第10話:猫達のお店は何処に
『百合猫達の熱い夜』
ん?
何故に!?
いや、いつものように、ホテルで、祥子さんと、お泊り。
ご宿泊。
は、いいんだけど、何故に!?
たまたまなのか、偶然なのか、はたまた作為的になのか。
祥子さんと一緒に観る事になった。
『百合猫達の熱い夜』
大人のビデオ映画で、ある。
こういうホテルによくある、ケーブルチャネルなんだろうけど。
たいてい、有料なので、これまで観たコトはなかったんだけど。
このホテル、何故か、無料で見放題らしく。
祥子さんが興味本位で、って感じで見つけてしまった、と。
「わー、みてみて、ああいう道具があるのねー目からウロコだわー」
あー、やー、まー、なんと言いますか。
恥ずかしいを通り越して。
興味シンシン!?
あんなのを使って、祥子さんと……。
文字通り、心も、身体も……。
深く、深く、繋がりあって。
あぁ、なんと。
観終わる間も、なく。
その気になった、させられてしまった、ふたり。
どちらからともなく。
触れあう、肌と、肌。
終わる頃には。
いつの間にか、おそらく、祥子さんがリモコンでスイッチを切ったのだろう、モニターは、真っ暗に変わっていて。
薄暗い部屋の中。
鏡のように、わたしたちふたりを映し出しているのが、見えて。
落ち着いてみると、急に羞恥心が湧き上がって。
「あぅううう、シャワーいってきます」
今日は。
そのまま寝落ち、ではなく。
別々に、汗を流して、さっぱりと心身を整えて。
改めて、今度は、ちゃんと。
眠るために、ベッドに並んで横になって。
「ねえ、ああいう道具って、何処に売ってるのかしら?」
ぐは。
さらに、延長戦!?
「つつつ、通販でいいんじゃないですか?」
って、買う気かー!?
「通販って、なんか恥ずかしくない? 住所とか名前とか、バレちゃうし。お店なら名前も住所も言わなくてもいいでしょ?」
そっちの方が、リアルに顔とか見られて、もっと恥ずかしくないですか、ね!?
いや、もう。
祥子さんには。
いつも、いつも、驚かされぱなし……。
な、気が、する。
けど。
それも、また。
かつて、無い。
楽しみでも、あり。
「永依夢、そういうの調べるの得意でしょ? ぱぱっと、スマホで調べてみてよ」
「むぅ……」
あぅうう。
そう言われたら、仕方なし。
枕元のスマホを手に。
すぱぱ、と。
やっぱり、最初に出て来る検索結果は、通販のサイトばかり。
キーワードに『店舗』とかを付け足してみて。
「うーーん、こういうとこって、やっぱり男性向けのとこ、ばかりですよ」
そんなところに、女二人。
突撃した日には、奇異の目で見られること、必至。
恥ずかしいなんてもんじゃ、無い、よね?
「検索結果、送ってみて」
「あ、はい」
祥子さん、自分で文字打つのあまり得意じゃないって。
わたしに色々やらせる。
これまた、いつもの、って感じだけど、ね。
メッセージアプリに、コピーしたアドレスを貼り付けて、そう、しん、と。
「ありがと」
ちゅっ、って。
軽く、ほっぺに。
そして、仰向けに寝転んだまま、顔の前にスマホを掲げて持って。
するする、と、画面をなぞってワイプする祥子さん。
その指が、ぴたっと、止まる。
「あら、このお店……」
ん?
「うちの会社のわりと近くだわ。へぇ、こんなところにこんなお店が、ねぇ」
「どれですか?」
「『L’s』って、『大人のコンビニ』だって。六階建てのすごく大きなお店みたい」
っと、っと、っと。
画面をスクロールして、探してみると。
あった。
「ここですか……」
なんか。
Webのカラーリングが、わたしの好きな、淡い緑色っていうのが、またなんか、こう。
あ。
「地下二階……」
「そうそう、そこそこ、ね、わたしたち専用、みたいな?」
なるほど。
フロアごとに、いろいろとあって。
その中の、いちフロアが、まるまる。
わたしと、祥子さんのような、女同士で楽しめる、って。
「あら、ランジェリーのフロアもあるみたいね。ね、ね、ね、今度のお休み、ここでデートしましょう」
「えぇぇぇ……」
いやぁ、さすがに、それは、ちょっと、あの、えっと。
「ね、ね? 後学のために、ちょっと勉強のために、ね?」
勉強て……。
何の勉強、かな!?
「し、仕方ない、ですね、ちょっと覗いて見るだけ、ですからね?」
「うんうん」
スマホを置いて。
ぎゅぅっと。
わたしの手を、握ってくる、祥子さん。
「じゃあ、明日も早いし、寝ましょう寝ましょう」
「あ、はい、そうですね」
今度こそ、しっかり。
おやすみ、なさい。