第66話 初依頼から刻は経ち
66話で日付が大分進行します。
この部分気になるやってくれ! という声が多くあれば頑張ってスピンオフでも書きます!
城の鐘が鳴り響いたエストマージ国。
この鐘がなったということは、次の冒険者試験が近いということだ。
灰様樹の森でクルンたちと冒険してから随分と経った。
ラギ刻限式時計は実に優秀であり、これさえあれば一日の時間を良く知ることが出来る。
ラギを模したその時計は、少し大きい四角形。
どうやって作られているのかは分からないが、無属性のラギ・アルデで動かせる。
表示はラギで表され、その数全部で八匹。
前世でいうなら三時間起きに一刻を表すと考えればいいのだろうか。
ラギが八匹表示時は二十四時となる。これだけ分かれば十分だ。
ラディにもその情報を伝えて、それぞれ三の刻から三刻みで二十四の刻までと、時刻の呼び方を統一してある。
俺たちはあれから依頼をこなしており、既に二ツメ銅任証を手に入れた。
ラディは一緒に昇格をこなしたいからと、まだ二ツメ銅任証のままだ。
そして、依頼のこなした数は三つ。
つまり、今日はアスランさんの下へ向かい、ドラグへ決闘を申し込む日。
アスランさんはここしばらく、何かの仕事をしているようだった。
それが何かまでは分からなかったが、時折見かけては深刻な顔をしていた。
結局俺たちを襲撃した者に関しては不明のまま調査中で、灰様樹の森は現在立ち入り禁止。
そして、シンクゲイドルはティオンさんが信用ある国の者へ引き取り願いを出した。
ラディはとても悲しんでいたが、ここでは生きていけないという話を聞いて、仕方なく手放したのだった。
クルンは南の方で仕事をすることが多くなり、最近は会えていない。
もうじき俺はエストマージを去らねばならないのだが、マシェリさんは現在、隣国へ出向いているようで、戻るのは恐らく年明け頃だろう。
再び戻った平穏の日々だが、ゆっくりしていられるのは今のうちだけだ。
「ネビウス先生。アスランさんのところまで行ってきます。キュルルのこと、お願いしますね」
「ファウ。今となっては君が転生者であることを信じているのだよ。だがくれぐれも他言をしないように。君の発想する物の価値は計り知れるものではない。今後よからぬ者に狙われる可能性もあるだろう。それと、竜についてだがね。爪や牙も随分成長してきたと思われる。人を襲わぬよう訓練もするのだよ?」
「はい。一度だけラーギルさんに敵意を向けようとしたことがありました。僕がしっかりキュルルを見ていないと、どんな処罰をされるか分からないですもんね」
「君のことだから分かっているとは思うのだよ。彼にばれてからというもの、仕事の量が増え、私としても竜の手助けは非常に有難いと思っている」
「キュルルもネビウス先生の役に立てて嬉しそうですよ。それじゃ僕、行ってきます」
家を出て、真っすぐオオグニ族の居住区へと向かう。
アスランさんの家に行くと、既に待っていたラディが両手を頭に乗せてぼーっと後ろ向きに立っていた。
「ラディ。随分早いね。何してるの?」
「ファウか、驚かすなよ……んーとな。ドラグの奴と戦うにしてもどうやったら勝てるかなって考えてた」
「……僕たち二人で敵う相手じゃないけど、知恵を振り絞って挑めば少しくらい太刀打ち出来る……よね?」
「うーん。俺さ、かなりいきがったけどあいつの強さは知ってるんだ。スミグニのやつらが剣試合みたいなのをやってたことがあってさ。あいつ……ぶっちぎりだった」
「ラギ・アルデの力も使ってた?」
「分からねー。でも多分使える。ファウは練習以外で人に向けてラギ・アルデを使ったことあるか?」
人に向けて……そういえばラディの訓練以外で人に向けて使ったのは父さんくらいか。
でも全然上手くいかなかったな。
そもそも獣にだってほとんど初歩の術しか使ったことがない。
大人がラギ・アルデでどう戦うのかは実際まだ見たことがないんだった。
「ファウ。これは聞いた話だからまだ分からねーけど。もっと効率よくラギ・アルデの力を使って戦う方法があるみてーなんだ。それこそ使ってるかをばれないようにして。ドラグやティンボルトさんはそういった戦いを知ってるんじゃねーか?」
「戦う方法? うーん。今の僕たちにそんな術はないよ。だから今出来ることを精一杯やろう。まずはドラグが引き受けるかどうかだけど……」
と考えているところにアスランさんが来る。
やはり真剣な顔をしているようだ。
「二人とも、話は聞いている。スミグニ族の下へこれから向かおう」
「今から? やべえ、緊張してきたぜ……」
「アスランさん。僕も伺って大丈夫なのでしょうか?」
「ああ。私が一緒にいれば平気だろう。ジロジロとみられるだろうが気にするな」
「分かりました」
アスランさんの家を出てスミグニ族が住む場所へと向かう。
オオグニ族の住むエリアはエストマージの国、アの通りだ。
そして――アの十付近まで来ただろうか? オオグニ族の者は誰も見当たらず、代わりにより浅黒い褐色肌の者が目立ち始める。
鋭く細い眼で、こちらを睨みつけているかのように見える。
「おいおい。臆病者の族長が来てやがるぜ」
「でっけえ図体のビビり野郎が」
「相変わらず気に入らねえ面だ」
悪口を聴こえるように言っているのが分かる。
アスランさんは何も気にしていないかのように先へと進んでいく。
その途中で二人の青年が正面に立ちはだかり、呼び止められた。
「おいアスラン。それ以上近寄るんじゃねえ。臆病がうつるだろ」
「それならドラグ……ドアルド ラングウェイはいるか。立ち合いの申し入れだ」
「立ち合いだと? お前がか? ちっ。そこを動くなよ」
そのうち一人が奥へ走っていく。
もう一人は酷い剣幕で睨みつけたままだ。
そんなにも憎いのだろうか……だがドラグと違って俺に対して白装と言ったりはしないようだ。
あれから二年も経ったんだ。少しは俺だって負けない意思をみせないといけない。




