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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第三章 ウラドマージ大陸、序幕

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第83話 港町にあるマージ。再会のあの人

 宿屋の娘、ミレンに道案内してもらい、俺たちはマージの前までたどり着いた。

 この町は少し独特な雰囲気が感じられる。

 温暖過ぎる気候の影響もあるが、開放的な雰囲気の人が多く見受けられた。

 暑過ぎるからマージよりも先にお風呂に入りたいんだけど。

 でも、お風呂は異世界に無いんだよね。水浴びでもいいからしたいけど、ネビウス先生に町中で絶対水のラギ・アルデは使わないよう釘を刺されてしまった。

 きっと、生成される水が貴重なのだろう。


「ここがマージれす。わりゃしは入るなって言われてるので戻るれすが、大丈夫れすか?」

「うん、有難う。宿屋のお手伝いもあるのにご免ね」

「いいんれす。わりゃしドジだから……あの、今夜のご飯、頑張って作るれす!」


 そう言って胸の前でグッとポーズをとる姿がとても可愛かった。

 遠い昔のトーナの顔が思い浮かぶ。

 トーナもあれ位元気な仕草をしていたっけ。

 ブンブンと顔を横に振る俺を見て、首を傾げるラディ。

 二人でマージの中に入ると……そこは何と、酒場と併設された場所だった。


「なぁ、あそこで飲んでるのドラグだよな……」

「うん。機嫌悪そうだから目を合わせないようにしようか」


 ドラグは片隅で不機嫌そうにお酒のようなものを飲んでいた。

 どうしたんだろう? あそこまで機嫌悪そうな姿は航海中一度も見ていない。

 まぁ笑顔のドラグも見たことなんて一度も無いんだけど。

 いつも何かに苛立ちを覚えている。

 そんな顔をしているのがドラグだ。

 よくみると……周囲が女性ばかりに思える。

 あれってもしかして……話掛けられ待ち!? 

 ……信じられない。ドラグなんてお婿さんにしたら、毎日お皿が宙を飛びそうなのに。

 モテるんだ……確かにきりっとした顔立ちに綺麗なピンとした耳に褐色肌。

 スラっとした長身でとてもたくましく見えるけど。

 あれは格好良いっていうより怖いって方がしっくりくる。

 結婚したら後悔するけど結婚してしまうという悪循環なのかもしれない。

 そんなことを考えつつ、マージの中を進んでいくと……「あーーーーー! あなたたちはっ!」

「へっ?」

「えっ?」


 猛烈な勢いでこちらへ走って来る一人の女性。

 嫌な予感がしたので俺はそっとラディの後ろに隠れた。

 ガバッとつかまれるラディ。


「無事だったんですねーー!」

「うわっ! ちょ、恥ずかしいから止めろ! 降ろせ!」

「やだー、何あれ。可愛いー」

「クスクス。本当、可愛らしい」

「離せって、この……あれ? 姉ちゃんは確か……」

「私、ミルルですぅ! お元気そうで良かったぁ……心配したんですよ?」

「ミルルさんもご無事だったんですね。良かったぁー……」

「あーーーー! やっぱりファウ君! よいしょっと。わーーい!」

「せっかく隠れたのに何で自分まで担ぐの!?」

「うーん。気分?」

「気分の問題ですか!? 降ろして下さい恥ずかしいです!」

「おい」

 

 俺がミルルさんに再会の担ぎ上げされているのを見ていたのか、いつの間にかドラグが目の前まで来ていた。

 せっかく気付かれないようにしてたのに……ミルルさんのお陰で見つかってしまった。


「これを飲め」

「えっ? 僕、お酒はちょっと」

「酒じゃねえ。この辺で取れる果実から作った飲み物だとよ」

「それを僕らのために?」

「……早く飲め」

「うん。頂きます……! 冷たくて甘くて美味しい!」

「ほんとだ。わりーなドラグ!」

「確かに飲んだな」

「うん。美味しかったよ。ご馳走様でした」

「誰がご馳走するっつったよ。会計はこれだ。それじゃな」

「はい? あのー……」


 板切れを渡すとすっと出て行くドラグ。

 そして直ぐに酒場の店員が請求しに来た。


「お会計銀貨三枚になりまーす」

「ちょっと高すぎません?」

「ファウ。それ、酒代も入ってる……」

「あの人、酒代押し付けてきたの!?」

「あいつ、金を全然持って来てね-んじゃね?」

「そういえば……」

「あのー」

「払います、払いますよ。はぁ……僕の貯金から何でドラグのお酒代を出さないといけないんだろう……」

「それにしてもここ、飲み物高すぎるんじゃねー?」

「この町は飲酒の税が高いんですよー」


 だから不機嫌だったのか!? 

 うう、やっぱり外国だし色々と情報を調べるのが先だなぁ。


「それでミルルさんは何で僕の後ろで楽しそうに覗き込んでたんですか?」

「うーん。あの人も五本指に入りそう。これは大掛かりな変更が必要……え?」

「はぁ……また男性観察ですか。それもいいけど、ここで一体何を?」

「私、マージ職員ですから。お仕事です!」

「もし良ければエストマージの詳しい状況を教えて頂いても?」

「私で分かる範囲ならっ」

「それとさ。俺たちススだけどーくつ? ってとこに行かなきゃなんだけどさ」

「ラディ……鈴の音の洞窟だよ。危険な場所って聞いたんですけど」

「分かりました。お二人の専属担当はやっぱりこのミルルってことで良いんですね!?」

「専属担当? 何だそりゃ。よく分からねーけどそれでいいぜ!」

「同じ町出身の人の方が信頼できますもんね。でも僕ら、この町に長くいるつもりはありませんよ?」

「えへへ……実は私も。ここはある程度仕事終えたら異動申請を出す予定ですっ!」

「それなら目的地は同じかもしれませんね。それで……」


 ミルルさんに詳しい情報を聞くと、エストマージは大混乱で、征伐部隊を急ぎ編成したが戦況は圧倒的なほどに不利。

 ミルルさんは仕事で直ぐにこの港町へ向かえる位置にいたらしい。

 本国は情報によると三日で陥落したんだとか。

 ただ、各町ではそれぞれ抵抗が激しく、屈強の兵士は一時撤退はしたものの、他の町で交戦が続いているとのことだった。

 戦えない民間人などの多くは避難したり隠れたりしているようだ。

 俺たちが選択したルートが最も安全だったのかもしれない。

 更にこの事件は四つの巨大国全てを巻き込む大きな騒乱であり、現状どこのマージも混乱しているらしいが、情報は極力伏せられており、詳しく知るのはエストマージ出身のもののみらしい。


「オオグニとスミグニの人たちはどちらに?」

「そこまでは……でも恐らく逃げ延びていると思いますよ。ラディさんのご両親は私の方からマージに捜索依頼を出しておきますね」

「ラーギル先生とティオンさんは……」

「お二人の行方も分からないです。ご免なさい……でも先輩のことですからきっと大丈夫です!」

「何たって宮廷風術士だもんな。あれだけ風術を使えれば、ドラゴンにだって……いや、ちゃんと逃げれるって」


 ラディは直ぐに言い直した。

 何せ僕らは船を取りに行く際、地竜と戦った。

 たったの一匹、しかも子飼いの地竜であの強さだったんだ。

 戦うために訓練された竜が一体どれほど恐ろしいのか。

 想像しただけでも身震いする。


「そうそう。このマージにマール・シェラールという冒険者の人は来てませんか?」

「マシェリ姉さんですか? うーん、来てないと思いますよ。いたら直ぐに分かりますし」

「そうですか……こちらの大陸で仕事をしているはずなんですけど、どうしても連絡を取りたくて」

「それならマージに報告しておきますね。ファウちゃんが探してますって」

「せめて、君って呼んで下さい……酔っぱらってるマシェリさんに呼ばれてる気分になるので」

「可愛くて良いと思うんですけどねぇ……さて、後は鈴の音の洞窟でしたね。この場所についてはここへ来て日が浅いので、少し調べるお時間を下さい。他にも何か御用はあります?」

「僕たち手分けして仕事がしたいんだけど。家で出来るような依頼とかあります?」

「三つまで受けていいんだろ? 俺とファウ合わせると六個受けれるのか?」

「別々に依頼をされるのならそれでいいんですけど、一緒にやる仕事がある場合はお二人で一つとお考え下さいね? そうでないと怒られますから!」

「ふーん。じゃあ三つでいいか。仕事、合わせて三つ何かみつくろってくれよ」

「なるべく条件に合うのを探しますが、お二人の今の状況を見た上でこなせるお仕事を探しておきますね。この専属担当ミルルに、お任せあれー! ……ということで明日また来てくださいますか?」

「はい。何だか色々頼んでしまってすみません」

「これもお仕事ですから! いえ……将来有望な美男子の補助! くーー! 乙女冥利に尽きる!」

「あはは……それじゃ、お願いしまーす」


 ……ふう。どっと疲れた……宿屋の一角を借りて水浴びでもしよう。

ミルルさんとここで再会。

登場回数はまだまだ少ないものの、とても印象的な人物です。

今後もまだまだ出番があるはず!

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