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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第二章 冒険者

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第69話 急襲

ここも三人称にそろえました……!

「ふざけんな。頭をちっとかすっただけだろうが!」

「鼻血出てるでしょ。ほら、拭きなさいよ」

「ちっとこすれただけだ! 続きをやらせろ! そんなまぐれ認めねえぞ!」


 散々騒ぐドラグだが、首を横には振らないティオン。

 ラディとファウも勝ったとは到底言えない状況だが、これ以上続けても手の内が残り少ない。


「ティオン姉ちゃん。いいよ、もう一回やろう」

「しかし、これ以上は危険だよ。彼との実力差が相当あると判断した」

「おら来いよガキ共。これで終わりにして逃げたりしたんじゃお前らの虫の居所も悪いだろ?」

「……少しだけ休憩してから戦おうよ。ティオンさん、ご免なさい。もう少しだけ付き合ってもらえませんか?」

「私はいいが……ラーギル先生は?」

「少々用事がある。すまないが一足先に戻らせてもらうよ」

「荷物は私が見ておこう」

「では……五の刻限過ぎしばらく経ってからもう少しだけ」


 ラギ刻限式時計を見ながらそう告げるティオン。

 五の刻限は十五時ほど。

 水分を補給し食事も摂取して万全な態勢を取るファウたち。

 キュルルにも食事を取らせる。

 そして、日が傾きかけて夕焼けがかすかに見えるようになった頃――「よし。では再度決闘を……」


 しかしドラグはファウたちを強く睨みつけ、身構えているが、その方向とは違う方向を見ていた。 

 ティオンの言葉も途中で止まったままだった。


「何だ、ありゃ……」

「……虫の大群?」

「んあ? どーしたんだよ全員よそ見して」

「何だろう? 遠くから沢山逃げてくるような」


 その状況を見て、木の陰で休んでいたアスランが急に立ち上がり、ティオンへ近づく。


「……やはりか。しかし今とは。ティオン殿。決闘は中止。私と共に城へ。ドラグ。その子らと、そしてお前も気付いていたであろうその竜を連れて東へ逃げろ!」

「ああ? 何ほざいてやがる。逃げるだぁ? 何から」

「あれは……白装だ」

「んだと? ……てめえ今何て言いやがった!」

「あれは白装の飛竜種、アレオレノス。あの数……恐らくエストマージを落とすつもりだ」

「何だって!?」

「なら尚更逃げるわけにはいかねえな。臆病風に吹かれたおめえが逃げないよう監視を……」

「私は逃げん。オオグニ族、スミグニ族を一人でも多く逃がす。ドラグ。私の最後の願い……いや、オオグニ族族長として最後の掟をここに」

「てめえ……正気か。竜を連れて逃げろだと……」

「……ラディ。強くなったな。お前の父と母は必ず助け出してみせる。お前は落ち込みやすく劣等感を抱きやすいが、優秀なオオグニ族の血を持っていると私は思っている」

「何言ってんだよアスラン。一体何が起こるってんだ? なぁ」

「ファウ。お前は立派な戦士だ。大人以上に勇気を持つ、心優しい少年。お前と出会ったことは名誉あることだった。ファウよ……竜と共にあれ。強く成長しろ。そして、生きろ!」

「一体何を言ってるんです? アスランさ……」


 言い終わる前にどさりと倒れるファウ、ラディ、そしてキュルル。

 ファウたちをあっという間に気絶させてしまったドラグは、木に縛り付けていた大型のラギに彼らを乗せ、アスランから荷物を受け取ると無言で東へ向けて走り出した。

 アスランはティオンと共に煙を上げ始めた城へと急ぎ向かうのだった。



 ――ラギに乗ったドラグは何度も城の方を振り返る。

 小さかった頃の自分を思い出し、ラディを見ていた。

「このクソガキよりもっと小さかったか……くそ、アスランの野郎。掟を破れねえスミグニの血を利用しやがって……畜生、くそがぁーーーー!」


 広い道で怒声を上げるドラグ。

 休憩を挟みつつ東へ東へと進むと、日はいつの間にか暮れていた。

 東へ避難しろと言われはしたが、ドラグは金も持ってきていない。

 食糧も昼食を取る分しか持たなかった。 

 アスランのいう掟。

 それはオオグニ族、スミグニ族と交わした約束。

 オオグニ、スミグニに動ける者がおり、どちらかの族長が存在して緊急時と判断した場合は、その族長の意見に必ず従うこと。

 ただしこの判断は族長がスミグニ族、オオグニ族双方のために動く場合のみ有効となる。

 もし後日それが双方のためと判断されなかった場合、族長は自らの首を差し出さねばならない。

 この掟に服従しない場合、死刑あるいはオオグニ、スミグニ双方より永久追放される。

 厳しい掟だが、族長となるには覚悟も信頼も必要。

 彼らは対立しながらもその関係は維持してきた。

 掟は未だ変わらず存在している。

 ドラグがあの場に残ってどれほど戦いたかったか。

 歯茎から血がにじみ、拳を固く握りしめながら、鋭くラディたちを睨み続け、ドラグは道を急ぐのだった。

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