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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第二章 冒険者

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第62話 狙い撃ち

 俺たちの場所を確認し、直ぐに近づいて合流しようとするラディ。

 しかし――「ラディちょっと待って」

「ん? どうした?」

「その生物……なんだか怯えてるかも」

「んあ? あれ、本当だ。木の上で降りられなくなっててよ。拾って来たんだ。それより」

「二人とも伏せろ!」


 クルンの声を聴いて慌ててしゃがむと、ラディの周辺に矢が数本落ちて来た。

 ラディは直ぐに地を這いながら、俺たちの下まで来る。


「気付かれた? いや、初めから罠を張っていたのかもしれない!」

「嘘だろ。俺ちゃんと見つからないように来たんだぞ」

「あそこにいた三人とは限らない。困ったことになった」

 

 矢を放ってきた方向が分からない。

 どうしよう、まさか初めての依頼で対人戦闘? 

 というより冒険者同士でそんなことしていいの? 

 もしくは冒険者とは関係ない盗賊か何か!? 

 ラディの生物のことや化石のことを確かめてる場合じゃなくなった。

 落ち着こう……まずは二人の意見を聞くんだ。


「今の、僕たちに向けての攻撃だよね。どうしたらいいと思う?」

「直ぐに移動しようぜ。地形ならきっと俺たちの方が把握してる!」

「どうかな。数日前から見張っていた可能性もある。こちらに気付かれないように行動して標的を狙っていたのなら、分が悪い」

「逃げるにしてもどっちに? 荒野へ向かえば狙い撃ちしろと言ってるるようなものだよね?」


 と話している間にも、矢が更に飛んできた。

 今度は飛んできた方角を確認出来た……東の方角だ。

 位置で言うならばやはり、竜の嘆き方面の南側。

 姿を見せないということは冒険者である可能性が高い。

 向こうもこちらの正確な位置までは把握していないように思えるし、もしかしたらこちらの能力も知ってる? 


「何かしらのラギ・アルデの力で身を隠してる可能性もあるね」

「クルン。ラディの持っているものが目標の化石で間違いないの!?」

「どうだろうか……ラディ、それはどこに……くっ」


 直ぐ近くを矢がかすめる。これはまずい……逃げ切る方法が一応ある。

 でも、その場合ここへは戻って来れないと思う。


「二人とも。安全かは分からないけど逃げ切る方法ならあると思う」

「荒野を通らずにかい? そんな方法なんて到底思いつかない」

「やっぱあいつらやっつけちまえばいいんじゃねーか?」

「ダメだよ! 証拠も何も取れないような状況で人と戦うなんて。アスランさんの言葉を忘れたの?」

「う……確かにそうか。俺はファウに任せる。それと、こいつも連れて行きたいんだ」


 近くで見るとトカゲのような生物にも見えるけど、これは……もしかしたらシンクゲイドル? 

 それなら化石が例え違っても、どうにかなるかもしれない。


「このまま留まっているとかなり危険だ。二人とも、一か八か西へ逃げよう!」

「分かった。このままじゃいつ矢が当たるかも分からない。あの矢……何か薬が塗り付けられている」

「うへえ。毒かよ。用意周到だな。最初からそうするつもりだったのか! よし」

「ちょっとだけ待って……キュルル。小さい氷をなるべく見えないように出してくれる?」

「キューーールルー!」

「ガルンフロト!」


 キュルルと一緒に、滑りやすいよう、氷の罠を造っておく。

 矢の飛んでくる高さからして、木の上から放った矢ではないと思う。

 足下を入念に注意しながら射撃するなど、相当な腕前があっても難しいはず。

 その氷柱を背にして急ぎ西へ西へと走り出した俺たち。

 ラディが素早く先導して枝を落とし、俺とキュルルで道中に転びやすいような氷を造っていく。

 クルンには力を温存しておくようにお願いして、どんどんと森の奥へ奥へと進んでいった。

 追って来るような音は今のところしていないが、相手の能力が分からない以上油断は出来ない。

 一刻も早くこの場所から離脱する必要がある。

 ――西の奥へ進むと……「なんて激流だ。これじゃ進めないぞ」


 目の前には一直線に流れる激流の川。

 無理もない。これは海から流れ込んでくる水を凝縮したようなものだ。

 川までの高さはそんなには無いが、尻込みしてしまうような景観。

 しかし覚悟を決めないと戦闘は避けられないだろう。

 人相手なんてもっともっと経験を積んで、ルールありきで行わないと不可能だ。


「この川はエストマージ方面へと続いています。仮にエストマージで脱出出来なくても下流まで流れれば、アルメリアンの町がありますから」

「でもどーやって進むんだ? そのまま泳いだらバラバラだぞ、きっと」

「氷と土のラギ・アルデ術で筏を造りましょう。俺たち三人が乗れる程度のものを」

「いくら何でも危険じゃないか?」

「氷での補強は定期的に行えます。流れが速いのは危険でもあるけど、その分早く到着するはずです」

「しかし……」

「襲われた証拠はこの木の矢で……」

「持って来てたのか。さすがファウ、ちゃっかりしてるな」

「う……売ろうと思ったわけじゃないよ! さぁ、あいつらが何かしてくる前に早く!」

「ガルンサフェドス!」


 今まで以上の大きな土塊を出してみせるクルン。

 ラディも直ぐにアシェンシアの木を削り、オールのようなものを造ってみせる。

 二人とも覚悟を決めてくれたようだ。その下側を氷できっちり固める。

 これで下に落とすのは簡単だ。問題はこの激流を少し止めて落とさないといけない。

 きっと……出来るはずだ! 


「行くよキュルル! 全力だーー!」

「キューーールルーーーー!」

「ガルンフロバスト!」


 今使える最大級の氷術。

 そしてキュルルの放つ氷の息が合わさり、正面の激流が氷の塊となる。

 溢れた水は奥へと向かい、奥の方は更なる激流となる。

 急ぎ土氷の筏を乗せて……俺たち全員は恐怖の筏下りを開始しようとしていた。

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