表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第二章 冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/169

第71話 ギスギスする三人

 現在地を特定することは難しいが、ラディ、そしてドラグに地図を見せる。

 といってもクルンと違い、俺は地図職人じゃない。

 町のおおよその位置と名前が記されているだけだ。

 

「エストマージから東へ来たのなら、真っすぐ進めばイクシオンっていう町があるはずだよ。そこへ向かうのはどう?」

「死にてえならそれがいいかもな」

「何だよ、死にたいわけねーだろ! 一番近くの町に逃げれば他の奴と合流出来るかもしれねーじゃんか」

「ガキの考えそうなことだ。いいかクソガキ。もし大国を落とす場合、本来どうするか分かるか」

「……偵察を送る」

「ちっ。てめえは本当にガキかよ。おめえらそもそもいくつだ」

「そんなことも知らずにガキって呼んでたの? 僕は九歳、ラディは十歳だよ」

「やっぱりガキじゃねえか」

「うるせーな! それで何だよ一体。偵察?」


 きっと両親が心配で仕方が無いのだろう。

 とても短気になってるラディが少し心配だ。


「偵察っていうのは先に兵士を送って、見つからないように監視を……」


 そういいかけて、恐ろしいことを想像してしまった。

 まさか……灰様樹で襲われたのは偵察兵? 先に大陸を渡って潜んでいた? 

 アスランさんはそれを調べるため警戒していたとか。

 確証はない。でも、あそこは食糧となり得る獣もいるし、水もある。

 隠れるにはうってつけの森だ。

 エストマージまで距離もあるし、ゴーガルギンの荒野は危険だ。

 竜で攻めて来るものが隠れるとは思わないような場所だし……。


「おい、聞いてるのかてめえ」

「うん。要するに偵察を先に送り込んでいるから、付近の町は調べ上げられている。準備が整ったからエストマージを攻めただけで、既にどの町にも敵が潜んでいる可能性があるんでしょ……あいたっ」


 グーでゲンコツされた。何て酷い人だ……。


「そこまでは話してねえがその通りだ。だから火を使うなってのもそれを考えてだ。どこに潜んでやがるか分からねえし、一番近い町はおおよそ支配されてると思った方がいい」

「それじゃもっと東に進んだ港は?」

「そこもダメだろうな」

「となると……ウェザールの南にある港町、オンザールしかないね」

「そこも安全だとは言い切れねえが、エストマージからは遠いだろう。その方角なら少しばかりあてもある。進むんならそっからだな。そこでようやく、お役ご免だぜ」

「どうして?」

「ああ? アスランのくそ野郎はおめえらを逃がせと言ったんだろうが」

「それって逃げきれてないよね」

「そーだぜ。ファウの言う通りだ」

「……ちっ。なんで俺がこのクソガキ共を逃がさなきゃならねえんだ」


 俺はこうなってしまってから考えていた。

 心配な人たちは沢山いる。ネビウス先生やティオンさん、クルンやマトフさん。

 マシェリさんは大陸を渡っているから不在だけど、皆逃げられただろうか? 

 この世界、連絡を取る手段が今のところ無い。

 それなら――「ドラグはもし大陸を渡ったらどうするつもりなの?」

「ああ? 決まってるだろうが。白装の奴らをぶっ殺しに行くんだよ」

「それは西の大陸、アゼルマージを目指すってことだよね」

「だからどうした」

「僕と、一緒に行かない?」

「ファウ、何言ってんだ? 俺たちエストマージに帰らねーと。避難するだけだろ?」

「ラディ、言い出せなくてごめんね。僕、故郷に……オードレートに戻りたいんだ」

「クソガキ、てめえはやっぱ西出身か」

「そうだよ。ドラグが白装って呼ぶのはそのせいなんでしょ?」

「ちげえよクソガキ。てめえは、初めて会ったときから竜の匂いがしやがった。それだけだ」

「匂い? 僕から? ちゃんと水浴びはしてるけど」

「俺は鼻が利くからな。スミグニの中でも特に」

「なぁ……ファウ。本当に、本当に戻っちまうのか? なぁ……俺は、俺はどうしたらいーんだ」

「けっ。十にもなってんなこともてめえで決められねえのか。オオグニのガキは甘っちょろいな」

「何だと! もう一度言ってみろ!」

「止めてよラディ。言い争ってる場合じゃないよ。僕たち、ここでじっとしてるわけにはいかない。そろそろ出発しよう。ラギは……どう? 走れそう?」

「無理だろ。ここまで強行させた。そいつはもう動けねえ」


 そんな……ここまで走ってくれたのなら助けてやりたい。

 運んでくれたラギに近づいてみる。

 どうやら足を怪我しているようだ。

 お腹も空いているのだろうけど、調教されているせいか逃げようとしない。

 何か食べ物……少し周囲を探ってみると、ハギルリュウ草に似た草が生えていた。

 これならどうだろう? 


「ガルンリキド!」

「グルルル……グル……」

「大丈夫。お水だよ。お願い、この草食べておくれ……好きな食事じゃないかもしれないけど。きっと君でも食べれるはずだよ」

「おいてめえ! まさか……相反持ちだと?」

「お前との戦いで見せるはずだった切り札だよ。ファウ悪ぃ。俺にも少し水もらえるか。頭がおかしくなりそうだった。気持ちを切り替えてーんだ」

「うん。ドラグも飲んでよ。別に毒なんてないから」

「おいクソガ……ファウだったな。西大陸に向かう件、考えてやってもいい。だが勘違いするんじゃねえぞ。おめえが俺についてくるってだけだ」

「それでもいいよ。次に足の治療をやってみる。出来た試しはないけど」


 草は少し食べてくれたし、水も飲んでくれた。

 今度は足の怪我に集中する。


「ユントラーラルト」


 淡い光がラギの足に向けて放たれる……だけど、直ぐに消えてしまう。


「すぅ……はぁ……エントラーラルト……エントラーラルト」


 何度やっても直ぐに光りは消えてしまう。

 額から汗がにじみ出て来る。

 今この子を助けられるだけの力も無いなんて……せっかくここまで逃がしてくれたのに。

 自分は、何て無力なんだろう。


「……どけ」

「えっ?」

「ユントラーラルト」

「ドラグ……」


 ドラグはラギの足に手をかざすと、永続的に光りが輝き続ける。

 怪我をしていた部分は徐々に良くなっていくのが分かる。

 正確な治癒術だ。あんなに荒々しく戦う人なのに、繊細な治療術まで行えるなんて。


「ちっ。水と食糧があるならまだこいつは走れる。そう判断したんだよ」

「クルルル……」

「寄りつくんじゃねえ、くそが!」

「まだ、走れそうかい?」

「クルルル!」

「よし、南東を目指そう。進んでいけばきっと道も把握出来るはずだよ」


 俺たち三人は再びラギに乗り進みだした。

 目指すは南東の港町、オンザールだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ