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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第二章 冒険者

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第80話 新たなる旅路へ

大変遅くなりましたm(__)m

 ……いつの間にか気を失っていたみたいだ。

 凄く血が出てたから死んだのかと思ったけど。

 ここはどこだろう。

 目を開くと、ネビウス先生が近くにいるのが分かった。


「気が付いたかね」

「ネビウス先生。キュルルは……」

「キュー! キューー!」

「隣にいたんだ。無事で良かった……」

「君の方が無事ではない。片手はまだしばらく痛むだろう」

「はい……確か土のトゲで貫かれて……痛っ」

「治療はしておいたのだよ。起き上がれそうかね?」

「……ダメみたいです。まだ力が入らなくて。そんなに酷い倒れ方でしたか? 竜は……グランツィヒトはどうなりましたか?」

「やはり覚えていないのだね。あれは君が倒したのだよ」

「……僕、偵察に行ったときに変なことが起こったんです。それは狭い部屋でした。水が溢れてきて。もうダメだと思い、一か八か、キュルルのお母さん竜の角を箱にいれたら、それで……変な夢をみて。そのせいで僕、おかしくなったんですか」

「落ち着きたまえ。今は気にしなくて良いのだよ。そのことについてはゆっくり話そう。それよりも、キュルルの力を借りねばならんのと、先ほどの竜グランツィヒトの角を借りたいのだ。いいかね?」

「竜の角ってそんなに特別なものだったんですか。僕の持っていたお母さん竜の角……使ってしまったから、もうないかも」

「借りたいのはグランツィヒトの角。あれは君のものなのだ。この船は竜の力で動くと聞かなかったかね? 君は今、船の上にいるのだよ」


 ゆっくりと起こされて周囲を見渡すと、それは……確かに船の上だった。

 とても高そうな船に思える。

 不思議なのは、大きな帆が一つしかないということ。

 一本マストで航行可能な船は少ない。基本は縦帆と横帆で風を受けて走るものだが……。

 この船は中型船程度の大きさだろうか。前世で船は好きだったが、サイズ感までは分からない。

 形状からして交易用のキャラベルというよりは冒険用の船、スペイン船のナオに近いと思う。

 海洋に出るには十分なのだろうが、あの帆一つで風を受けるのは不安があるような……。

 でも、凄い。こんな船に乗るのは初めてのことだ。

 

「わぁ……これが、この世界の船なんですね」

「君の世界にも船はあったのかね?」

「はい。僕の世界の船はもっと凄いものでした。燃料があれば自動で動きます」

「それは興味深いが……この船も似たようなことは出来るはずなのだよ。さて、出航準備を急がねばね」

「えっ? でもラーギル先生は?」

「彼は……来ないのだよ」

「どうしてですか!? 僕たち代わりに取りに向かったんじゃなかったんですか?」

「この場所から出発すれば、町へは戻れんのだよ。この船は避難用で、地上から乗船は不可能なのだ」

「つまり、最初から残るつもりで僕たちに向かわせたんですか? ラーギル先生はどうするつもり……」

「彼は残って時間を稼ぐと言った。その意思を酌んでやりたいのだ」


 自らが時間稼ぎをして僕たちを逃がすとでも? いくらなんでも無茶だ。

 ……そんな俺の表情をみてか、優しく語ってくれるネビウス先生。


「死ぬつもりとは思わんのだよ。あれでも騎士だ。そう簡単に死ぬような玉では無い。まずはマールと合流するのだよ。東の大陸、ウラドマージの最西端にある港町へ向かおう」

「船は、どうやって動かすんですか?」

「無論、竜の力を使う。君のそばを離れようとしなかったからね。目を覚ましたら出航時刻を決めるため、準備を進めていたのだよ」


 ……ここはまだ地下道の途中? の船舶停泊所なのだろうか。

 外の景色は見えないし、ラディやドラグも見当たらない。

 どこで何をしているのだろう? 


「ラディとドラグの二人は?」

「運搬作業中なのだよ。この奥に使えそうな倉庫があってね。水はあるのだが、道中の食糧が多いわけではない」


 海に出るなら必要なものはビタミン不足を考慮した栄養剤や飲み物だ。

 それらが知られる前は壊血病という恐ろしい状態を引き起こし、亡くなる人も多かったはず。


「あの……船旅はどのくらいになるんでしょうか? 栄養を補給しないと命に関わると思います。野菜などは痛みやすいので、保存の効く飲み物などはあるんですか?」

「さすがはファウ。良く知っているのだよ。それも前世の記憶なのかね? 船には既にオキリトアという果実から絞られた保存用の飲み物を乗せてある。数は多くないのだがね」

「やっぱりこの場所は、管理されていた場所なんですね……あの竜はどうして襲ってきたのですか?」

「……あの竜は町民を襲わない。襲うのは……外部から来た者のみだ」


 こんな場所に竜がいること自体おかしいとは思った。

 飼育された竜だからこそ、俺たちは生きていた可能性もある。

 

「そろそろ積み終わる頃なのだよ。結局酷い旅路になってしまったが……大人の責務を果たすのだよ」

「いえ、感謝しています、ネビウス先生。あの……僕、少し怖いんです。もし僕に何かあったらキュルルを……」

「ファウ。それは私に伝えても仕方のないことなのだよ。その竜は今、君無しには生きられない。竜のためにも、どのようなことがあっても生き延びるのだ。それが君の役目なのだよ」

「ネビウス先生……」


 その通りだ。あの部屋での出来事が今でも頭から離れない。

 何か恐ろしい力を手に入れてしまったのかもしれない。

 でも今は……故郷に帰るため前に進もう。

 キュルルと一緒に。


「先生、そろそろ歩けそうです」

「無茶はしないように。おや、どうやら二人とも来たみたいだね」


 先生が示す方向から、ドラグとラディが歩いて来る。

 ドラグは再び剣を持ち、ラディは弓を背負っていた。

 それ以外にも荷物があり、釣り竿のようなものも数本抱えている。


「お、よーやく起きたか。心配したぜ。怪我はもう平気なのか?」

「おいクソガキ。止まるんじゃねえ。運び終えねえと出航出来ねえだろうが」

「わわっ。押すなよな」

「二人とも、怪我はしてないの?」


 そう言うと、ぎろりとドラグに睨まれた。

 やっぱり仲間としては見られてないのかな。

 でもあのとき確かにラディを庇ったように見えたけど……。


「おいじじい。クソガキが起きたんならもう出航だろうが」

「もうじき夜になる。出航は夜にするのだよ」

「方角は分かるんですか?」


 この世界にも緯度と経度はあるだろうし、適当に進んで隣の大陸にたどりつけたりはしないだろう。

 測量士がいるわけでもないし、測量機なんて高度なものがあっても使い方が分からないや。


「心配せずとも竜の力があれば大丈夫なのだよ。この船は異匠の船と伝えた通り、ただの船ではない」

「というと?」

「ファウ、操舵室へ。君たちは船倉に荷物を運び入れたら休んでいて構わないのだよ」


 操舵室……もしかして俺が操作するの? 船なんて動かしたこと無いけどどうすればいいんだろう。

 キュルルが必要ってこと? でもどうやって? 


 考えながらも船の操舵室へと案内された。

 そこは前世で想像出来るような見晴らしのいい甲板に舵が取り付けられた場所……などではなく、大きな寝床のようなものがあるのと、覗き見るような望遠鏡のようなものが一つ。

 それからハンドルのような握りがついているものが一つある部屋だった。


「竜をその寝床へ」

「はい。キュルルおいで。ここだって」

「キュー? キュッ、キューー?」

「うん? 何か喋ってるようだけど」

「他の竜の匂いがして落ち着かないのかもしれないのだよ」

「じゃあ僕の服をここに置いておくから」

「ふむ。それならば少し待っていたまえ」


 自分の着ていた服を寝床に置くと、キュルルは気に入ったようでその寝床で丸まって眠る支度をし始めた。

 もしかして自分が気を失っている間、心配で休めなかったのかもしれない。

 これまでの旅、本当に良くついて来てくれたね。

 優しくキュルルを撫でてやると、心地良さそうに眠りにつき始める。 

 ――しばらくして、ネビウス先生が衣類を抱えてやってきた。

 どうやらそれに着替えろということらしい。


「少しほこりっぽいかもしれないが、我慢するのだよ。海は冷えるからね」

「有難うございます。へぇ……フロックみたい。何だか水夫になった気分です」


 帽子まである。船乗りさんは皆これを着用するのかな? 

 

「さぁいよいよ出航なのだよ。竜の力は勝手に引き出される。しばらくは眠ったままとなるが、悪い影響はない。安心して操縦してくれて構わない」

「眠るってどのくらいなんですか?」

「操縦中はずっと眠る……というより無意識下で動くようになるのだ」


 話を聴いても見てみないと良く分からない。

 特別な船だから分からなくても当然なんだけど。


「キュルルの食事はどうすればいいんですか?」

「直ぐ近くに置いておけば、眠ったまま勝手に食べるだろう。無意識のままだがね」

「何か凄く不思議ですね……船の操縦方法は?」

「まずその遠望器を覗いてみなさい」

「これ……ですか。遠望器っていうんですね。ええと……何も見えません」

「角度をこう調整すると……どうかね?」

「あれ、何かみえる。灯台?」


 一体どこを映し出してるんだろう。

 灯台なんてどこにも見当たらないし、そもそもまだ出航も離陸もしてない。 


「うむ。竜の力は十分。ここからラギ・アルデの力を汲み出し……動き出したのだよ」

「ええっ? 見ただけで動き始めるんですか?」

「いや。見えたと君が言ったところで目標値を登録したのだ。灯台が見えたのだろう? 世界にある灯台へ自動航行出来る唯一の船がこの異匠の船だ。エストマージに伝わる国宝の一つなのだよ。とはいえ岩礁や巨大生物は避けねばならんがね」

「そんな凄い乗り物だったんですか!? 恐れ多いというか、何というか」

「親書も預かっているのだよ。少々長い船旅になるが……少し動かしてみるといい」

「はい……ええと何だっけ。そうだ! 面舵一杯ー!」

「……そんなに勢いよく回すと危ないのだよ」

「ご免なさい! ええと、取り舵一杯ー!」

「だから、そんなに勢いよく回すと危ないのだよ!」


 船は揺れながらも動き出す。しかも左右に移動させはしたが、ちゃんと元の進行方向に戻っている。

 ――間もなく洞窟を抜けようというところでドラグが操舵室に入って来た。

 結構揺れたし、そりゃ驚くよね……。


「おい何だ今の揺れは! 出航すんなら合図位しやがれ! 警戒せず外に出たら狙い撃ちされるだろうが!」

「問題無いのだよ。ファウ。舵の中央部分にアートマの力を流したまえ」

「分かりました。やってみます」


 舵の中央部分は赤色の宝石のようなものが取り付けられている。

 言われた通りその部分に無属性の力、アートマを流してみた。

 これは物体の大きさなどを調整したりするラギ・アルデの力だが……。

 

「何が起こりやがったんだ?」

「外に出て確かめてみるといいのだよ」

「おいー! 何だこの船! 帆が船全体を包んじまったぞ!」


 見に行くまでもなく、ラディが直ぐに操舵室へ飛び込んできた。


「しかも色が海みたいな色になって……ってあれ、みんなで集まってたのかよ」

「擬態が出来る船だったんですね! 凄い……それじゃ道中の航海はかなり安全そうですね」

「少なくとも上空からは狙われないのだよ。だが、海の生物はそうもいくまい」

「おいクソガキ。今のうちに釣りをすませるぞ」

「俺はクソガキじゃねー! いい加減名前くらい覚えろ!」

「ふん。俺に一発でもまともに攻撃を当てられるようになったらな」

「くそっ。ファウ! 操縦は任せたぞ。俺はドラグより多く釣り上げてやるからな!」

「うん。気を付けてね。ネビウス先生も休んで下さい」

「まだ起き上がれるようになったばかりだろう。一人で平気かね?」

「はい。大丈夫です。もう足を引っ張りたくないから……」

「しばらくしたら交代しよう。先は長い。協力し合い乗り切るとしよう」


 かくして俺たちは洞窟を無事脱出し、出航した。

 周囲から潮風の匂いが漂い、部屋には俺と、眠るキュルルだけとなる。

 操舵室は屋根があり、外はほとんど見えない。

 交代したらきっと見えるのかな。

 海から見る満点の星空が。

 俺もキュルルもまだまだ成長し大きくなる。

 きっと、母さんたちが見ても分からないほどに。


「キュルル。旅を無事に終えたなら……この大陸にまた来たいんだ。キュルルのお母さんが眠るこの地に。お墓参りをしに。そして……」


 今の僕たちはとても弱いし小さな存在だ。

 襲われても逃げ延びることしか出来ない。

 でも、いつかキュルルの背中に乗ってこの大陸に戻って来れたなら。

 悪い奴らを追い払えるくらいにもし強くなれたなら。

 キュルルという竜がどこまでも愛くるしく、たくましく、優しい存在なのか。

 それを伝えることが出来たなら――。


「きっと分かってもらえるはずだよ。竜と心を通わせて、共に生きられることを」

本日で第二章終了です。

第三章開始まで、再度お時間を要します。

続きが気になる! 面白いじゃんよって方、評価ブックマ頂けると作者は鼻水が垂れる程嬉しいです(__)

引き続き頑張って参りますのでよろしくお願いいたします。


なお、メインとして執筆している異世界転生、我が主のために

こちらは毎日執筆をしておりますので、リュウトモまだなのー? という方はそちらもお楽しみ

頂ければ幸いでございます(誤字が多くて本当に申し訳ないのですが……頑張ってちょっとずつ修正してます)

なお、第三章は二章と比較にならないほど戦闘などが多いと予想されます(世界観設定的にそのはず)

まだまだ幼竜のキュルルに子供のファウ君ですが、どんな戦いを繰り広げ、成長していくのでしょう。

執筆する紫電も楽しみにしております。

ですのでちょっとだけ時間がかかるやも……。


プロとしての物書きを目指す以上、己のレベルアップにも余念なく、引き続き精進してまいりますので

どうぞよろしくお願い申し上げます。

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