第2話 お嬢様、お食事は如何ですか。
登場人物紹介
サミュエル・リンゼ メイド長兼執事
ガルハン・エリーヌ お嬢様
ヤルトス・ミリエ 料理人、リンゼの部下
シルベス・ウーリー 運転手、リンゼの部下
ニーブル・ナッシュ 庭師、リンゼの部下
テルシオ・ミーニャ 家庭教師、リンゼの部下
*登場する名称は全てフィクションです。
両親を事故で失ったお嬢様エリーヌの前に現れたのは、リンゼと名乗るメイドとその仲間だった。
リンゼは屋敷の開かずの間の鍵を手に入れ、地下室への階段を見つけるのであった。
「ミーニャはいる?」
「ははっ、リンゼ様ここに。」
「これより地下室を探索します。」
「了解しました。」
リンゼとミーニャは地下室の階段を降りる。
下まで降りると扉があった。
「この扉にも鍵がありますね。」
「今は中に入れませんね。」
「開かずの間の鍵と言い、屋敷の主人は相当の秘密を持ってますね。」
「エリーヌお嬢様によると、亡くなった両親の亡骸には拘束痕と打撲痕があったそうです。」
「鍵の在処を吐かせようとしたんですね。」
「事故に見せかけ殺す連中です。どうしても主人の隠す何かが必要だったのでしょう。」
「リンゼ様、屋敷を探せばまた鍵が見つかるかもしれません。ここは一度戻りましょう。」
「そうね。続きはまた後になりそうね。」
厨房ではミリエが色々調べていた。
「ミリエ、何かあったかしら。」
「あっ、リンゼはん。なんやけったいな厨房やわ。」
「厨房のどこがおかしいのですか。」
「いやね、ここお屋敷の食事作るにしては、あんま使った気配ないねん。」
「以前は住み込みの家政婦もいたはずですから、主人夫婦とお嬢様、使用人達を合わせればそれなりの人数になりますよ。」
「うーん、そうやなー、例えるなら別荘の厨房かな。たまに避暑に来る感じのとこ。」
「いやいや、ミリエここは別荘では無くてメインの屋敷ですよ。」
「でもリンゼはん、この食器や調理道具どう見ても使用感ないんや。」
「それでは毎日出前でも取っていたと言うことですか。」
「それか、特別仕立ての料理とかな。」
「何かありそうですね。」
ミリエが厨房の奥を調べていた時だった。
「リンゼはん、ちょっと。」
「どうしましたミリエ。」
「これ、隠し扉や。」
「開きますか?」
「ちょっと待ってや。」
ミリエは道具を持って来て、扉を調べる。
端に仕掛けがあり、操作すると扉が開いた。
「この隠し扉は屋敷の主人が作ったものではありませんね。」
「どうして分かるんや。」
「主人は鍵で密室を作る。しかし、操作して密室を作る別の人物が屋敷にはいた…、と言うことです。」
「成る程な、中調べて見るかな。」
ミリエは慎重に隠し部屋を調べる。
部屋はそれ程広くは無い。
「リンゼはん、ビンゴやわ。」
「何かありましたね。」
「これ、毒薬やわ。」
「ヒ素化合物ですね。かなり猛毒です。」
「物騒なモン、隠してたんやな。」
「恐らく、主人を弱らせる為、薄めて料理に混ぜたのでしょう。」
「屋敷に隠した主人はんの秘密知る為に?」
「ミリエ、毒薬の入手経路を調べて下さい。」
「はいはい、分かっとります。」
「その前に、お嬢様に何か作ってあげなさいね。」
「ここはうちの腕の見せ所やな。」
「お嬢さん、エリーヌお嬢さん。」
「ミリエですか。どうしました。」
「いや、うち料理人なんですよ。用言うたら食事しかないですよ。」
「そう言えばお腹が空きましたね。」
「うち特製のスペシャルコースです。」
「まあ、美味しそうですね。」
エリーヌはミリエの食事を食べ始めた。
初めは美味しそうに食べていたが、やがて泣き始めた。
「どうしたんですかお嬢さん。まさか、マズいですかね…。」
「いや、とっても美味しいです。」
「なら何で泣いてるんですか?」
「いつも味気ない料理だったので、久しぶりにこんな美味しい料理を食べてつい...。」
「いやいや、こんなお屋敷に住むお嬢さんの食事が味気ないとか、何かおかしくないですか。」
「家政婦が用意する食事は、どこか暖かみが無い感じでした。」
「出前でも取っていたんですかね。」
「そうですね、出前かもしれません。」
「つまり、屋敷の使用人に料理が作れる者がいなかったとか?」
「分かりませんが、たまにお母様が作ってくれる時もありました。」
「奥さんは料理出来たんですね。」
「とても美味しいんですよ。ミリエと同じくらいに。」
「そうですか。うちで良ければこれからは毎食お嬢さんの為に腕をふるいますよ。」
「楽しみにしてますよ、ミリエ。」
「リンゼはん、ちょっといいかな。」
「どうしましたミリエ。」
「さっきお嬢さんに食事出したんだけど。」
「それが何か。」
「奥さん料理上手いんやて。」
「では食事は奥様が作っていたと。」
「ちゃうねん。奥さんが料理するのはたまにや。ほとんど出前みたいやで。料理人はいないみたいな感じや。」
「成る程、それなら厨房が使われていないことが説明つきますね。でも、奥様が料理出来るのにさせないのは、隠し扉の関係ですかね。」
「せやな、どうやら当主殺しの一味の正体が何となく見えて来たんとちゃう?」
「しかし、そのような者を使用人として屋敷に仕えさせるのは不自然です。」
「身内にボスがいるんとちゃう?」
「どうやら、この一件はなかなか厄介そうですね。」
「うちは引き続き厨房関連の調査と薬物の入手経路をしらべます。」
「よろしく頼みますよ、ミリエ。」
食事を作らない使用人、発見された毒物、そしてこの先何が起こるのか。
第3話 予告
地下室に隠された謎、毒薬を使い料理しない使用人、ラスボスは身内なのか?
次回 「お嬢様、お出かけなさいますか。」
料理人ミリエ回、如何でしたか?
次は運転手ウーリー回となります。
ではまた次回に。