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第一話:【円卓】

 ゆっくりと目を開ける。


 転移した先は、なんとも不思議な空間だった。


 漆黒の空を覆う巨大なガラスドームの中に、荘厳な城が聳えている。

 あまりに巨大な空間で距離感が掴みにくいが、アルブヘイムにあるノルンの城よりもかなり大きい。

 

 俺たちが立っている場所から、城に向かってまっすぐな道が伸びている。

 その左右には色とりどり、世界中から集めたであろう花々が咲き誇っていた。


 美しく、そして奇妙な光景だった。

 育つ環境と咲き誇れる環境、全てが異なる種類の花々が一斉に咲き誇っている景色は、どこか作り物めいていて気味が悪い。

 

 正面に聳える純白の城は、星々が瞬く漆黒の夜空と美しい対比だ。

 だがそれも、何者かによって計算されたような違和感がある。


「…変な場所だな」


 思わずそう呟くと、隣に転移したノルンがあははと笑った。


「まあここは異空間だからね。そんなこともあるさ」


 彼女はそう言うと、トコトコと純白の城に向かって歩き出す。

 俺はその言葉に、空を見上げて首を傾げた。


「…ここは、本当に異空間なのか?」


 漆黒の夜空には幾つもの星が瞬いている。

 しかしその中に一際巨大で、目立つ星があった。

 それは、青く美しい星だ。


 海と大地を携えた、母なる星。


 俺の中の知識が教えてくれる。

 あれは俺たちの星だと。


「…そういえば、この世界にも月があったな」


 夜空を見上げた時、そこには一つの違和感も無い月があった。

 

 そのことから、一つの仮説が浮かぶ。

 それは、ここが異空間などではない、ということ。

 おそらくだが、ここは俺達が暮らす青い星の衛星だ。


 あの星が地球で、衛星が月なのかは分からない。

 だが縮尺から想像するに、ほぼ同一の存在であると考えて良さそうだ。

 

 一体、どうやってあれほどの超距離を移動したのだろう。


 地球から月までの距離感は、およそ38万km。

 あれが地球であるにしろ無いにしろ、あの星からこの場所までは、きっとそのくらいの距離があるはずだ。となると、俺は38万kmという途方もない距離を一瞬で移動したことになる。

 

 魔法であるにしても、凄まじい力だ。

 俺達をここに呼びだした存在に、少し寒気がする。


「何してるのさプルソン。はやく行かないと遅れちゃうよ」

「あ、ああ。分かった」


 先を行くノルンにそう急かされて、俺は小走りに彼女の後を追いかけた。


 しばらく一本道を歩いていくと、城の入り口に到着した。

 遠目に見ても相当な大きさだったが、こうして麓まで来てみるとそれ以上に大きく見える。


 城の入り口は、巨大な両開きの扉だった。

 俺とノルンが扉の前に辿り着くと、左右に控える美しい女性がゆっくりと頭を下げた。


「「【運帝】ノルン様、【芸帝】プルソン様。ようこそお越しくださいました。どうぞお入りください」」


 二人が、全く同じセリフを述べる。

 すると、扉が奥に向かってゆっくりと開き始めた。わずかに空いた隙間から、凄まじい光が溢れてくる。

 その眩しさに目を細めながらも、俺は【円卓】の会場である城へと足を踏み入れた。



 城の中は、巨大なドーム状の空間だった。


 所々がガラス張りになった高い天井から豪勢なシャンデリアが垂れ、至る所に高価そうな芸術品が飾られている。


 すでに数多の帝王が集う会場には、等間隔でテーブルが設置されている。その上には豪華な食事や、見るからに高そうな酒が用意されていた。みながそれらを嗜みながら、他の帝王との交流を深めている。

 

 しかし、その空間にあって最も印象的なのは、入って正面に見える壇上だ。

 入り口からまっすぐ進んだ場所が、円形の闘技場のように一段高くなっており、そこに巨大な円卓が設置されている。

 それを見ると、どうして帝王たちの集会がそう呼ばれているのかが理解できた。


「なるほど。だから【円卓】か」


 俺が呟くと、近くにあったテーブルの上から、さっそく料理を取り分けていたノルンが答える。


「その通りだよプルソン。あ、でも一つ教えてあげるけど、誰でもあそこに座れるわけじゃないんだ」

「なんでだ? てっきり全員で座って会議でもするのかと」


 ノルンは首を横に振って笑う。


「それじゃみんな入りきれないでしょ」

 

 この場にはすでに多くの者が集っている。

 ざっと見ただけでも100はくだらないだろう。その全てが帝王なのだから驚きだが、たしかに全員で円卓を囲むことは難しそうだ。


「あそこに座ることを許されるのはね、世界でもトップの帝王だけなんだ」


 世界トップの帝王。

 その言葉に胸がざわめく。


「…その数は?」

「二十人」


 ノルンが一度言葉を区切って、俺が理解するのを待つ。

 そして説明を続けた。


「その二十人の帝王たちは、”二十大帝”って呼ばれてる」


 全ての帝王のトップに君臨する二十人の帝王。

 きっと彼らはこの【円卓】にも参加するのだろう。

 一体どのような存在なのか、それを知るのが恐ろしくもあり、楽しみでもある。


「二十大帝になるとどうなるんだ」

「そうだね。まずは何といっても円卓あれに座ることができる。その他にも色々な特権が与えられるんだよ」


 特権か。

 数多の帝王を退けて、その座につくとい苦労に見合った報酬が与えられるわけだ。

 少し、いやかなり興味がある。俺もいつか二十大帝になってみたいものだ。


「他の帝王が二十大帝になるためには、どうすればいい」

「戦いで勝てばいいんだよ。勝てば、その帝王から席を奪うことができる」


 帝王の世界は弱肉強食、ということか。

 実にシンプルで分かりやすい。


「どれくらいの頻度で入れ替わるんだ?」

「ここ百年は一度も変ってないよ。でもそろそろ揺らぐかもね」


 入れ替え戦のようなものがあるのだろう。もしかしたら今、俺の周りに対象者がいるのかもしれない。  

 辺りを眺めていると、ノルンが俺の肩を叩いた。


「さて! いいかいプルソン。いつまでもボクと話しているわけにはいかないよ。キミも一人の帝王なら、自分で色々経験しないとね!」


 ノルンはそう笑って、そこら中にいる帝王たちを見やった。

 きっと、俺に話に行けということだろう。


「分かった。行ってくるよ」

「うん。頑張ってね」

 

 初対面の帝王と話すのは緊張するが、ここでキッチリ見極めさせてもらう。


 俺を舐めるようにして眺める者達と、視線を交わす。

 偽の情報に踊らされて俺を侮る間抜けか、俺への警戒を怠らない猛者か…。

 さて、彼らは一体どちらだろうか。

 少し試させてもらうとしよう。

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