第92話 ツファル族のナギ
食事をご馳走になった日の夜、俺とラディはゼフィスさんからラギ・アルデの力の話を聞くことにした。
「お前さんらが見た俺やくそ野郎の力ってのはな。ラギ・アルデの力で間違いない。だがな。使い方がまるで違う」
「そうですよね。術の詠唱も必要とせず、身体能力だけが向上しているように見えました」
「その通りだ。ラギ・アルデがそもそも何なのかは分かるか?」
「この星全体に流れる見えないもので、その辺の石ころにも存在するもの……でしたよね」
「俺もそれくらい知ってるぞ。すげー力なんだろ?」
「すげー力……か。確かにあの存在はすげー力って言えば単純だろう」
「あの存在?」
「竜と人を育む大気の神、ラル・ゾナスのことだ。ラギ・アルデの力を発揮するために戦士タイプはその力を巧みに使いこなさなけりゃならねえ。だがな。お前らいくつだっけか?」
「僕は九歳」
「俺は十歳だ」
「若すぎる。肉体がもたねえな」
「だからアスランも教えてくれなかったのか?」
「きっとそうだね……でもまさか、ラル・ゾナスの名前がここで出て来るとは思わなかったです」
「お前は北国出身だったな。祈りの言葉にもあっただろ?」
「はい。幼い頃に母から教わりました」
「十五歳。いや、十七歳位でようやく使えるようなものだ。名をゾナス。文字通りラル・ゾナスから用いた戦闘方法の一つだ」
「ゾナスってのが使えればドラグみてーな動きが出来んのか?」
「言ったろ。体が出来上がってなきゃ内部の臓器がもたねえ。お前らのようなガキじゃまだ早すぎるんだよ。いいか、使うのはラギ・アルデの力のみにしておけ」
「けどよ。使ってみなきゃ分からねーだろ。教えてくれよ」
「ダメだ。俺はお前らを気に入ってる。無駄死にさせたくねえ。鈴の音の洞窟にはナギをつけてやる。今のお前らより随分と強いし役立つ能力もあるからな」
「ナギさんが?」
「あの洞窟はお前らだけじゃ危ねえって思ったからな」
「それは助かるけど、俺たち金持ってないぞ」
「いらねえよ。十分な対価をもらったからな。それにナギの修行でもある」
「十分なもの……もしかして赤竜の火種!?」
「そうだ。つっても武具の作成に使っちまうからこいつでの儲けは無いんだがな」
「それってそんなにすげーものなのか?」
「まぁな。幸運の鳥が持って来てくれたようなもんだ。精々大事に使わせてもらうさ」
「……? まぁ、それは構わないんですけど。ナギさんは良いと?」
今この場にナギさんはいないが、本当に良いんだろうか。
「ああ。ついでに取って来てもらうものもあるからな。ナギにとってもいい修行だって言ったろ?」
「んじゃ、そーしてもらうか。ミレンを守りながら戦うの、きちーからな」
「そうだね。知らない人を雇うより良いかな」
「もう一人傷の手当が出来る奴が欲しいな。ナギは傷の手当が上手くは出来んからな。そこでほら、あのマージ職員をつれてけ」
『ええっ?』
まさかミルルさんを!? って考える暇も無くさっさと話しをしにいくゼフィスさん。
しばらくしてナギさんとミルルさん双方を連れて来た。
「皆さん、改めて挨拶しまふ。ツファル族のナギです。よろしくお願いしまふ!」
「私も本当に行くんですか!? 確かに治癒術を使えますけどぉ」
「無理はしなくてもいーんだぜ姉ちゃん」
「いえっ……あんなに美味しくて冷たいお菓子を食べたら、後には引けません!」
「確かにすげー食ってたもんな……美味かったけど。あれ、何て言う食い物なんだ?」
「かき氷っていうんだ。氷を削ってシロップをかけるんだけど、この町には丁度合いそうな果実があったからね」
「そっか。それでネビウス先生が完成させたのか。氷は?」
「もちろんキュルルが出してくれた奴だよ。竜のかき氷!」
「キューー!」
「貴重過ぎる……この辺に氷を吐く竜なんて一匹もいませんからっ。それにしても驚きました。キュルルちゃんが竜だったなんて。ずーっとラギだと思ってました」
「この地方にも竜は沢山いまふ。でも、氷を吐く竜は一匹もいないですね」
「ナギさんって独特の喋り方ですね。語尾にたまにまふがつくの、可愛いです」
あれ、恥ずかしがってる。
もしかして女性なのかなー。
「恥ずかしいです。でも嬉しいです。私のお下がりも良く似合ってまふ!」
「これ、ナギさんのだったんだよね。ナギさんはどうやって戦うの?」
「ナギは格闘専門です! 接近しないと戦えないけど、この跳躍力で……まふっ!」
高く跳ね上がってみせるナギさん。
凄い、カエルジャンプみたいだ。
相手に飛びついて戦う格闘スタイルなのかな?
その様子を近くで見ていたゼフィスさんが口を挟む。
「ナギは持ち前の脚力を活かす戦闘を好む。弱点は頭の上の目だ。上からやられんようにローブを着てるんだ。ローブで格闘だから防御は弱いし余計なものも身に着けられん」
「まふ……」
「その代わり採掘や採取もしやすいってわけだ。重い武具を持ってたら持ち帰れるもんも少なくなるだろ。ナギはその点多くの素材を持ち帰れる。腕力もなかなかだ」
「まふっ!」
「ただし採取はまだまだ三流だな」
「まふ……」
感情の起伏が激しい……っていうかわざとやってるよね!?
ゼフィスさんからすればまだまだひよっこってことなのかな。
「あのよー。その洞窟ってやっぱ暑っちーのか?」
「鈴の音の洞窟はそうでもないぜ。だからこそ……獣が住み着きやすいのさ。詳しくはナギに聞け」
「そっかぁ。ここよか涼しいなら早く行きてえなぁ」
「それとファウ。お前の言ってた竜の餌もそこに行けば手に入るだろう。そいつもそろそろ肉を食う頃なんだろう?」
「はい。マルンモーの肉は食べませんでしたけどね」
「美味かったけどなー。独特の味だったぜ」
マルンモーの肉は確かに美味しかったけど、ラム肉のような少し癖のある味だった。
大きな方のマルンモーは赤竜がもっていったけど、あっちなら食べたのかなぁ。
「後は行きゃわかんだろ。気を付けて行ってこいよ」
「ゼフィスさんはこれから?」
「赤竜の火種を使って一仕事する。戻ったらまた顔を出しな」
「はい。色々有難うございました」
そして四人パーティーが組めました。護衛対象を入れると五人です。
いよいよ冒険に出発!
そして修正後の補足……ナギがスメラギ族になっていました。
これは最初に考えた種族名で、意味を調べてから取りやめたんです。
まさか残ったままだったとは……種族名などはその場で考えてつけるんですけど、あとから意味を調べて
ナンデヤネン的な感じになることが多々ある作者です。




