勇者パーティーに追放された俺は、目的の為に再び返り咲く
「ダリル、悪いがあなたには今日でこの勇者パーティーを抜けてもらう」
とある街の酒場で勇者パーティーのリーダー、勇者アランはダリルに追放を宣言した。
「な、なんだって……?」
追放を受けた男の名はダリル、勇者パーティーは比較的年齢層は若い、10代から20代で構成されていたが、このダリルに関しては一人だけ40を超えていた。
「我々が駆け出しの頃はダリル、あなたに戦闘における指南を受けてきた、それはもちろん感謝している。しかしもうダリルの年齢では僕達の戦いには付いてこれない。この前のレッドワイバーン戦でも開始早々足をつり、後は後方で僕達の戦いが終わるまで自分の鼻毛を抜いているだけだったじゃないか!」
アランがそう言うと、彼の周りにいる勇者パーティーの聖女、賢者、剣聖もそうだと言わんばかりに頷く。
「待ってくれ!でも俺がいなくなったら勇者パーティーの武具のメンテナンスはどうする?まだ誰もそれについては教えていないし、俺が抜けたら武具は消耗する一方だろ!」
ダリルは加齢により戦闘ではもう前ほど役に立つこともなくなったかもしれないが、それ以外の部分で自分はまだ価値があると勇者に説く。
「武具のメンテナンスは外部に依頼する。クエスト中の武具の調整くらいは自分たちでもできるし、街でダリルに任せていた武具のメンテナンスもあなたはただ街の鍛冶屋に持ち込んでいただけだろう。僕達が気づいていないとでもおもったのか?」
ダリルはクエスト終了後、恩着せがましく武具のメンテナンスを買って出たが、彼はさも特別なことをしている感を出しながら、鍛冶屋に武具のメンテナンスを依頼していただけであった。
「でも、でも俺だってまだ……」
「もういいんだダリル…… あなたには駆け出しの頃本当にお世話になった。いろんなことを教わってきたし、僕達を利用しようとする悪人から守ってきてもらったりもした……。 しかしもうあなたの身体は戦いについていけない。謝礼は十分な量を出す。だからもう、身体を休めてくれ……」
勇者パーティーの面々は彼を恨んでいるのではない。心配しているのだ。戦いの中で、ダリルが命を落してしまうことを。
しかしダリルには勇者パーティーを離れられない理由があった。
「俺は、俺はまだこのパーティーを抜けるわけにはいかないんだ……」
ダリルは悔しそうにしながら言葉を吐いた。
「その理由…… 聞かせてくれないか……?」
勇者アランはダリルにそこまで言わせる理由を聞く。
「今……、今勇者パーティーを抜けてしまったら俺の名前は歴史に残らなくなってしまう……」
その答えを聞きアランは動揺する。
「な、なんだその答えは……!?僕達の使命は魔王を倒すことだ!歴史に名を残すために命をかけているんじゃない!」
アランの言葉には怒りが混じっていた。
「考えても見ろ!!俺がこのまま魔王を倒すまで勇者パーティーの一員だとしたら、魔王を倒した暁には億万長者だ!!領地を授かり貴族入りも夢じゃない!!しかし今金をもらって抜けたところで小金持ちのなにもない中年が出来上がるだけだろうが!!」
ダリルは逆ギレをする。自分とは親子ほど年の差もあるアランに、情けなく吐き捨てる。
剣聖カインはあの勇ましく、勇猛果敢に戦ったダリルの現在の姿に涙が出そうになる。
彼は毎晩のように娼館に通い詰めることを除けば冒険者の鏡のような男だったのだ。
「それに、それに……」
ダリルの眼には涙すら浮かんでいた。
「今だって勇者パーティーだからとチヤホヤしてもらっているのに…… それすらなくなるなんて…… 俺には怖い……」
涙がこぼれた。中年の男の涙だ。
立場にしがみつき。甘い蜜だけを吸おうとしている中年の本音に勇者パーティーの面々はドン引きする。
賢者デールは彼との過去の会話に思いを馳せていた。「周りに笑われてもいい、自分の信じた道を貫け」とは彼の言葉だ。今の彼が自分の信じた道を貫いた姿なのだろうか。
「頼むっ!俺はなんだってする!靴だって舐める!!だから俺を勇者パーティーにおいてくれ!!」
鼻水を垂らしながら泣き叫ぶダリルには、もうプライドはない。聖女マリアーナは「昔のダリルはあんなにかっこよかったのに……」と呟く。
今だってかっこいいやろがい!と鼻水まみれの中年は返した。
「あなたの今の実力では、これから先の戦いには着いてこれない……」
勇者アランはダリルに諦めてもらおうと説得するが、ダリルにその言葉は届かなかった。
「頼む…… 頼むよアラン…… 俺は不労所得で暮らしたいだけなんだ……」
ボロボロと泣くダリル。酒場中の注目が勇者パーティーに集まっていた。
「さよならだ、僕達の師匠ダリル。魔王を倒した暁にはこの酒場で旅の思い出を肴に酒でも飲もう」
アラン達勇者パーティーが立ち去ろうとしたその時
「あぁーー!!今まで育ててやってきたのになぁーーー!!!」
ダリルは酒場中に響き渡る声量で叫びだした。
「当時ヒヨッコだった勇者パーティーを!!一から鍛え上げて!!共に魔王を倒そうと誓いあったのになぁーーー!!!」
「自分一人で大きくなったみたいな顔して!!第二の親ともいえるこの俺を!!簡単にきっちゃうんだからなぁーーー!!!」
アランは焦り、ダリルを止める。
「やめてくれダリル!大人げない!僕達が悪者に見えるだろ!」
「やってることはいらなくなったから金握らせてさようなら!!あぁーー!!俺の彼らを鍛え上げた時間は心までは鍛え上げることはできなかったんだなぁーーー!!!」
「ダリルわかった!!」
アランは耐えきれず声をあげた。
「期限を決めよう!半年だ!半年共に旅をし、あなたの強さをもう一度僕らに示してくれ!そうすればまた僕達は共に旅を続けられる!だからその半年でこれまで以上にあなたには強くなってほしい!」
ダリルはすっと指を一本立てた。アランはその仕草を不思議そうに見つめる。
「一年だ…… 半年は短すぎる。俺はあと一年掛けて死に物狂いで強くなる。またこの背中をお前達に見せつけられるほどにな。だから共に戦い魔王を討とう。そのためなら俺はなんだってやる!」
ダリルの決意を見たパーティーメンバーは彼を再び迎え入れることにした。
しかしダリルはほくそ笑む。
あと一年あればワンチャン魔王を倒せるとこまでいけるかもしれないということを。
そしてそれが1年後の期日に間に合わなくても、また今日のような手法でしがみついてやろうと彼は心のなかで腹黒く笑うのであった。




