第12話:買うものがアレだとしても、お買い物デート
「こここ、ここ、入るんです、か……」
祥子さんと、ふたり、電車で数駅。
本日の、デートは。
『大人のコンビニ・L’s』さん。
街中に、デーン、と、そびえたつ、ビル。
あぁ、大きい、と、思ったけど、横から見ると、やけに、薄い!?
そうか。
だから、階数は多いけど、売り場自体はそんなに広くない、のかな?
って。
「そうよ、入ってみましょう」
尻込みするわたしの腕に、祥子さんが腕を絡めて。
ぐい、ぐい、と。
ひぃいい。
入店。
お店の中に入ると、確かに、奥行きが狭くて、左右に長い感じ?
その右手、右側に。
上の階、下の階に続く階段が。
反対側、左側にはエレベータがあるようだけど。
目的地は。
「えっと、地下二階、ね。階段で行きましょ」
階段へと向かう、通路のような、売り場。
左右に。
ぉおぅっと。
見ちゃだめだ、見ちゃだめだ、見ちゃだめだ。
これは用が無い、これは用がない。
だって男性用だものっ!
わたしには、わたしたちには、関係ないっ!
むぅう。
男の人が、こういうの、買うんだ……。
とか、思いつつ。
意気揚々と、歩いて行く祥子さんに引きずられるようにして。
階段から、地下へと。
まぁ、その階段の壁。
いたるところに。
そういった商品の広告やらが、ドン、ドン、ドーン、と、貼られまくり。
ポスターハラスメント。
ポスハラ!?
ひぃいい。
もう、帰りたい……。
ひと通り『見学』したら、帰ろう!
と、思いつつ、地下一階をスルーして、地下二階へ。
ちなみに、通り過ぎる時にちらっと中を見たところ、一階は。
ランジェリーとか、コスプレ衣装みたいなのが並んでた、っぽい。
どちらかと言うと、わたし、そっちのが興味ある、かも?
で、地下、二階。
ずらり、並んだ。
いや、並べんなよっ!?
って、突っ込みたくなるくらい、整然と並べられた、サンプル。
あぁ、でも。
こうやって、現物を見れば、その大きさも、よくわかるし。
手に取って、触れてみれば、質感、肌触りなんかも、よくわかる、よね。
通販には無い、お店、販売店の、威力!
店員さんの目も気になるし、他のお客さんの目も気になるし。
挙動不審になてしまいそう。
あぁ、日本語もおかしくなてきてるよー。
えーん。
「こっちこっち、永依夢、こっちー」
ぎゃああ。
名前、呼ばないでー!?
もおぉ。
祥子さんに手招きされて、傍に寄ってみれば。
「ほら、ここらへん」
うぉっと。
入口からすぐのところあたりは。
『おひとり様用』
って感じのラインナップだったけど、少し奥へ進めば。
『おふたり様用』
って、感じのラインナップ。
片側だけか、両側か、って。
使い方を想像してしまうと。
ヤばい、ヤばすぎる。
あまり、実際に使う時の事は考えないようにしないと!
でも。
実際には、使う時の事を考慮した選択が、必要、か……な?
祥子さんが手に取って眺めているのは。
「祥子さん、それ、絶対、大きすぎですよ……」
「えー、大きい方がいいと思うけどなー」
何、言いやがりますかね、この女性は!?
「限度と言うか、節度おねがいします……」
「あ、見て、見て、こっちのコレも、いいかも!」
って、すぐ隣の棚から。
「ほら、コレ」
はて? 黒のショーツ?
ランジェリーも、あるのか、と、思いきや。
本来、ショーツには付いていないもの。
付いていてはイケナイものが、付いてらっしゃいます、ね。
「ふむふむ、コレを履いて……ぁあ、内側にも付いてるんだ! なるほど!」
ひとりでご納得の、祥子さん。
外側と、内側。
祥子さんからパッケージを渡されて。
裏に書いてある簡単な使用方法、着用方法をさっと読んで。
「!?」
いや、もう、ほんと、なんだよコレ。
こんなの考えたヤカラの頭の中、見てみたい……。
天才かっ!?
「コレは決まりねー。お買い物カゴは、っと」
きょろきょろ。
「そういうのは、たいてい、入口あたりにあると思いますよ。取ってきますね」
はふぅ。
わたしたちの他に、二組ほどの、お客さん。
もちろんのことながら、女性同士の、カップル。
幸いなのか、レジに座ってる店員さんも、女性。
まぁ、ここに男性が居たら、お互いに、いたたまれない、よねぇ。
いや。
なんか、感覚、マヒしてるっぽいけど。
女性店員さんでも、気まずいよ、これっ!?
うぅ……。
気を取り直して。
入口に置いてあった買い物カゴを手に、祥子さんのところへ、戻る。
戻る途中に、一個。
目星を付けてたヤツを、カゴに投入。
いや、先手を打っておかないと。
祥子さんにどデカイの、選ばれそうだから。
手ごろなのを、先に、と。
「あら、それは永依夢チョイスなのねー。じゃあ、わたしはコレでー」
ぽいっと。
さっき見てた黒いショーツモドキを、カゴへ。
他にも何か、と、フロアを、隅々まで見てまわる。
「こういうのも、やっぱり定番よねー。小さいの、いくつか欲しいわね」
電池式の、卵みたいな、玩具。何故か、桃色が、多い。
やっぱり、女の子用、だからなのかなぁ?
一応、青とか紫とかもあるみたいだけど。
基本は、桃色。
頭がピンク、って、説も、あり。
ぽいぽいっと、カゴに投入される、ピンクたち。
ひぃい。
「あと、やっぱりコレね」
少し大きめの。
「いや、ちょっと、いきなり買いすぎですよ、ほどほどにしておきましょう」
って、言いながら、気付いた。
見に来た、ってだけで終わらせようって思ってたのに。
買うのは、決定なのね……。
お会計は、フロア毎に、ってことで、このフロアでお会計。
祥子さんが全額出すって言うんだけど、ここは、やっぱり、折半で。
って、ちょっと言い合いになりそうになったけど。
後で清算しましょう、ってことにして。
ひとつ上の階に移動して、ランジェリーも、ひと通り見てまわって。
コスプレは、ふたりとも興味無いって事で、そのもの、ランジェリー。
こちらも。
普通の下着屋さんでは売ってない、取り扱っていないであろう、そういう目的、そういう用途の、人類の叡知が詰まった下着を。
お揃いで! って。
買っちゃった、買わされちゃった、罠。
……勢いって、コワイ…………。
前作のバドガからの読者さんから怒られそうな勢いのネタになってるっぽいですが。
あるんですよ、ヒトには、二面性って、ヤツがっ(と、言い訳しておく)