第79話 血の結末
本日分が第二章の要戦闘部分になります。
地竜と対峙する状況が悪いのは俺のせいだ。
一人で道に迷い、無駄に時間を過ごしてしまった。
心配掛けただろうし、もしかしたら俺が先に進んだか、怪物に食われたのかと思われていたかもしれない。
ドラグは武器を失い、怪我をしている。
ラディも動き回ったのかバテてそうだし、多少出血しているように見える。
一番良くないのはネビウス先生だ。
支援をし続けていたのだろう。顔色がとても悪い。
キュルルはまだ元気そうだが、相手の竜に少し怯えているようにも見える。
「おいガキ。他に武器はねえのか」
「無いよ。ドラグはラギ・アルデの力も使えるんでしょ?」
「火は使えねえな。オオグニもスミグニも得意なのは風だ」
「氷の刃を出し、それで戦う方法はあるのだよ。だが、適当に撃てるガルンフロトと違い、刃と化すのは難しい」
「なぁファウ。一体どこ行ってたんだ? 俺たち一本道通って来たはずなんだけど」
「グルルルルアアアアアア!」
「お喋りしてる時間は無さそうなのだよ! ガルンフロト!」
こちらへ突っ込んできそうなグランツィヒトにけん制で氷を放つネビウス先生。
無茶し過ぎだ。このままじゃ死んでしまうかもしれない。
「ネビウス先生、それ以上無茶はしないでください!」
「まだ私も戦えるのだよ!」
「キュー……」
「先生……大丈夫だよ、キュルルは僕が守るから!」
離れた位置で固まり、次の手を考えていたが、そうはさせてもらえそうにない。
グランツィヒトが勢いをつけて突っ込んできた!
「来たよ! キュルル、こっちだ!」
「キュー!」
キュルルと一緒に東寄りへ移動する。
ドラグとラディは直ぐ西寄りに展開した。
ネビウス先生は後方へと退いた。奴の狙いはネビウス先生のようだ。
ラディがすぐさま後方の尻尾へと斬りかかる。
尻尾はまるで意思が別々であるかのように、ラディを攻撃し始める。
ドラグは投げつけた短剣を拾い上げると、ガルンウィドと思われる術で跳躍し、背中へ
と攻撃を仕掛け始めた。
「いくよキュルル! ガルンフロガト!」
「キューーールルーー!」
一斉に大きな氷を地面へ這わせていく。
奴は進行方向を変え、俺とキュルルの方へ向かって来た。
「真正面だ! ガルンヘルドア!」
「グルアアアアアアアアアアア!」
狙い通りに顔面をとらえ、再び大きく顔を上げるグランツィヒト。
「どけクソガキ!」
「ぐぇっ」
方向が変わったため位置がずれ、着地したドラグがラディの下へ向かい、思い切り蹴り飛ばした。
そして暴れる奴の尻尾攻撃をもろに受けて吹き飛び、壁に激突。
……直撃させたのに暴れが収まらない。
それにドラグが、ラディを庇った?
「ファウ! 急いでそこから離れるのだよ! くっ……動けん」
「グルアアアアアオオオオオアアアア!」
俺とキュルルに向けて再び一直線に走り出すグランツィヒト。
……怖い、怖すぎるけどグラヒュトウルと戦ったときのことを思い出すんだ。
何か周りに使えそうなものは……「キュルル! ダメだ!」
「キューールルーー!」
怯えて動けずにいた俺の前に、俺以上に怯えていたキュルルが立った。
そしてめいいっぱいの氷の息を吐いてみせる。
だが、もう何度も使っていたのだろう。
直ぐに氷は出なくなり、グランツィヒトが目の前まで迫っていた。
そして、邪魔だと言わんばかりにキュルルを吹き飛ばした。
「キュルル! キュルル!」
「……」
「ああ……」
「グルアアアアア!」
先ほどの炎で完全に逆上したのだろう。
狙いが俺でまだよかった……でも、こいつは許せない!
「うわああああああ! ガルンヘルア! ガルンヘルア! ガルンヘルア!」
「グガアアアアア!」
再度炎の玉を何度も飛ばすが、奴は土の塊を吐きつけ、炎の玉は消えてしまう。
暴力的な土壁に弾かれ、俺もキュルルの場所まで吹き飛ばされる。
全身に強い痛みが走った。
「うっ……痛ぅー。キュルル、キュルル! 大丈夫? しっかりして……」
「キュー……」
「よかった……よしよし……僕が、守るからね。絶対、に」
キュルルを撫でると、綺麗な白い鱗が濃い赤色へと染まっていく。
何だ……これ。体が、熱い。
「あれ、何か暖かい……これ、僕の、血」
「ファウーーーーー!」
「ちっ。動けねえ! くそが! あいつがやられたら戦力がやべえってのによ!」
「今治療をしに……」
「ダメですネビウス先生。動かないで。僕、何かおかしいんだ。体が熱くて」
「ファウ? おま、それ……」
「……いってぇ何が起こってやがる!」
凄く血が出ていた。キュルルの白い体がどんどんと赤く染まる位に。
よくみたら弾き飛ばされた土の壁のようなものは、鋭くとがっていて、そして……俺の右手に
突き刺さっていた。
なのに、その土のツララのようなものは、氷のツララへと徐々に変わっていった。
それだけじゃない。さっきまで暖かかった感覚が妙に冷たくて……。
特に額の上がギンギンに冷えるようだったんだ。
「氷の……竜角……なのだよ」
「んだと? なんだそりゃ。おめえ一体……」
「ウワアーーーーー!」
あのときの石像がある場所で氷に貫かれた。
その声が聴こえてくる。
『汝、■■■・ユーナと共に。清き力を解放せん』
「ワアーーーーーーーーー!」
……そこからは圧巻だった。
氷の角がグングンと伸び、その角が地竜グランツィヒトを貫いた。
そのままその巨体を持ち上げ壁へとグランツィヒトをぶつける。
更に六本の氷の角を作り出し、壁へグランツィヒトを串刺しにした。
動けないグランツィヒトへ近寄ると、その角をへし折ったところで、ばったりと倒れ動かなくなった。
「……冗談だろ。一人で地竜をのしちまいやがった」
「あれ、ファウじゃないよな。見失ってから何かと入れ替わったんだよな? そーだよな!」
「……間違いなくファウなのだよ。地竜にトドメを差してはいないのだから」
「おい、冗談じゃねえぞ。動けねえうちにさっさと仕留めねえと」
「それは止めておくのだよ……あれを倒したのは彼だ。それを行う権利があるのは彼だけなのだ」
「なぁ。なんでファウは角を折ったんだ?」
「竜にとって最も大事な部分。それは爪でも牙でも、心臓でもない。角だと伝承にはある」
「ちっ……あばらが何本か折れてやがるし、今日は勘弁してやるが、戦利品はもらってくぜ」
「はがれた爪や折れた牙は持っていっても構わんだろう。その角は……ファウのものだ」
「なぁドラグ……何で俺を庇ったんだ」
「おめえがいねえと盾役が減るからだろうが。クソガキが。ちったぁましになったかと思えばてんで使えねえじゃねえか。こんなので俺に挑んでくるとは笑わせやがるぜ」
「うるせえ! 俺だってもっともっと強くなる……でも、あのファウみたいには……」
「何か特別なことがあったのかもしれんのだよ。私は竜を先に手当する。二人はまだ平気かね?」
「ネビウスのおっちゃんだって無理しすぎだろ。俺はすり傷だから大丈夫だ。あんまり長くいていい場所じゃねーんだろ? 俺、少し先見て来るからさ……」
「おいじじい。おめえ……何か知ってやがるんじゃねえのか?」
「……予測でしかないのだよ。そのような話、聞きたくもないであろうよ」
「けっ……まぁいい。俺も治療はいらねえよ」
「ふむ。君は存外、強がりなのだよ。竜は平気のようだ。だが消耗しきっておる。私が運ぶのですまないがファウを頼めるか」
「くそが……仕方ねえな」
グランツィヒトとの戦闘をボロボロで終えた一行は、広い部屋の奥へと進む。
先行していたラディは疑問を持って進んでいた。
そもそもなぜこんな場所にあんな怪物がいるのか。
しかも数は一匹だけで、どうみても何かを守るかのようだった。
あれはもしかして……「でも、そうだとしたらこれを動かすためにいたんじゃねーのか
な……」
ようやく想定していた戦闘と能力部分に辿り着けました。
これからもっともっと楽しくなるよう毎日練っておりますので、引き続きお楽しみ頂けるよう頑張ります。
なお、明日分で第二章部分が終了予定です。
と、ここからは誤字修正後の追記。
こちらも視点がファウの意識が失われたあとに三人称視点になっています。
一人称視点に統一すると……次の話まですっ飛んでしまいそうなので、このままにしておきます。
全て三人称視点に変えられなくもないのですが、この方が楽しく読める部分な気がするので、置いておくことにしました。




