。
そして一週間後。私はついに決意しました。
「若月、私、言いますわ! この想い、高村様にぶつけますの!」
「……そう。頑張れば」
私は放課後、高村様を校舎裏へ呼び出す手紙を忍ばせようと廊下を走りました。しかし、角を曲がったところで、見てしまったのです。
「……若月、ずっと前から好きだったんだ。俺と付き合ってくれないか?」
夕暮れの教室。そこには、真剣な表情で若月の手を取る高村様の姿がありました。
「……ええ。私で良ければ」
若月の返事は、相変わらず淡々としていました。けれど、その頬が微かに赤らんでいるのを、私は見逃しませんでした。
心臓が痛い。でも、それ以上に、なんだか笑えてきましたの。
「……ふふ、あははは! まさか一番の強敵が、身近な親友だったなんて。これは計算違いでしたわ!」
そして、結局我慢できずに「うわああああん!」と子供のように泣きじゃくりながら、お嬢様らしからぬ猛ダッシュで帰路につくのでした。




