第二十二話:破格の戦力
ルリとシスが仲間になった翌日。
俺達は予定通り、レベリングのためダンジョンへ来ていた。
場所は今までと同じLv2ダンジョンだ。しかし、洞窟を奥へ奥へと進んで行いるため、出現する魔物はかなり強くなっている。単純な強さだけでいえば、Lv3ダンジョンの魔物に匹敵するレベルだ。
そして俺達は今まさに、レベル28のリザードマンの群れと対峙していた。
しかし……。
「ご主人、暇っすね」
「ああ。かなり暇だな」
俺とアルスは見事に暇を持て余していた。
それはなぜか。
答えは簡単だ。
俺達以外の者が、その群れを蹂躙しているからである。
「まさか、これほど強いとはな」
俺は戦場に目を向ける。
今戦っているのは、二人の天使だ。
高レベルのリザードマン六体が、対峙しているルリとシス目掛けて突撃を敢行する。その瞬間、ルリが叫んだ。
「シスたん! お願い!」
「了解です」
二人並んだ状態から、ルリが爆発的な加速で飛び出す。
彼女は残像を引き連れて、一気にトップスピードに到達した。その動きが速すぎて、リザードマンは彼女の動きを捉えられない。
「遅いの!!」
次の瞬間、ルリがリザードマンたちの中央に出現する。
そして驚きの声を上げさせる間すら与えずに、一瞬の内に三体の敵を葬った。
吹き飛ばされた三体のリザードマンが、空中で塵に還る。
リザードマンたちがどうやって倒されたのか、俺にもはっきりとは分からない。
恐らくは剣で切り裂りさかれたのだろう。
帝王である俺の目をもってしても捉えられない、圧倒的な速度。
それはまさに、戦闘に特化したSランクに相応しい強さだった。
『グルゥアアア!』
だが戦いはまだ終わっていない。
ルリの背後から、残りのリザードマンたちが一斉に襲い掛かる。
さすがにレベル30近いリザードマンだ。かなりの速度がある。
しかし、ルリは静かに微笑むだけで何もしない。
ルリは攻撃に気が付いていないわけではない。
彼女は知っているのだ。その敵が絶死の運命にあると。
「ルリに触れて良いのはパパだけですよ」
リザードマンたちがルリを攻撃しようとした瞬間。
彼らの背後に、燃え盛る業火の槍が出現した。
「悪い子にはお仕置きです。【炎槍】」
そんな微笑みと共に、茶髪の少女が指を鳴らす。
すると、炎の槍が唸りを上げながらリザードマンたちに突き刺さった。炎槍はその圧倒的な火力で全てを燃やし尽くし、一瞬にしてリザードマン達を灰燼に帰した。
合計六体、これで全滅だ。
レベル30近いリザードマンたちの群れが、たった数十秒で葬られた。
それも生まれたばかりの存在に。
チリチリと消え去っていくリザードマンたちを見送った二人が、足早に俺たちの元へと戻ってくる。
シスより一足先に戻ってきたルリが、俺の胸に飛び込んできた。
彼女の後ろに腕をまわして、しっかりと抱き留める。羽衣のような素材で作られた衣類の感触と、ほのかに伝わってくる彼女の体温が心地よい。
腕の中で、ルリが目を輝かせる。
「お父様! 見てくれた!?」
「ああ。ちゃんと見てたよ。ルリは強いな」
「えへへ」
俺が褒めると、灰色の目が嬉しそうに曲がった。
「パパ、私の動きは見てくれなかったんですか?」
少し遅れてやってきたシスが、微笑みながら問うてくる。
俺はルリを解放して、苦笑しつつシスを見やる。
「シスの強さもしっかり見ていたさ。本当に、二人が生まれてくれて頼もしい限りだよ」
これはお世辞ではない。
この二人は本当に強いのだ。
強さを求めて生み出したのである程度は予想できていたが、予想の上を行く強さだ。
俺が二人に声を掛けていると、隣にいたアルスがあっけらかんと笑った。
「いやぁ。もう攻めは二人がいれば安心っすねえ」
アルスの評価は正しい。
ルリとシスは、二人揃えばアルスに勝るとも劣らない戦いぶりを披露できる。
それは今実演してみせたとおりだ。
それに、驚くべき真実がある。
それは二人が、まだレベル8であるということだ。
アルスの半分強のレベルで、既に彼女の強さに匹敵せんとしている。
それだけで、二人がどれだけ規格外な存在か理解できるだろう。
だが、それでアルスの格が落ちるわけではない。
レベルが二倍近く離れているとはいえ、現状アルスはたった一人でルリとシスに対抗できる。彼女もしっかり化け物だ。
それに、実を言うとアルスは強さの系統が違う。
ルリとシスが自分自身の強化、純粋な戦闘能力強化に役立つ≪特性≫を持っているのに対して、アルスが持っている≪特性≫は部隊や軍勢の強化だ。
部隊に強化効果をもたらす≪特性≫を用いて軍勢を率いる。それがアルス本来の戦い方だ。
「アルスには軍を率いてもらう予定だからな。二人の運用も任せるぞ」
「了解っす!」
俺は将来的に、アルスに軍の指揮を任せたいと思っている。
そうすることで彼女の≪特性≫を最大化できるからだ。
「さて、それじゃあどんどん先へ進もうか」
「了解っす」
「分かったの!」
「頑張りましょう」
三人がいればこの辺りの魔物は相手にならないだろう。
大量の敵を倒して、【円卓】までに三人のレベルを限界まで上げたいところだ。




