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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第二章 冒険者

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第75話 異匠の船

 オンザールの港町にある小屋。

 そこにはやつれた顔をしたラーギル先生がいた。

 あれからのことを詳しく尋ねると、ラーギル先生は騎士としての任を王に解かれ、最南東にあるこの町に非常事態勧告をするために、ネビウス先生と共に来たらしい。

 状況は芳しくなく、既に城は陥落。

 付近の町もほぼ封鎖され、最南東のこの町のみ、多くの住民を逃がすことに成功したらしい。

 

「私とネビウスは外交交渉を行うつもりだ」

「無駄だな。奴らが交渉などに応じるはずがねえ」

「しかしこちらには隠し財宝の情報がある。優位に交渉を進められる……」

「だから無駄なんだよ。あいつらが何のために戦ってるか、まるで理解してねえ」

「何? どういうことかね? 彼らの目的が分かっているのかね?」

「竜だ」

「竜? 竜のために戦う? それはどういうことか」

「竜にとって住みやすい環境、生きやすい環境を作ってやがんだよ」

「そのために人を殺すのか!?」

「人は己が生きやすいために動物を殺すだろうが。当然俺もそうだ。だが奴らは違う。竜を祀り称えている種族だ。この国も、竜を大事にはしない国だと思われたにちげえねえ」

「……だとしたら、交渉の余地は無い。一体どうすれば……」

「なぁなぁ。俺の父ちゃんや、母ちゃんは無事なのか? なぁ、なぁ!」

「オオグニ族もスミグニ族もティオンが担当して避難を急がせた。きっと……無事だろう。すまない、私もまだ混乱しているのだ。地下にわずかながらも残っている人たちがいる。見に行くといい」

「ちっ。指揮官が冷静さを失ったら元も子もねえだろうが。俺ぁ食糧をもらいに行く」

「君の言う通りだ。ファウ、少し残ってくれないか」

「えっ? はい。分かりました」

「キュー……」


 ラディとドラグは地下に向かい、俺は一人ラーギル先生の下に残る。

 顔色が優れない。眠れていないのかもしれない。

 騎士の任を解かれ、この町を救いに来たのなら、ラーギル先生はこの町のことを良く知っている人なのかもしれない。


「私はこの町出身でね。父はこの町の領主だった」

「……お亡くなりになったんですか」

「襲撃のあった日に、城へ来ていた。騎士の任を解かれた代わりに得たものがある。それがこれだよ」

「これは……領主の証?」

「ついでに言えば、ネビウスは私の義従兄に当たる」


 何て残酷なんだ……この状況下で領主の証って。

 この町の人の命を全部丸投げされたに等しい。

 人が少ないのは必死に逃がしたためだろう。

 それじゃ城にはお父さんが残り、ラーギルさんを守って……。


「急いで出来る限りのことはやった。だが、もう船が無いんだ。いや、正確には後一隻だけある。危険な場所に封じた特別な家宝の船だ」

「船を封じる? どういう意味ですか?」

「ただの船じゃない。その船は異匠の船と呼ばれる、ある種族がその技術とラギ・アルデの力を用いて造設された特殊船。町の地下に眠るその船は、災厄や攻撃から身を守る術を持つ。ネビウスと共に、取りに行ってはくれないか」

「僕がですか? でもお役に立てるかどうか」

「君の力というより……君の持つ竜の力を借りたい。話はネビウスより聞いた。その船は普通に動かせるものではない。竜の力がなければ動かない船なのだ」

「竜の力で動く船!?」

「そうだ。我が国は竜を敬いつつも恐れていた。その話はしていなかったね」

「はい。図書館へ行けるようになったら分かるのかと思ってました」


 結局図書館を利用することは叶わなかったけど、それも仕方が無い。

 本はきっと……他の国にもある。


「エストマージは一度、竜に壊滅させられた国だからだ。以前はもっと高度な文明を築いていたらしい。しかし……激しい戦いの後、撃ち滅ぼされた。テストで竜についての質問をしたのを覚えているかね?」

「はい。不思議な問題でした」

「あれは、バラバラに散っている民族たちを一同に集め戦えば、その強大なる竜を打ち滅ぼし、その高貴なる素材で王威を高められる。そんな発想からなるものだ。だが私はそうは思わない。共存共栄し、竜と育み生きる道が正しかったのではないか。今でもそう思っている」


 話し終えたラーギル先生の顔は、幾分か良いものに変わっていた。

 ずっと心休まらなかったのだろう。

 少し休むと言い、先生は違う部屋へ入っていった。

 それから俺は、直ぐにネビウス先生の下へと向かった。

 そこにはネビウス先生、そしてラディとドラグしかいなかった。

 他の人は既に眠りについており、オオグニ族もスミグニ族もここにはいないようだった。


「ファウ。無事で何よりなのだよ。いや、君なら無事だと信じていた」

「ネビウス先生もご無事で何よりです」

「これを君に。大切なものだ」

「これは……! 有難うございます。良かった……」


 それはキュルルの母親の形見。竜の爪、牙、角だ。

 それとフェスタなどの俺のサバイバル道具も全て揃っている。

 あの状況下で持ち出してくれてたんだ。

 先生たちはどうやってここまで来たのだろう? 

 俺たちより早く着いたってことは陸路で急いできたのかな。


「あの、ラーギル先生より話を聞きました。休憩後、異匠の船っていうのを入手しに地下へと向かいます」

「その話なら聞いている。案内は私がするのだよ」

「俺ぁご免だね。てめえらで勝手に行きな」

「ファウ……俺、母ちゃんと父ちゃんに会いたいんだ。どうしたらいいか、もう分からねーんだ」

「今はこの大陸から避難するべきなのだよ。先ほどそう伝えたのだが……」

「ラディ。僕も家族とは離れ離れなんだ。家族はきっと、僕が死んだと思い込んでる。でも僕は今生きてるんだ。もしここに残ったまま命を狙われたらきっと助からない。生きてさえいればきっと家族は探せる。だから一緒に行こうよ、ラディ」

「ファウ……分かったよ。俺も、行くよ……」

「スミグニ族のドラグ。君はファウをここまで運ぶ仕事を引き受けたのかね?」

「……こいつらを逃がせって役目だ」

「それなら君の行動は決まっているのだよ。君も共に来たまえ」

「船を取りに行くくらい、てめえらで行けるだろうが」

「いいや。かなり危険な場所だ。だからこそ誰も手出しが出来ぬのだよ。地下に存在するもの。それはどう猛で残忍な地竜種、グランツィヒトなのだから」

『地竜!?』

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