第85話 港町で三つの依頼
翌日早くに目を覚まし、ラギ刻限時計を確認するとラギが三つ付いていた。
朝七時位なのかな。三時間毎の大まかな時間しか分からないが、これでも随分と助かっている。
もっと正確に時間を計れるものもあるのかもしれないけれど、今はこれでも十分だ。
キュルルはまだ眠っているから食事を用意してあげて、出掛ける準備を整える。
この部屋はちゃんとドアがあり、各自一人一部屋分となるように分かれている良い部屋だ。
ネビウス先生は研究などの邪魔をされたくないので、一番奥の部屋を使っている。
ラディの部屋にも少し大きめの氷を作っておいたので、今頃ぐっすり眠っているだろう。
……と思っていたら、部屋をノックする音が聞こえてきた。
「おはよー……ファウ―……」
「ラディ? 随分早起きだね」
「暑くて寝てられねーんだよ……ファウ、よく平気でいられるな……ってこの部屋、涼しいな」
「キュルルが時々氷を吐き出してるからね。キュルルも暑いのは苦手みたい」
「そーいやキュルルって氷竜なんだろ? すげー恰好良くなりそうじゃねーか?」
「氷竜かは分からないけど、そうだね。炎を吐く竜が一般的だけど、氷を吐く竜は珍しいかも。本の世界だとさ、様々な息を吐く竜がいるんだ! それでね……」
「朝から元気だなファウは……俺はもー暑くて、ここでずっと過ごしたい。お休み」
「ラディ。今日はマージに行くんでしょ? ラディ……寝ちゃった」
キュルルもラディも寝ているので、仕方なくその場に置いて一人でマージへ向かうことにした。
航海を終えたばかりだもの。無理はないよね。
自分は思ってたよりずっと元気だ。
キュルルは到着してからずっと疲れてる様子なので、あの船を動かしていた影響もあるのかもしれない。
今回のマージの依頼は俺とラディでこなし、キュルルは休ませてあげようと考えている。
さて、マージへ向かわないと。
【冒険者依頼斡旋所、マージ】
「ファウ君ー! こっちこっち」
「ミルルさん。早くにすみません」
「あれ、相棒ちゃんは?」
「相棒ちゃんって……ラディのことですか。暑さでダウンして寝てますよ」
「それ、分かるー。氷使いが沢山いてくれたらなぁ……」
「あはは……」
自分が氷術を使えるのはギルドで登録したときに知っていると思うけど。
流し目で見て来るのを回避して話を進めてもらうことにした。
「それで、依頼や鈴の音の洞窟についてはどうでしょうか?」
「そうでした。依頼ですが、こちらの三つでどうですか? 一枚ずつ渡しますね」
「はい。それじゃ……」
【ツメ用依頼、採取と納品】
依頼内容、多肉食物の採取。
ウラドマージでは近年、多肉食物が盛んに取引されるようになった。
湿地帯にある木、特にマルコフを始めとした様々な果実を取って来てくれないか。
もちろん味見をして飲み物として売れそうな果実だけにしてくれよ。
期限、出来るだけ早く。そして多く。早くて多いほど報酬は上がる。最低果実六つ以上。
報酬、レギオン銀貨最低二枚から。
報告場所、ウラドマージ国、マージの受付まで。
依頼主名、ゲラハドーダ
……一つ目は採取の依頼だ。
どの辺りで取れるんだろう? この辺りの詳細な地図はあるのかな。
ミルルさんに確認しないと。
その前に次の依頼を見てみよう。
【ツメ用依頼、急募! 暑さ対策用品】
依頼内容、涼しい道具の考案と提供。
もう耐えられません! 何て暑いの! この国、どうかしてるわよ!
ということで、私のために暑さを緩和する道具を作ってね。
報酬は弾むわよ? うふっ。
期限、出来るだけ早く! 理想は三日以内。
報告場所、ウラドマージ国、マージの受付まで。
報酬、最低レギオン金貨一枚。
依頼主名、あなたの専属担当、美しく儚いミルルお嬢様より。
……ええっと。
次を見ようかな。
【ツメ用依頼、肉類の調達】
依頼内容、食用肉の確保。出来るだけ新鮮な肉を所望。
ここんとこなぜか港町が活気づいていてね。人の流入が多いんだ。
それで食糧が不足しがちだ。
肉の調達を頼みたいのだが、荒れ地付近にいるマルンモーという獣肉を調達してくれないか。
どう猛な奴だが、冒険者ならなんとかなるんだろ? 頼むよ。
期限、二週間以内。
報酬、大きさ次第で金貨五枚まで。
報告場所、ウラドマージ国、マージの受付まで。
依頼主名、精肉店、マドワルマゾワ。
……これは討伐任務の部類かな。
採取と製作と調達の三つ。
全てこなして最低で金貨六枚と銀貨二枚。
ラディとネビウス先生と分けても、数日分の労働代金位にはなりそうだ。
依頼を読み終わった俺を見て、ミルルさんがにこやかに微笑む。
「どうですか? やってくれますか?」
「ミルルさんの依頼は僕じゃなくてネビウス先生にお任せしようと思ってるんですが、それでも構いませんか?」
「ええ、構わないわ。依頼を報告しても達成権利は冒険者であるあなたのものになってしまうけれど、それでも構わないかしら?」
「はい。お金は分ける予定ですけど、手分けして仕事をしようという話はついていますから」
「それなら構わないけれど、あの方ってそんな便利な道具を作れそうなんですか?」
「ええ。先生は既に食べれる冷たいものを……」
「何それ!? しーーーっ。絶対話しちゃダメなやつ! ちょっとこっち来てください!」
「えっ? はぁ……そろそろ戻らないと」
「いいから!」
手を引っ張られ、無理やり奥の個室に連れて来られてしまった。
キュルルもラディもそろそろ起きてるだろうから、帰りたいんだけどな。
「ファウさん。もう一度聞きます……食べれる冷たいものって言いました?」
「はい。かき氷って言うんですけど……でも、エストマージと違って甘味が手に入らないので」
「か、ん、み!? ちょ、ちょっと待ってね。お金、お金……ここ、これでその冷たい甘味第一弾を私に持って来て下さい!」
「落ち着いて下さい……それなら依頼内容を冷たい甘味の提供へ変更すれば良いのでは?」
「分かりました! では書き換えた上で……報酬アップの金貨三枚! 私の懐、もってけー!」
「いえ、お腹を見せないで下さい……」
服をヒラヒラさせるミルルさん。
この人、相変わらずだなぁ……。
ウラドマージ大陸での初仕事が決まりました。
直ぐ出発! の前にやることがあります。
それはきっとファンタジー好きの皆さんなら分かる……はず!
答えは明日も投稿するので直ぐ分かるんですけれども(笑)




