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エピローグ:伝統芸能で世界を統べる

半年もの間、お付き合いありがとうございました!

この物語は今回で、一度最終回を迎えます。

詳しくは後書きに。最後までお楽しみ頂ければ嬉しいです。


 初めての【円卓】は怒涛の一日だった。


 他の帝王とのコネクション作り、初めての【戦争】、ティプラーの出現、【女帝】ルシアーノとの同盟締結などなど…。


 色々なことがあった【円卓】から、はや二日。

 【戦争】で負ったダメージから回復した俺は、ノルンが与えてくれた家のキッチンにいた。


 高い火力で野菜を炒めながら、【領地】の構想を練る。

 ノルンの話では、【円卓】が終わると新米帝王も【領地】を作れるようになるとのことだった。いつまでもノルンの【領地】である【アルブヘイム】に居候する訳にもいかないし、いよいよ俺も独り立ちの時が近づいている。


 今回の【戦争】では、EPをかなり消費した。

 開始時には25万ほどあったが、すでに10万ほどになってしまった。


 【領地】の運営にもEPは必要らしいし、これからしばらくEPを蓄える期間が必要そうだ。


 その思考をアルスの声が遮る。


「ご主人! それもう焦げてるっす!」


 隣でアルスが叫ぶ。

 どこから引っ張り出してきたのかも分からない中華鍋を振るいながら、驚愕に見開かれた横目で、俺の手元を凝視していた。


 彼女の視線を追って手元を見やると、炒めていた筈の野菜炒めが、いつの間にか消し炭になっていた。

 慌てて火を止める。


「あ、ああ。すまない」

「こっちは自分がやるんで、机に料理を並べてもらってもいいっすか?」

「分かった。このサラダから持っていく」


 皿に盛りつけられていたサラダを手に、歩き出す。

 すると、既に幾つかの料理を机に運んでくれていたシスが戻ってきた。

 意外そうな顔でこちらを見ているシスに、首を傾げる。


「どうした?」

「いえ、パパにも苦手なことがあるんだなー、と」


 素直な感想を述べるシス。

 俺は少し苦笑して、肩を竦める。


「ちょっと料理は苦手でな。どうしたらいいのかまるで分からないんだ」

「ふふっ。意外ですね」


 シスの笑い声は楽し気だった。

 いや、嬉しそうというべきか。


 いずれにせよ、好意的な反応が返ってきて、少し戸惑う。


「みんなの前では何でもできる男でいたいけどな。情けない話だ」


 特殊能力【芸の主】には、料理に関する知識も含まれている。

 それを使って知識を引き出せば、多少は料理も得意になるだろう。

 だが、その知識にEPを割く余裕はないし、何より成長していく過程を楽しめないのは嫌だ。


 料理に関しては、少しずつ上達していけばいい。


 そう思って料理を運んでいると、家の扉が開いた。

 バーンと開け放たれた扉を潜って入ってきたのはルリだった。


「お父様! みなさんをお連れしたのー!」

「ありがとうルリ、ご苦労様」

「はいなの」


 そう笑うルリの後ろには、見慣れた顔ぶれ。

 その先頭に立っているのは、大先輩だった。


 栗色の長髪。

 くりくりとした翡翠の瞳。

 穏やかな笑みを浮かべたノルンが、準備が進んだ部屋を見渡して笑う。


「やあプルソン。呼んでくれてありがと。ずいぶん本格的だね」

「人を招くんだ。そりゃ気合いも入るさ」


 今日は【円卓】が無事に終わったことを祝うパーティーだ。

 もともとは仲間達と行う予定だったが、アルスの提案でノルンや他数名を招くことになった。


「まあ、それもそうだね。あ、ローゼは少し後から来るからよろしくね」

「了解した。まあソファにでも座ってくつろいでいてくれ」

「そうさせてもらうよ。……それはそうと、ルシア。いつまでそこにいるつもりだい?」


 ノルンが背後を見やると、扉の隙間からルシアが顔を出した。

 金色の髪に良く映える、青色のドレスを身に纏っていた。とても良く似合っている。

 おずおずといった様子で、ルシアが口を開く。


「お、お邪魔するわ」

「ルシア、来てくれて嬉しいよ。二人も歓迎する」


 彼女の後ろには、よく似た凛とした気配を持つ二人がいた。

 一人はルリと交戦した狙撃手のシリル。もう一人は俺と戦ったリリスだ。

 二人も宴に相応しい服装で、戦場で感じたイメージとは少し違う。


 頭に角が生えた悪魔、シリルが優雅に一礼する。


「【芸帝】プルソン様、この度はお招きありがとうございます」

「重ねて御礼申し上げます。それと、ささやかですがこちらを」


 リリスも同じく一礼。

 そして手に持っていた瓶を俺に手渡した。

 酒であることは分かるが、ノルンの領地では見たことがないものだ。

 ラベルに書いてある文字も読めない。恐らくは俺の知らない土地のものだろう。


「ありがとう。これはどちらの名産かな?」

「リングランド帝国から取り寄せた最高級クラスのワインになります。リングランド帝国は、ルシア様の【領地】に隣接する国でして、以前から貿易を行っているのです。今回はその中でも最高級品を持参させて頂きました」


 リングランド帝国か。

 俺はまだこの世界の世界地図を見たことがないので、どのあたりにあるのかは不明だ。ただ、ラベルの正確さや瓶の透明さを見るに、かなり技術的にも進んだ国であることは間違いない。もし関わるとなれば、少し注意が必要かもしれない。


「そうか。ありがたく開けさせてもらうよ」


 俺は酒瓶をもらい受けて、三人をノルンが座っているソファに案内する。


「悪いがまだ準備が終わって無くてな。ノルンと一緒にソファで休んでいてくれ」

「ノルン様と同じソファなど恐れ多いわ」

「ノルンはそういうの気にしないって。そうだよな?」

「うん。それに、ルシア達とはゆっくり話してみたいと思ってたからね」

「そういうことであれば……」


 ノルンの正面に腰を下ろして、ルシアが思い出した様に口を開く。


「そういえばアガレス様だけど、今日は色々忙しくて参加できないみたいなの。代わりに謝っておいてくれって伝言を頼まれたわ。ごめんなさいね」

「そうか。わざわざありがとな」


 【竜帝】アガレスにはかなり世話になった。

 彼が来れないのは残念だが、世界最強の帝王として多忙の身である事は重々分かっている。彼に対する感謝はまたの機会に示すことにしよう。


 これで招待客は揃った。

 さくっと準備を終わらせて、さっそくパーティーを始めよう。



 ものの数分で、パーティーの準備は完了した。

 リビングにはアルス達が用意してくれた料理や酒が置かれ、皆手にグラスを持っている。お客用の中身はルシアが持ってきてくれたものには及ばないが、俺が用意できる限りでは最高級品のワイン。アルス達のはオレンジジュースだ。


 みんなの前に立った俺は、主催者として声を張る。


「まずはじめに、ルシア、ノルン。今日は忙しい中呼びかけに応じてくれてありがとう」


 帝王は忙しい。

 そんな中集まってくれたことに対する感謝を示す。


「俺は今回が初めての【円卓】だった。それを無事に生き延びることができたのはみんなの協力があってこそだ。特にノルンには生まれてからずっと世話になりっぱなしだった。【円卓】を無事に生き延びれたのはノルンのおかげだよ」


 ノルンを見やる。

 すると彼女は、ふふんと鼻を鳴らして答えた。


「それはプルソンたちが優秀だからだよ。ボクはその手伝いをしたに過ぎない」


 その自慢げな態度が、少し嬉しい。

 どうやら彼女は、俺達のことを誇らしく思ってくれているらしい。

 育てられた身としてこれ以上光栄なことはない。


「そうか。ありがとう」


 次に、視線を滑らせてルシアを見やる。


「ルシアも同盟を締結してくれてありがとう。君の勇気ある決断のおかげで、俺達は犠牲を最小限にすることができた」


 彼女は一瞬だけ驚いたような顔をしたが、すぐに常のような勝気な笑みを浮かべた。


「お礼を言うのはこちらの方よ、プルソン。戦争に負けたのにも関わらず大きな被害にならなかったのは、あなたのお陰よ」

「同盟者として、これから色々頼っていくことになるだろうが、よろしく頼む」

「ええ、こちらこそ」


 ルシアがそう言って、チラリと俺の背後を見やる。

 振り返ればそこには、キラキラした瞳で俺を見上げる、大切な仲間達がいた。

 自然と言葉が出る。


「アルス、ルリ、シス。みんなには俺が頼りないばっかりに、苦労をかけてしまったな。十分な戦力を用意できず、大変な役割を押し付けてしまった。すまなかったな」


 【戦争】では彼女たちの力に頼りきりだった。

 高台の防衛、奇襲、黒龍ファブニールとの死闘、そして力を使い果たした俺の救援。

 もし彼女達が一人でも欠けていたら、もし俺の想定通りの力しか発揮できていなかったら、俺達は負けていただろう。


 彼女達には大きなものを背負わせてしまった。

 しかし、そこには俺なりの気持ちがある。


「だけど、それは俺の信頼の裏返しでもあるんだ。みんながいたから、俺は大胆な作戦を立てることができた。俺の期待に応えてくれてありがとう」


 それは期待だ。

 必ずやり遂げてくれると、俺は彼女達を信じていた。

 そして、これからもそれは変わらない。

 俺は彼女達を信じている。


「俺は自分では何もできない。戦いも、領地運営も、一人ではできないことの方が多いだろうな」

「料理もっすね」

「ああ、そうだな」


 料理上手のアルスがニヤリと笑う。

 俺もそれに笑みを返し、ゆっくりと深呼吸をして続けた。


「だけど、俺はみんなに約束する。それはみんなが幸せに暮らして、笑い合える【領地】を作るということ。俺はその為に最大限の努力をするつもりだ」


 仲間達が。

 ノルンが。

 ルシアが。

 訪れた者が。

 そこで暮らす者が。

 誰もが笑い合える【領地】を築きたい。

 俺は本気でそう思っている。


 俺はこの世界について、詳しくは知らない。

 だが一つだけ分かることがある。

 

 それはこの世界が弱肉強食の世界であること。

 強い者が生き残り、弱い者は排斥されて滅びる。

 そんな世界だからこそ、俺は誰もが笑える【領地】を築きたいと思っている。


「みんなにはこれからも迷惑をかけるかもしれないが、俺を支えてくれると嬉しい」


 その目標の実現のためには、仲間達の協力が必要だ。

 俺の言葉に、三人が笑顔でうなずく。


「当然っす。自分はご主人の懐刀っすからね」

「私も、どこまでもついていくの!」

「ですね。私達はパパの矛ですから」


 それだけで、十分だ。

 もはや他に言葉はいらない。


 俺は振り返り、その場にいる全ての者に告げる。


「これからのこと、【領地】について、話したいことは山ほどある。だが今は、今回全てが無事に終わったことを喜ぼう。………旨い料理に美味い酒、俺達ができる精一杯の用意をさせてもらった。仲間達も準備を手伝ってくれたから、ぜひ楽しんでいってくれ。それじゃあ、みんなグラスを掲げてくれ」


 元気よく。

 おしとやかに。

 完璧な作法で。


 各々が自分のやり方でグラスを掲げる。

 俺もこの三か月間の疲れを吹き飛ばすために、気合いを入れてグラスを掲げた。


「【円卓】が無事に終わったことを祝して、乾杯!!」

「「「「乾杯!!」」」」


 こうして、俺にとって初めての【円卓】が終わった。

 そして、最強の【帝王】を目指す日々が始まる。


 伝統芸能で世界を統べる。

 そんな理想を夢に見ながら、俺は勢いよくグラスを傾けたのだった。

前書きにもありました通り、今回で最終回となります。

今後について、少し語らせてください。


プルソン達の今後、帝王の仕事である【領地】運営については、また描くことができたらなと思っています。今後、構想を練って少しずつ書き溜めていきますので、しばらくお待ちいただけると嬉しいです。


あとは少し個人的な思いを…。


私はこの物語が初投稿でした。

右も左も分からない中でここまで続けてこられたのは、応援してくださった皆さんのおかげです。この場をお借りして感謝申し上げます。ありがとうございました。


拙い文章、構成でしたが、今できる全力で物語を綴らせて頂きました。少しでも皆さんに楽しんで頂けたなら、大変嬉しく思います。「面白かった」「続きが気になる」とブックマーク登録や評価、コメントなどをしていただけると大変励みになります。


これから新しい物語や、この物語の続きなどを、更にパワーアップして描くことができたらと考えています。今後ともよろしくお願いします!

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