第7話(最終話) お嬢様、謎解きの時間でございます。
登場人物紹介
サミュエル・リンゼ メイド長兼執事
ガルハン・エリーヌ お嬢様
ヤルトス・ミリエ 料理人、リンゼの部下
シルベス・ウーリー 運転手、リンゼの部下
ニーブル・ナッシュ 庭師、リンゼの部下
テルシオ・ミーニャ 家庭教師、リンゼの部下
ハズウェル・マルル メイド、リンゼの部下
ハズウェル・シャルル メイド、リンゼの部下
*登場する名称は全てフィクションです。
両親を事故で亡くしたお嬢様エリーヌ。
そのエリーヌの前に現れたメイド長リンゼ率いる使用人チーム。
地下室の金庫の謎が判明、夫妻の死亡の経緯、そして厨房の毒物。倉庫では何が行われたのか。庭で見張る使用人。そして弟と黒幕ハルモンドの正体とは。いよいよ全ての謎が解明される。
「私は忙しいんだ。帰らせてもらうよ。」
「あら、ハルモンドさん。折角の料理を食べないんですか。」
「どうせアレでも入れてるんだろ。」
「隠し部屋を隠し扉を使い、中にヒ素化合物を置いてそれを入れたとでも。」
「何だ、分かってるのか。」
「あなたはかつてマフィアがマネーロンダリングをするのに会社を設立しそれに携わった。それ以来何かあればこの3人のように対応したのでしょう。毒物もマフィア経由で闇医者から入手しましたね。」
「ああ、それがどうかしたのか。毒など使ってないだろ。」
「その通りです。まだ使われておりません。いずれ使う為の準備でしょうから。当主の弟にもね。」
「なに!ハルモンド、裏切るのか!」
「弟さんも、かなりお兄さんには恨みがありますね。」
「何のことだ。」
「あなたは車にGPS装置をしかけ、ハルモンドさんの呼び出しでお兄さんを自宅に連れて行き、最後には倉庫で暴行しましたね。」
「俺は兄貴が隠しているから早く渡せと言っただけだ。」
「お嬢様、例のものを。」
「叔父様、これは倉庫で見つけたブレスレットです。いつも大切にしていたのに…。」
「ああ、兄貴がくれたが、質問に黙っていたんでちょっと叩いただけだよ。」
「椅子にロープで縛り、鞭で叩き、殴り、最後には絶命した。その際吐いた血痕が倉庫にはありました。解析の結果血痕は当主のものと一致しました。」
「ハルモンドが痺れを切らして鞭でめちゃくちゃ叩いたんだ。」
「あなた方は奥様が屋敷から逃げないように常に見張りをつけていましたね。」
「ああ、何か怪しいと気付かれてたからな。」
「当主は最初弟さんが首謀者と考えていたようです。こちらをご覧下さい。」
「ただの日記じゃないか。」
「ここを横ではなく縦に読んでみて下さい。」
「はぁ?はんにんおとうと!」
「そうです。しかし、当主はハルモンドさんの存在を知り、本当の黒幕の存在を知りました。そこで地下室の金庫に書類を入れ、鍵を屋敷内に隠したんです。」
「お前は鍵を見つけたと言うのか。どこにあったんだ!」
「鍵は3つありました。書斎、車庫、庭です。」
「どうやって見つけたんだ。俺らが探しても無かったのに!」
「ほんの少しの違和感ですよ。我々使用人は常に物事の整理、管理を心がけています。順番が違う、いつもと違う行動、不自然な配置、それらは意図して作られる。それこそ当主が我々に残したメッセージとなるのです。」
「じゃあ、アンタらは見つけたのか。」
「そうですね。金庫に保管してあった会社の裏帳簿、ハルモンドさんが関わるマフィアとの取引一覧やマネーロンダリングした口座情報。弟さんの告発状などですかね。」
「そこまで知られたらあなた方を生かしておく訳にはいかないですね。」
ハルモンドは拳銃を構えた。
「本性を現しましたね、ハルモンド。でも無駄ですよ。」
リンゼが目で合図する。
ウーリーがハルモンドを倒す。更にミーニャとシャルルが取り押さえる。
同時にミリエ、ナッシュ、マルルは弟を取り押さえた。
「当主は最後まで弟さんの改心を願っていたようですね。」
「ううっ…兄貴…。」
「後は警察に任せることにしましょう。3人のマフィアの皆さん、分かってますよね。」
「アンタらには逆らえんよ。まあ、アタシらは雇われの身だからな。正直に話すだけさ。」
程なく警察が到着し、ハルモンドと弟は連行された。
「ミリエ、今日のご飯も美味しいよ。」
「お嬢さん、作った甲斐があるっちゅうもんや。」
「リンゼありがとう。お父様やお母様もこれで無事天国に行けそうかな。」
「お嬢様、我々は亡き当主の命に従っただけです。」
「あの、ずっと気になってたんだけど、リンゼたちって何者?」
「我々ですか?ただの使用人ですが。」
「いやいや、どう考えても諜報部員みたいだよ。」
「そうですね。では少し昔話でもしましょうか。」
「是非聞かせて。」
リンゼは元々警察に勤務していた。かなり凄腕で多くの事件を解決したんだって。
でも警察内部の不正を暴こうとして逆に解雇された。
当時のリンゼの部下は不服に思い6人全員辞めたんだって。
それからリンゼはチームを結成し、個別事案を解決していった。
たまたまお父様がその噂を聞いて頼んだみたい。
「旦那様の依頼も終わりましたから、我々はそろそろおいとまします。」
「リンゼ、お願いがあるんだけど。」
「何でしょうか、お嬢様。」
「これからも私の所にいてくれないかな。」
「我々には他の依頼もあります。お嬢様だけと言う訳には…。」
「リンゼ様、このお屋敷を事務所として活動するのは如何でしょうか。」
「うん、ミーニャの提案いいねぇ。あたしもお嬢さんに料理褒められるの気にいってるんだけど。」
「奥様が残した花の手入れもしないといけませんですしね。」
「ここの車もメンテしなきゃだしね。」
「皆さん、お嬢様とお屋敷が相当お気に召したようですね。」
「リンゼ様、何か嬉しそうですよ。」
「マルル、シャルルまで。分かりました。ではお嬢様がお許しになる限り皆さんここで活動するのはどうでしょうか。」
メイド・ザ・メイド 完
チームリンゼのお話はこれにて終了です。
また別のお話でお会いしましょう。




