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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第三章 ウラドマージ大陸、序幕

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第91話 ゼフィス商会隊員の顔合わせ

 ウラドマージ初依頼から港町へと戻った俺たちは、町の入り口でゼフィスさんと別れて宿屋へと向かった。

 そこでミレンとネビウス先生に話を通し、二人とも来てくれると約束してくれた。

 ネビウス先生は冷たい食べ物の試供品を完成させており……そこで俺たちが持ち帰った果実を使用してみると、とても美味しい甘味処が完成した。

 これをミルルさんに提供するため、ゼフィスさんの食事をご馳走する場に持って来てくれるという。

 そして、俺とラディはマージへと向かい、ミルルさんにことの経緯を話している最中な

のだが……「グラノドスに遭遇したですってぇーーー!?」

「……声、大きいです」

「姉ちゃん。目立ってるから!」

「そりゃ声も大きくなりますって! この地方伝説の竜ですよ!? 無事? 無事なんですよね? ファウさんもラディさんも生きてますよね? 死んでませんよね?」

「目の前にいますけど?」

「……良かったぁー。しかも、もう依頼を二つも終わらせてきたんですか?」

「三つ終わったぜ。これから姉ちゃんも食事に誘うところだったんだ」

「食事にご招待!? 本当ですか? 主任ーー! 私今日、早退しますーー!」

「……ええっと。それは困る」

「そんなぁーー」

「ゼフィスさんに知り合いを誘うように言われてまして……まぁ急ぎじゃないんですけど」

「ほう。それならば仕方無いか。彼には色々と仕事をもらっているからね。失礼があっては困るが……ミルル君、くれぐれも失礼の無いように」

「いやったぁーー!」

「やれやれだな」

「依頼の納品物はどうすればいいですか?」

「それはこちらで預かります。登録証を係の者に。ミルル君。せめてその二人のお仕事はやっていくように」

「はっ!? 失礼しました。登録証に記録しておきます。支払いは確認が済んだ後になるので後日またいらしてくださいね」

「そっか。ミルルさんの依頼、達成したことにならないもんね」

「まぁ金は後でいいよ。今日の飯は無料だし」

「何ですとぉー!? くぅー、楽しみです!」


 話も終わり、今度は市場へと向かう。

 キュルルも連れて来ているが、市場で迷子になると困るのでちゃんと抱えている。

 物珍しいのかキュルルはキョロキョロしていた。

 随分と重くなってきたし、キュルルのことを記す内容も増えて来た。

 これは鈴の音の洞窟の一件が落ち着き、ウラドマージへ向かうときにでももっときちんと書き留めておかないと、と考えている。

 竜用の食事も少ないので、その辺りもゼフィスさんに相談しなければならない。

 ひとまず全ては鈴の音の洞窟が解決してからかな。

 

「なぁファウ。ミルルの姉ちゃんにキュルルのこと、話しておいた方がいいんじゃねーか? ここはもうエストマージじゃないんだしさ」

「そうだね。後で話しておくよ」

「何ですかー? このミルルに隠しごとしちゃってるんですかぁー?」

「あはは……隠しごとってわけじゃないんですけど。さぁここですよ」


 ゼフィスさんに案内された場所を再び訪れる。

 この辺りはミルルさんも訪れたことが無い様子だった。


「ふえー。こんな場所もあるんですね。港町オーゼクスも侮りがたし……」

「ここってオーゼクスって名前の港町なんですか?」

「知らなかったんですかー!? てっきり知ってるものかと」

「俺たち本当は直ぐここを発つ予定だったからなー」

「ウラドマージへ向かうんですよね。私も必ず向かいますから!」

「マージってそんなに所属場所変えられるものなんですか?」

「ええ。希望さえ出せば。一か所に集中し過ぎるってことは無いんですよ。だって移動すると手当がもらえるんですもの」

「上手く循環してるってことですね。そんなに移動が激しくても仕事ってスムーズに出来るものなんですか?」

「ええ。私のようなベテランがあちこち回っていますから。えっへん!」

「へー。姉ちゃんってベテランだったんだ。そうすると見た目よりも年食って……」

「んー、何か言ったかなー。この可愛いお口とお耳がどうなってもいいのかなー」

「ちょ、耳触るなって! 止めてくれー!」


 ……いいなー。俺もラディの耳を触ってみたいのに。

 あの獣耳……きっと素敵なもこもこ感触に違いないけど怒られるだろうから触れていない。

 それにしてもこの町は変わった種族も多いし、明らかに子竜だなっていうのを連れてる人もみかける。

 獣人や亜人にとっても暮らしやすい土地なんだろうな。

 ……ちょっと治安悪そうなのが難点なんだけど。

 と、三人で話していたらゼフィスさんがこちらへやって来た。


「おう。連れて来たな。マージ職員の姉ちゃんか。なかなか見どころありそうだ」

「初めまして! ゼフィス商会の頭目さんですよね。マージ職員のミルルです。今夜はご馳走を頂けると聞いて……じゅるり」

「あ、ああ。ナギより元気だな……後で戻って来てるうちの構成員を紹介してやる」

「ゼフィスさん、ドラグは?」

「あの野郎ならとっくに酒盛り始めてるよ。遠慮ってものを知らねえ」

「あはは……何せドラグですから」

「それにしてもあいつ何者だ? エストマージから来たって割りに随分と腕が立つ。スミグニってのはそんなに屈強な戦士揃いなのか?」

「んー、どうだろ。ドラグはその中でもかなり強えと思う。オオグニ族で勝てるのは多分アスランくらいだ」

「それ、ドラグが聞いたら絶対否定するよね」

「ほう……つまり戦闘特化型ってわけだ。気に入らねえ野郎だが腕だけは認めてやる」

「僕らもドラグを目標にして修行したんです。まともに戦ったら全然勝てないと思う」

「でもよ。俺たちだって強くなってるんだ。いつかあいつにだって……」

「無理だな。あいつの目はお前らと違って死地にある奴の目だ。あれを目標に掲げんのは止めておきな」

「死地? でもあいつ、目標とかあんのか?」

「ラディ。多分西のことだよ。ドラグはそこを目指してるみたいだから」

「んー、そっか。でも俺はあいつよりぜってー強くなるぜ!」

「はっはっは。威勢は認めてやるがな。お前らはまだまだ子供だ。肉体作りや修行が必要だろう」

「そうだ! 僕たちゼフィスさんに話を伺いたくて」

「……まぁ、それはこっちもだ。特にその竜について聞きたいところだな」

「キュー?」

「……ふう。まずは飯を食え。酒は出せないが、腹いっぱいにしてから話そうぜ」


 その後ネビウス先生も交えて久しぶりに食事を一緒に取った。

 どうやら先生は異匠の船の取引相手として、ゼフィスさんを選んだようだ。

 ミレンも母と一緒にここを訪れ、十分な食事を満喫出来たようだ。

 宿屋の方は雇い入れが回していくれているらしい。

 鈴の音の洞窟に関する話もそこでまとめて承諾を得た。

 娘の不注意であると言っていたが、当然心配だろう。

 こちらも俺とラディ以外に後二人連れて行くことを約束しておいた。

 食事もそれなりに進んだところで、ゼフィスさんが俺たちの前に数名の人を連れて来てくれた。

 その中には一度見たことのあるナギさんもいた。


「おう、さすが育ち盛りだ。良い食いっぷりじゃねえか。うちの商隊員を紹介しよう。つっても今いんのは五人だけだ」

「ナギでありまふ。一度お会いしましたね。ツファル族は独特な見た目ですから気にする人も多いのですが、よろしくお願いしまふ」

「ナギについてはまた後ほど話す。依頼を頼むつもりだからな」

「ルオノールだ。斥候をやることが多い。お前らゼフィスに目をつけられるとは災難だったな。こいつは顔が広い。他の商人と取引はもう出来んぞ」


 少し頼りなさそうな背の低い男性だ。

 目が少し離れているような顔つきが特徴で、腰には短剣が差してある。

 盗賊? ではないけどそう言われても不思議では無い気もする。


「おいおいルオ。もう少し良い方向に例えろっていつも言ってるだろ。こいつは足が速いし手も早い。大抵の情報を一番早く持ってくるのもコイツだ。まぁ戦力にはならないがな」


 確かに素早そうだ。装備も軽装っぽいし。


「ゲラ、ルゲーラルいいます。あなたたち、可愛い」


 この人は亜人種だ。

 人のように見えなくも無いが、目の周り部分だけ鱗のようになっている。

 それに注目すべきは尻尾が生えていることだ。

 何ていう種族か分からないけど、今は話を聴こう。


「ゲラ。こいつら男だぞ。俺も驚いたけどな」

「失礼、言いました。ゲラ、可愛いもの、好きです」

「こいつはルルト族って言ってな。尻尾、生えてるだろ。こいつで木にぶら下がることも出来る。おまけに腕力体力もあり、頭も良い。うちの数少ない有力な戦士だ」

「すっげー強そう。あっちのルオっておっちゃんより何倍も」

「おいおい。聴こえてるぞ坊や。こっちは戦い専門外だ。役割があるわけよ、はぁ……ガキに言っても分からんか」

「ゲラと比較されると大抵の戦士がかすんじまう。彼女はうちの隊員でも上位に入るからな」

「女の人だったんですか!? あっ……」

「謝る、しなくて平気です。勘違い、こっちも、同じですから」

「はい……」

「次はおいらの番でしょー? ケルチックだよ。見ての通り、ラールフット族さ。よろしく」

「ラールフット族? 何だそれ?」

「知らないの!? 信じられないほど無知なんだなぁ」

「ケル。こいつらはエストマージから来たんだ。知らんのも無理はない。こいつは口が悪いが大体は悪気がないんだ。手先が器用ですばしっこい。主に罠の発見や、逆に罠を作ったりする。いわゆる罠師って奴さ」

「罠師? 罠なんて仕掛けられたりすんのか?」

「当たり前だろう。俺たち商会は古代文明からお宝を発見しに行ったりもする。まぁお前らには関係無いだろうがな」

「お宝!? うひょー、聞いたかファウ。すっげー行ってみたいな!」

「え? うーん。危ないんじゃないかなぁ。ケルチックさんは僕らと同じくらい小さいけど、経験を積んでいるだろうし」


 と言ったら周りの空気が凍り付いてしまった。

 そうかこの人、子供じゃなくて大人なんだ……。


「なかなか愉快な子供だね君らさぁ……おいらが鍛えてあげてもいいんだよ?」

「おいおいケル。子供にムキになるなって。ほら最後にリリスミン。お前も挨拶しとけ」

「……気安く、喋り掛けないでね」

「こいつは変わっててな。うちの術法士だ。後衛とだけ言っておくか。基本無口だ」

「……そうでもない」

「無口って言うと怒るから言わない方がいい。見ろあの目」

「それで商売出来んのか? 姉ちゃん……ひっ!?」


 ラディなら絶対失礼なこと言うと思ったけど、本当に怖い目つきの人だった。

 ターバン巻いてる女性で、ラディの前に出した指先から電撃が走っている。

 初めて見た……雷の資質を持ってる人だ! 

 でも直ぐ引っ込めちゃった。


「リリスは怒らせるなよ。気を付けないと心臓麻痺するぜ。さて、今いる隊員は紹介した。なんでこんなことをするかってえとだ。あっちのおっさんから依頼を受けた。ある特別な船の取引相手として選ぶ代わりに、俺たちがお前らをウラドマージへ連れて行く。つってもこいつらはまだここでやることがある。それらが終わったらこいつらをウラドマージまで連れてく。お前らいいな!」

「子供の護衛かい。気乗りしないけどねえ。そんなのナギにやらせればいいだろ?」

「ナギだけで護衛はまだ早い。それに当然だが商売もする。降りたいなら降りてもいいんだぜルオ? 大分ツケが溜まってるんだろ?」

「……行くよ」

「可愛い、守りたい。ゲラは行きます」

「子供に間違われてるからねー。大人として良いところ見せないとさ。示しってものがつかないよね」

「……好きにすれば」

「ナギは当然行きまふ!」

「よっし決まりだ。ひとまずナギ以外は好きにしてな。出発まで日はあるから各自準備だけしておけよ」


 そう言うと全員散り散りに別の場所へと移動していった。

 なんかトントン拍子で話が進んでいく。

 これが本物の商売人か。

 マトフさんのように一軒構えの商売人とは明らかに違う。

 商会として人を動かす主。

 これが……ゼフィスさんか。

 そうだ、この後はちゃんとラギ・アルデの力について尋ねないと。

一気に人が増えましたが、今覚えておくべきはナギさんだけで十分です。

他の四名に関しては、再度登場する場面がある予定ですのでそのときにでも。

「いい意見。思います。ゲラも、そうしたい」

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