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ズルい二人、思惑の交錯する雨宿り

作者: 満原こもじ
掲載日:2025/12/23

 ――――――――――図書館にて。チェスター・クック子爵令息視点。


 僕はズルい。

 図書館玄関外の大庇の下で、隣のエリアル・バートン子爵令嬢をチラッと見ながらそう思う。


「雨、やみませんね」

「うむ」

「困りました」


 図書館で勉強をしていた。

 たまたまエリアル令嬢と会った。

 雨が降ってきたため帰れず困った、という状況。


 いや、本当は全然困ってない。

 僕の魔法があれば雨を散らすのなんかわけないから。

 エリアル嬢を送ってやればいいのに、そうしない僕はズルい。


 エリアル嬢は美しき淑女で、休日に図書館に来るくらいの勉強家でもある。

 彼女に惹かれる気持ちがあるのだ。

 だからつい、もう少しエリアル嬢と同じ時間を共有したいと思ってしまった。

 僕は卑怯者だ……。


 ――――――――――その時。エリアル・バートン子爵令嬢視点。


 私はズルいのです。

 長身で凛々しく、魔道の心得もあるチェスター・クック子爵令息を、私は密かにお慕いしておりまして。


「雨、やみませんね」

「うむ」

「困りました」


 いえ、困ってなどいないのです。

 この雨はすぐやむことを知っていますから。

 どういうことかですって?

 私にはたまにちょっと先のことがわかるという、特技だか異能だかがあるのです。


 どうでもいい未来が気まぐれに見えるだけで、今まで役に立ったことはありませんでした。

 ただ今日の私は絶好調なのです。

 チェスター様が図書館に行くことも雨に降られることも見えていました。

 急いで支度を整えて図書館でチェスター様を待って。

 帰り際に予定通り雨に降られ、玄関でチェスター様と二人きりなのです、ポッ。

 ちょっとズルいでしょう?


 チェスター様は本当に困っていますね。

 苦悩が見えます。

 私も後ろめたいので、声をかけました。


「チェスター様。雲の流れ来る方向の空は明るいですよ。もうすぐ雨も上がると思います」

「そ、そうか」

「それまでお喋りしませんか?」


 とりとめのない話をするだけで楽しくて。

 雨がやんで虹がかかるまでの一〇分間は充実していました。


「奇麗な虹ですね」

「うむ」

「あら、『君の方が奇麗だよ』が紳士の正解ですよ」

「む? すまん」


 うふふ、今日の私は積極的ですね。


「さあ、チェスター様。帰りましょうか」

「そうだな。エリアル嬢、お手を」

「エスコートしてくださるのですか?」

「うむ、それが紳士の正解のような気がしてな」


 アハハウフフと笑い合います。

 チェスター様の手を取って。

 ぼやっと素敵な未来が見えてきた気がするのです。

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