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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第三章 ウラドマージ大陸、序幕

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第88話 幸運を運ぶ鳥

 白装の名前が出てからゼフィスさんは顔色が悪く、苛立ちを覚えているようにも見えた。

 白装のことを良く知っているのだろうか。


「ゼフィスさんは白装っていう種族のことを良くご存知なんですか?」

「竜を操る最強種族。それが白装。奴らは巧みに竜を飼いならし、鍛え、生きている。だが本当に東へ攻めて来たってのか」

「はい……でも、僕らが白装が何なのかを知っているわけじゃないですし、他の人に聞いた話によると……としか言えません」

「そいつは信用出来る奴なのか?」

「はい。とても」

「……だとするなら、奴らの間で内部抗争があったのかもしれないな。穏健派と強硬派に分かれているのは昔からだ。差し詰め、竜の種不足か」

「竜の、種?」

「そっちはいい。そうすると次は東じゃなく北だ。しかしウラドマージに大量の流民が入って来るのは間違いない。それに売れる商品傾向……お前はオオグニ族だろう?」

「んあ? そーだけど」

「オオグニの種族は手先が器用だと聞くが本当だな?」

「ああ。みんな皮細工が得意だ。俺もな」

「ほう。良いぞ素晴らしい情報だ。お前らの武具一式は俺が面倒みてやる」

「本当ですか? あ、あの。もしかしたらこちらにマトフさんという商人がいつか訪れるかもしれません。そのときはお力添えして頂けませんか?」

「マトフだな。良いだろう、お前は金になる話を持って来た。そいつはつまり幸運を運ぶ鳥に等しい。そしてだ。幸運を運ぶ鳥が紹介する者には大事なものが付くと言われている」

「大事なものって何だ?」

「利を呼ぶ羽。こいつは景気の良い話だ。チュアン。リストにマトフの名前を入れといてくれ。それと明日、いや明後日以降からどんどんエストマージの情報を流せ。それとゼフィス武具店で獣人亜人大歓迎、皮職人ならなお大歓迎の情報も先んじてだ」

「お金はぁー?」

「後金でレギオン金貨二枚」

「やるやるぅー。一杯流すね」

「そんなに払うんですか?」

「ああ。ついでに皮の仕入れと鉱石も必要だ。他に来そうな種族はいるか?」

「後はスミグニ族も来るかもしれないけど、どうだろーな」

「そーいや一人スミグニ族って奴と特徴が似てる奴を見たって噂があったな。珍しい種族だが」

「それ、ドラグだよね」

「あー、間違いねー」

「何だお前らの知り合いか。ここへ連れて来れないか?」

「んあ? いーけど来るかなぁ?」

「武器をやってもいい」

「それなら絶対来るね」

「ああ、出来るだけぼろい奴で頼む。あいつ強すぎるから」

「ぼろい武具なんてあると思うか? うちはゼフィス商会。国内最強の武器を売る店だぞ」

「あはは……自分で言っちゃうんだ」

「なぁ。鉱物仕入れるって言ってたけど、どこで使うんだ?」

「俺が作るから仕入れるに決まってるだろ?」

「ええっ? ゼフィスさんって鍛冶屋だったんですか?」

「鍛冶屋? それは俺の仕事じゃない。雑用の仕事だな。俺の本業は武器加工。伸尖剣だって俺が作ったもんだ」

「本当ですか? じゃああの金貨五十枚の伸尖剣も?」

「まぁそうだな。いや、あれは俺だけの力作じゃない。それよりもどうだ? 他に金になりそうな情報は無いか?」


 あるんだけど、これ以上今は話したくないな。

 やらないといけないことも多いし。仕事が増えるのは避けたい。


「今のところは。俺たち鈴の音の洞窟まで行かないといけなくて」

「それなら鈴塩岩鉱ってのを少し取って来てくれないか?」

「そりゃ良いけどよ。俺たち冒険者だから依頼通さないとまずいだろ?」

「おっとそうだったな。そっちはラギに頼むか……」

「ラディ。僕たち依頼受注一杯だよ……」

「やべ、そうだった」

「まずは武具一式を用意してください。受け取ったら二つ依頼がこなせるんです。それが終わったらゼフィスさんの依頼を受けて鈴の音の洞窟に向かえますから」

「いや、そっちは俺の雑用にでも頼むとする」


 と言って、ゼフィスさんは思案し始める。

 頭のターバンを少しぽりぽりかくと……「今受けてる依頼に俺も同行していいか。お前らの行動を少し確認したい」

「ついて来るんですか? 構わないですけど……ゼフィスさんて戦えるんですか?」

「まぁな。あらゆる武器を試してみないと使い勝手が分からないだろ。色々なものを使ってこそ初めて分かるもんだ。作り手や売り手が客に物を売るのに、それが何なのか分かりませんなんて言えるか?」

「いえ、その通りですね。商品を売るのに説明出来なければお客はつかないでしょうし」

「そりゃそーだな。道具は使わねーと良し悪し分からねーもん」

「おっと。それとスミグニ族の件は頼んだぜ。俺はこのまま雑用に色々任せてくるから」

「雑用ってあのねーちゃんじゃねえのか?」

「ラディ。あの人はここのお店の看板娘さんじゃない?」

「あいつは看板娘ってだけじゃない。情報を操作する魔術師みたいなもんさ」

「ひっどー。ゼフィスさん! こんな美人に失礼でしょ!」

「ああ悪かった。ほれ、ここの支払い」

「もー。後でナギちゃんにも言いつけてやるんだから」

「よせ。さぼってたとか言われるから」


 ナギちゃんって人が雑用なのかな。

 しかしゼフィスさん……これは素敵な出会いだったかもしれない。

 ――それからゼフィスさんの武具店ではなく在庫管理している場所? へと案内された。

 そこには様々な武器だけではなく、衣類……つまり防具となるようなものも沢山置いてあった。

 

「ここがうちの倉庫だ。どれも一級品だがお前らは子供。これらは大人用だ」

「くっそー。全部でかすぎて身に着けられそうにない。恰好良いのに……」

「僕は術使いだから鎧はちょっとね」

「ファウはラギ使い……術法士か」

『術法士?』

「こっちの大陸じゃラギ・アルデ専門の使い手をそう呼ぶのさ」

「術法士……良いですね! これからはそう呼ぼう。何かしっくりきますし」

「そうすっとナギのお古が……あったあった、これで良いだろ」

「……はい?」

「ほれ、これ着てみろ」

「あの、女の子用じゃ」

「ん? だってお前女のガキだろ」

「いえ、僕は男です……」

「俺も男だぞ」

「何だと? お前ら男? どう見ても女にしか見えん。そっちで客寄せしたら大儲け出来るぜ」

「子供に何やらせようとしてるんですか!」

「いやーすまんすまん。だがそのローブは別に男が着たって問題無い。風通しも良く、ウラドマージの気候にもあってる上に頑丈だぞ」

「でも色が……少しピンクっぽいんですけど」

「薄い紫の線が入ってるだろ。大丈夫だ、いいから着てみなって。そっちのガキは……」

「俺はラディだって。いい加減名前覚えてくれよ」

「お前からはあまり幸運の匂いがしないが……ラディ。お前は短剣で戦うスタイルなんだろ?」

「何で分かるんだ?」

「最初に手に取った武器があっただろうが」

「ああ、良く覚えてるな」

「商人ってのは洞察力に優れてなきゃいけない。それに記憶力もだ。ベージギャップナイフ……こいつかな」

「ん? 何だこのナイフ。真ん中が繰り抜かれて穴が開いてるぞ」

「そいつはギャップナイフという。俺が作ったものだ」

「穴あき包丁みたい。切ったときに切っ先がくっつかないようにするためですか?」

「それだけじゃない。ナイフにおいて大事なのはなんだか分かるか?」

「んあ? 振り回しやすいことだろ?」

「軽くて頑丈なことだ。そもそも短剣は身のこなしが早い奴が好んで使う。そう言う奴に売れる。ナイフ自体が重けりゃ売れない。だが、軽ければ軽い程壊れやすい。そいつであのワラ人形を突いてみろ」

「ん? ああ、分かった」


 ラディはガルンウィドを使い加速して、一直線にワラ人形を突いてみせた。

 深々と突き刺さったが、突き刺して引き抜いたラディが驚いていた。


「何だこれ。スッとナイフが抜けたぞ」

「凄い切れ味だね」

「それだけじゃねー。軽いから楽に握れる」

「刃物ってのは落とすと危ない。だから自然と力が入りやすい。使い続ければ握力がきつくなる。そいつはその軽さと強度のお陰で握り手が楽なのさ」

「すげー! いいのかこれもらっても」

「もらう? 情報の対価だ。防具も選んでやる。お前は根っからの軽装向きだな。一番重要なのは靴……ちょっと待て。お前ら……まずはもっと綺麗に体を洗ってこいー!」

ようやく手に入れた武器防具。

名前は別の話で公開されます。

しかし相変わらずどちらも女の子と間違われ続けてますね……。

年齢もまだ九歳と十歳。無理もないですね。

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