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第二十九話:【円卓】前夜

 いよいよ、タイムリミットが近づいている。

 あれからレベリングや戦闘訓練、選択召喚による軍隊の作成、兵器開発などなど……。様々な仕事に追われ、あっという間に二か月が経過した。


 明日ついに、全ての帝王が一堂に会する【円卓】が行われる。

 家のリビングで明日に向けた準備を行っていると、一緒に作業していたアルスが呟いた。


「レベルアップが間に合って良かったっす」


 俺は指を鳴らして【帝王録】を開きながら答える。


「かなりのペースでレベリングしたからな」


 軍隊作成を決意した翌日からも、俺達はレベリングを続けていた。

 その甲斐あって、アルスたちはかなりレベルアップしている。


 アルスのステータスを開く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:アルス

種族名:人間

ランク:S

LV:15

統率87 知略88 耐久60 攻撃88 魔力50 機動78 幸運32 特殊36

特性:人たらし 龍殺し 王道を征く者 ??? ???

固有能力:英霊召喚


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アルスはついにLv15になった。

 それに伴って能力値も順調に増加しており、前に確認した時に比べて耐久が4、攻撃が1、魔力が6増加している。


「お父様。こっちは終わったの」

「パパの言いつけ通り、スケルトンたちが規定通りの動きをしているか、それだけ確認しました」


 アルスのステータスを確認していると、背後から声が掛かる。

 振り返ると、ルリとシスが扉を開けて家に入ってくるところだった。


「ありがとう。二人ともお疲れさま」


 二人には研究用の倉庫に、スケルトンたちの様子を見に行ってもらっていた。スケルトンは食事も睡眠も不要なので費用対効果が良く、また新兵器の生成にも適任だったため、家の近くにある倉庫で仕事をしてもらっていた。


 俺の研究の成果、それを反映した新兵器作成だ。


「約束を守ってくれて良かったよ。二人をあれに近づけたくないからね」


 俺は二人に、必要以上にスケルトンたちに近づかないように、という指示を出していた。

 それを破ってしまうと、二人と言えども無傷では済まないからだ。


 ついでなので、二人のステータスも確認しておく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:ルリ

種族名:半神

ランク:A

LV:12

統率60 知略75 耐久85 攻撃93 魔力45 機動75 幸運30 特殊80

特性:二連星 剣王 幻獣召喚 ??? ???

固有能力:天界の英雄


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ルリはレベル12になり、能力値も上昇した。

 レベル1の時に比べて、耐久5、攻撃3、魔力と機動が5上昇している。

 攻撃93はすさまじく、もはやLv2ダンジョンではルリの攻撃を受けきれる魔物はいない。

 それに加えて耐久が85になったので、ルリは更に近接戦闘が得意になったと見て良いだろう。


 続いてシスのステータスを確認する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


名前:シス

種族名:半神

ランク:A

LV:12

統率60 知略75 耐久82 攻撃60 魔力95 機動75 幸運60 特殊80

特性:二連星 魔道王 幻獣召喚 ??? ???

固有能力:魔界の英雄


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 シスもレベル12になり、能力値が上昇した。


 レベル1の時に比べて、耐久が2、魔力と機動が5上昇した。


 魔術に関してはもはや言うまでも無く、様々な魔術を効果的に活用することで、援護から殲滅まで幅広い役割をこなせる魔術師になった。ノルンから借りた魔法書を就寝前に読み漁っていることもあり、使える魔術は日に日に増えていっている。頼もしい限りだ。


 それに、彼女達以外の戦力も徐々に増やしている。


 【選択召喚】で呼び出せる魔物は、各魔物につき一日に召喚できる数に制限がある。俺はこの二ヵ月の間、ゴブリンやスケルトン、リザードマンをコツコツと増やしてきた。その結果、今や総数300に及ぶ大部隊になっており、数だけで見ればかなりの大所帯になっている。


 そして彼らには、研究の結果生み出された”新武装”を使わせる予定だ。その効力は既に実験済みであり、上手くいけばほぼ無傷で相手を完封できるだけのポテンシャルを持っている。


 Sランクのアルス、条件次第でランクが上昇するAランクのルリとシス。それに加えて”新武装”で強化された魔物部隊。

 今の戦力があれば新米帝王はおろか、中堅の帝王であっても戦えるだろう。


 三人と魔物部隊の成長に満足していると、ルリがちょんちょんと俺の袖を引っ張った。


「ねえね、お父様」

「なんだ?」

「どうしてまだ【固有召喚】しないの? EPがたくさんあるなら、もう一人仲間がいた方がいいと思うの!」


 俺は少し苦笑して、ご機嫌取りのために彼女の頭を撫でる。

 ルリが指摘した様に、すでに【固有召喚】を余裕をもって行えるだけのEPは手元にある。

 おそらくルリは、はやく妹や弟が欲しいのだろうが、それは少し待ってもらいたい。


「ちょっと理由があってね。それはまた今度にするよ」


 二か月前から少しずつ軍隊を整え、俺自身のレベルを五つ上げた。

 しかしダンジョン最奥に挑めるようになり、レベリングの効率が上がったため収支的には黒字だった。そのため二週間ほど前に22万EPを超え、今や総EPは28万を超えている。


 しかし俺は、無理に【固有召喚】を行わずに温存する道を選んだ。


 理由はいくつかあるが、やはり俺が【円卓】初参加である点が大きい。

 全ての帝王が一堂に会するということは、想定しない事態が巻き起こる可能性がある。その時に適切な対応をできるよう、EPを現物で所持しておく必要があった。


 それに、万が一の”切り札”についても考慮してある。

 俺の”切り札”の使用にはそれなりのEPが必要だ。いざという時の保険と言う意味でも、このEPは残しておきたかった。


「むー。はやく妹が欲しいの」

「弟かもしれないぞ?」

「私は妹がいいの。お父様、頑張って」


 ずいぶんと無茶なお願いをするものだ。

 俺はルリの頭をゆっくりと撫でつつ苦笑して、気を引き締めつつ答える。


「まあそれはいずれね。……本当なら俺も【固有召喚】で新しい子を生み出したい。だけどもう少し待って欲しいんだ」

「もう少し?」

「ああ。この【円卓】が終わるまでね。俺はEPがないと戦えないから、余力は残しておかないといけないんだ」

「EPがなくても、お父様は強いよ?」


 ルリはそう言って不思議そうな顔をする。

 それにはシスとアルスも同感のようだった。


「私もそう思います。ダンジョンを生身で攻略できる時点で相当強いと思いますよ」


 ここ三ヵ月の訓練の甲斐あって、俺の武術はかなり成長した。

 ルリとシスがそう言うと、俺と対人訓練をしてくれたアルスが胸を張った。


「ふふん! ご主人は自分と戦えるんですから、そのくらいはできて当然っすよ!」


 戦える、とはよく言ったものだ。

 俺とアルスはでは、基礎能力や戦闘技術に大きな差がある。正直な所、俺は彼女の猛攻を凌ぐだけで精一杯だ。


 自慢げに声を張ったアルスに、ルリとシスが首を横に振る。


「アルたん。私たちとお父様を一緒にしちゃだめだよ?」

「その通りです。常に魔力で自分を強化してる私達とパパとでは、全く話が違います」

「そ、そのくらい分かってるっすよ!」


 微笑ましいやり取りだ。それに俺の力を認めてくれるのは嬉しい。

 だが、三人の意見を全て鵜呑みにするわけにもいかない。


 俺は自分の力を常に疑っている。

 俺にSランクを生み出せる力があるように、帝王の中には想像を超える強さを持った存在がいると考えて然るべきだ。たかが武術を習得した程度で、他の帝王に対抗できるとは思えない。

 俺が出せる最高の力はEPに依存するもの。ならばそのための備えは必要不可欠だ。


「みんなありがとう。でも、これはあくまで保険だ。不測の事態が起こらない限り俺が戦うことはない。つまりみんなの力にかかってる」


 そもそも、戦いが得意でないくせに直接剣を交える状況に陥る、というのは間抜けが過ぎる。


 三人のやる気を削いでしまうので口にしないが、俺にとって最善なのはまず戦争を避けること。そして次善は、万が一戦争になったとしても他の帝王と一対一で戦わないことだ。


 戦争については詳しく分からないが、どうも降伏という選択肢があるらしい。

 俺はそれを効果的に利用したいと考えている。そして、相手をその選択に追い込むための準備はしてきた。


「ご主人の期待に応えるっす!」

「がんばるの!」

「頑張りましょう」


 美少女三人が、えいえいおーと気合いを入れている。

 俺も心の中でそれに続いて、口元をわずかに綻ばせた。


 さあ、いよいよ【円卓】だ。

 鬼が出るか蛇が出るか。

 気を引き締めていこう。

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