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つながって

「あれ?いつの間に……この赤い糸、私の小指に結ばれたんだろう?」


 彼女の小指にはしっかりと赤い糸が巻き付いていた。それが、いつ、どこで結びついたのかは分からない。その糸の先は洞窟を飛び出していた。彼女は不思議に思い、糸をたどろうとしたその時──。


 「アメリア、外は吹雪だ。出るんじゃねぇぞ」


 そう言って、アメリアの肩を掴み、自分の方に引き寄せる大男の名前はアリオス。アメリアと同じ赤毛で、逞しい筋肉は刃をも通さない雰囲気を持つ。


 「分かっているわ、お父さん。けど……あの糸を辿らないといけない気がして」


 「そりゃきっと、冬ギツネのいたずらだ。こんな吹雪の中、出歩いたって死ぬぐらいしかねぇ」


 アメリアは「う~ん」と唸り、腕を組んで考え込む。お父さんの言う通り、吹雪の中に何かあるとは思えない。けれど、この赤い糸の先に運命を感じたのだ。


 「お父さん……やっぱり、私、この糸を辿ってみるわ」

 「ダメだ!大事な娘を危険に晒す訳には行かねぇ」

 「大丈夫よ!──私には火の鳥の力があるんだから」


 アメリアはそう言って手のひらからポッと音を出し、3つの火球を生み出して、空中で器用に操って見せた。──それは、今までの『人間』では考えられない現象だった。どういった原理でこの現象が生まれたのか、それはアメリア自身も分からない。


 アリオスは少し苦い顔をして反論する。


 「だからどうした……吹雪は容赦なくお前を襲うぞ」


 アメリアは中々、引かない父に限界が来て、肩を震わせ、火球の炎を荒げた。洞窟内の気温が上昇する。


「お父さんのバカ!! 意気地なし!!頑固者!!」

「お前だけには言われたくないわ!このバカ娘!!!」


 二人は互いに罵り合う。しかし、大体こんな展開になった時、大抵折れるのはアリオスだった。彼は不満げな顔でふぅーとため息をつき、洞窟の隅に立てかけられた、毛皮で作った厚手の上着を二着持ってくる。それをアメリアに渡し、アリオスは武器を手に持つ。


「俺が危ないと思ったらすぐに引き返すからな」

 「ありがとう!お父さん」


 アメリアは八重歯を見せて笑う。アリオスはその笑顔にめっぽう弱かった。


 二人は洞窟から出て、赤い糸をたどった。アメリアは周囲に火球を出して、灯り兼雪溶かしとして活用し、アリオスは周囲を警戒して進んだ。


 「お父さん、ここで糸が雪の下に続いているわ」


 アリオスはアメリアの前に立ち、糸が続く先を睨む。


 「アメリア、ここの雪を慎重にとかしてくれ」


 アリオスは指示を出してから、手で雪を退け始めた。アメリアはサポートをするように火球を操る。


 アリオスの手がそろそろ限界を迎えた頃、人間の指が雪から出てきた。その指には赤い糸がしっかりと結び付けられている。


 「冬ギツネもたまには良い事をしやがる」


 アリオスは勢いよく雪を掻き出し、一人の男を雪から取り出した。


 「アメリア、こいつを温めてくれ」


 アメリアは頷き、指で空中に円を描くと炎の輪が生まれ、アリオス達を囲む。


 「お父さん、その人は大丈夫そう?」

 「……なんとも言えんな。凍傷で身体はボロボロ、呼吸も浅い。正直、今生きているだけで奇跡みたいなもんだ」

「なら、私たちが助けるしかないわね」


 アメリアは当然のように言い放ち、男をアリオスの背に乗せる。


「さっ、帰りましょう」


 アリオスは何とも言えない顔でアメリアを見つめ、洞窟へと歩き出した。すでに、アメリアも男の手にも赤い糸はなかった。


 ****


「やったぁ!あの人が助かった!!」


 セレンの前には飛び跳ねて喜びを表す娘の姿があった。そんな娘の、行動一つ一つが愛おしいと思っているのは誰にも明かしていない。


「ねぇねぇねぇ、お父さんが作った赤い紐があの人を救ったんでしょ!!」

「私がしたのはただのきっかけ作りに過ぎないけど、救ったと言われればそうかな」


 娘から来る熱い視線に嬉しく思いつつ、セレンはネフィーの両手を握って優しく諭す。


「今やったことがお父さんのお仕事。あの赤い糸で結ばれた二人は今後の物語にっ大事な人物だから、道半ばで終わらないようにお父さんが支えてあげるんだ」


 ネフィーはムムムとうなり、腕を組んで考え込む。セレンは娘の考えがまとまるまで、見守った。


 ネフィーは考えが纏まったのかセレンを見つめ、質問を投げかける。


「お父さんの言う『大事な人物』って何?」


 ネフィーの鋭い質問に娘の成長を感じたセレンはそれに応えるように話す。


 「物語において、運命力の高い生き物を私達は『大事な人物』として扱っているんだ」


 「この運命力というのは物語を維持する燃料のようなもので、それを多く持った生き物が直ぐに死んでしまうと、次に補充される燃料を待たずに、物語が終わってしまうんだ」


 ネフィーはかしこまった顔つきでうんうんと頷き、自信満々でお父さんに告げる。


「つまり、お父さんはお助けヒーローってことだね!!」


 当たっているようで当たっていない、解釈だが今はそれで良いとセレンは思った。


「ああ、そうだよ、ネフィーのお父さんはお助けヒーローだ」


 ネフィーは「かっこいい!!」とはしゃぎ、セレンに抱き着いた。お父さんは少し鼻が高くなっていたという。


 そんな二人をおいて、物語は進んでいた。アルディアスがアメリア達に発見されてから10日後、彼は目を覚ました。セレンとネフィーは行く末を見守り続ける。




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