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第15話:お引越しの段取り




 わたしの転勤が決まって。


 そのタイミングにあわせて、祥子さんは会社を辞めてしまって。


 本当に、わたしと一緒に、って。


 引っ越しの、日。


 最初に、祥子さんのお部屋の荷物を引っ越し業者さんのトラックに、一緒に積み込んで。


 祥子さんの車で、わたしの部屋へ移動して、また荷物の積み込み。


 それも終えて、空っぽになったお部屋を、ふたりでお掃除。


「荷物が無くなると、こんなにも広かったんだーって、不思議な感覚になるわよね」

「逆に新居に荷物入れると、こんなに狭かったっけ? って、なりますよね」


「うんうん」


 なんて、少しのんびり。


 笑い合いながら、去り行くお部屋の、お掃除。


 それも、ほぼ終わると、祥子さんが。


「もともとキレイに使っていたお部屋だから、お掃除も楽だったわね。まぁ、『立つ鳥、跡を()()()』とも言うし、野鳥好きなら、これくらいキレイにしておかないと」


 ん?


 何か、違和感。


 あ。


「祥子さん、それを言うなら、『立つ鳥、跡を()()()』では?」


 …………。


 祥子さんは、少し、考えて。


「そうとも言う!」


 いやー。


 あはは、と。


 また、笑い合って。


 業者さんへの、お部屋の引き渡し、鍵の引き渡しも、終えて。


「さ、じゃあ、祥子さんの部屋のお掃除もしに行きましょうか」

「うん、よろしく、永依夢(エイム)


 また祥子さんの車で、祥子さんのお部屋に、逆戻り。


 先に荷物を出していた部屋は、わたしの部屋同様に、がらんとしていて。


 それにお掃除も、わたしの部屋と同じく、すぐに終わって。


 引き渡しも、終えて。


「いよいよ、ね」

「はい」



 ふたりで探した、新居へ、と。


 探した、と、言っても、会社が用意してくれた借り上げ社宅、みたいな形で、いくつかの候補から選ぶ形で。


 会社にも『恋人と同居する』って、伝えて。


 ふたりで暮らすのに充分な広さの家を用意してもらったから。


 それに今度の転勤先が、今よりもちょっと田舎の方面になることもあって。


 結構、広い家にできたりした。


 もちろん、少し郊外で、鳥さんとも近しい方面!


 ちなみに。


 バイクは、売り払って、今はもう、手元には、無いから。


 引っ越しのための輸送もしなくて済んだ。


 祥子さんが。


『バイクは危険! 危ない! 倒れたら命にかかわる!』


 って、強く。


 なので、仕方なく、って感じで。


 わたしも、車生活に。


 とほほ。


 これだけは、譲れない、と、思ってたけど。


 恋人に。


『だって、永依夢(エイム)が居なくなるなんて、考えられないし』


 愛する女性(ひと)に、乞われたら。


 ね。


 ある意味、自分のためだ、とも、言い聞かせて。


 おかげさまで、車の運転にも、ずいぶんと慣れて来た。


「それじゃ、そろそろ、出発しましょうか」


 去り行く場所に、長く留まっても、ね。


「はい、運送屋さんと、競争、ですね」

「うんうん。でも、安全運転で、ね。交代しながら、ゆっくり行きましょう」


「はい」



 カメラ機材は、祥子さんの車、と、言うか。


 車も、買い替えたのよね。


 わたしと祥子さんで、ふたりで、折半して。


 少し大きめの、ワゴン車に。


 だから、カメラ機材とかも含めて、貴重品とかは、運送屋さんに預けず。


 自前で、と。


「到着を明日じゃなくて、明後日とかに指定できてよかったわね」


 走り出して。


「はい、本当に大慌てで運送屋さんのトラックと競争になったら危ないですし、ね。ちょっと料金は高くなりましたけど」


「でも、引っ越しの手続きやら準備やらで、ここのところドタバタしてたから……」

「はい、しばらく、()()()()()()()()()()()ですし、ね」


 そんな訳で。


 引っ越しのための、新居への移動は。


 連休も絡めて、車で、少しのんびりぎみに。


 観光と言うか、途中で野鳥撮影も、兼ねて。


 この後は、夜まで走って、一泊。


 明日は、ホテル付近の野鳥スポットに、朝から繰り出して。


 午前中、撮影してから、午後にまた、移動。


 新天地近くのホテルに泊まって、そこから新居へ、と。


 そんな計画で。


 先ずは、一泊目の地を目指し、高速道路へと。


 いくつかのパーキング、サービスエリアで休憩を兼ねて、ドライバーチェンジ。


 祥子さんとわたしで、交代で。


 見慣れぬ土地を、進む。


「あぁ、どんどん実家から遠ざかるぅ……」


 そう、新たな転勤先は。


 実家のある地元から、さらに遠くなる方角で。


 とほほ。


「実家、帰りたい?」


 あー。


「帰りたくない、ってわけではないですが、気軽に帰れなくなるなー、って」

「んふふ……そうね、次に帰る時は、わたしも連れて行ってもらわなくちゃ、ね?」

「あははー」


 そう。


 両親とか、地元の仲間には、まだちゃんと伝えてないんだよなぁ。


 祥子さんの、こと。


『恋人ができた』


 って、話しは、臭わせてあるんだけど。


 んー。


 みんな、まさか、女の人、だとは思うまい。


「それもですけど、祥子さんの会社の方は、本当に大丈夫だったんですか? 祥子さん抜けちゃって」


「あー、うん、もーいいの。もともと左遷みたいな形で飛ばされたようなものだったしねー」


「そ、そうですか」


 仕事の話は、お互い、あんまりしてなかったのもあって。


 どんな仕事してたのかは、聞いてないし、わたしも話してないけど。


 恋人とは、言え。


 企業秘密は家庭に持ち帰っちゃだめ!


 ってのも、あるし、ね。


 そこは、それで、そっとしておきましょう。


 そして。


 それは、それとして。


 今日は。


「それより、今夜は!」


「はい、そうですね、久しぶりに!」


 さらに、盛り上がると、しますか!





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