第61話 メドロツノガイの長
「この木が古そうだぜ」
真っ先に声を上げたのはラディ。
アシェンシアの木に登って探していたからか、誰よりも早く一際大きい木を探し当てる。
木から下りてきたラディの顔色は悪く、直ぐに俺たちへ耳打ちした。
「他の冒険者が近くにいるぜ。もう直ぐ竜の嘆きに入りそうだけど、どうする?」
「先に来て探していた組なのかな。休憩して戻って来たか、あるいは到着したばかりの組か」
「うーん。多分後から来た奴らじゃないかな。ここいら探した形跡無かったし」
「隠れても僕たちの存在ってばればれだよね。印とか付けてたし」
「それはねーと思うぞ。あいつら目印も何も付けずにただここを目指してる感じだったし」
そんな無謀な……迷いそうな森で目印無しなんて。
「どちらにしても鉢合わせたくはないね。少し奥へ隠れようか。休憩も必要だし」
「分かった。メドロツノガイが西に逃げてったから、そっちへ行こうぜ」
「獣が逃げる方向は安全っていうしね。そうしよう」
他の冒険者が来る前に一度竜の嘆きを離れる。
ラディは少し偵察をするため残るという。
合図の仕方は一応決めてるけど……ラディなら上手くやってくれるかな。
ラディと別れ、クルンと一緒に竜の嘆き西側付近で休憩出来そうな場所を探すことにした。
「もう少しのところで邪魔が入ってしまったね」
「うん。事前に気付けて良かった。もし争いになったらと思うと怖くて」
「人相手は出来れば避けたいからね。それにせっかくファウが気付いてくれたことを簡単に他人が知ってしまうのは悔しいし」
「あの人たちも気付く可能性があるんじゃ?」
「恐らくは無いだろう。そもそも化石を探すのに木を探したりなんてしないだろうし、目印や手掛かりも少なすぎる。我々でもまだどこにあるか検討しか付けていないんだ」
仮に考えていたことが正しいなら、探してみる場所は分かる。
今は無駄な争いごとを避けて身を隠す方が都合がいい。
しばらく周囲に印をつけながら探っていると、メドロツノガイの集団を目にした。
襲って来る気配がないので、お腹いっぱいなのだろうか。
「ちょっとした池があるね。ここは獣たちの休憩場かな? ……いや、ここはまずいかもしれない。ファウ、少し離れよう!」
「えっ!?」
「足跡だ。しかも大きい。もしかしたらメドロツノガイの長がいるかもしれない」
クルンの額から汗が零れ落ちている。
その視線の先を見ると、大きな足跡がある。
だが、この辺りでラディを待っていないと追いつけなくなりそうだ。
「じゃあラディの方へ……」
「いや、遅かったようだ。メドロツノガイ五匹に、長一匹。これはまずい」
木陰の奥から一匹の大きな獣が顔を出す。
それはメドロツノガイより更に立派な三本の角が生えた、大型の獣。
他の獣がこちらにいないのは、この長の影響?
今のところ襲って来る気配はないけど……どうしよう。
「こうなったら先手で……」
「待って、クルン。ダメだよ襲ってこないのに攻撃しちゃ。あれ、食べるの?」
「いや、そうじゃないが……このままだと一斉に襲われるかもしれない」
「そうなったら逃げよう。あの獣、木の上には来ないと思うし。それにこの場所ならアシェンシアも密集してないからきっと上手く逃げられるよ」
「しかしそれではラディとはぐれてしまうよ?」
「大丈夫。そうなったとしても僕たちは、無駄に命を取ったりしたくないんだ」
「そう、か……分かった。ゆっくりと後退しよう」
「うん。分かってくれて有難うクルン」
「いや……戦っていたら大きな音を立ててしまう。それに、命を大事にするのは私も賛成だ」
ゆっくりと二人で後退していく。キュルルも理解したのか下がってくれる。
どうやらメドロツノガイの長はキュルルを見ているようだった。
こちらが後退し終わるまで、じーっとキュルルを見つめ続けていた。
池のあった場所から数十メートルは離れただろうか。
土が削れて人が入れる程度の穴が空いている場所があった。
中に入ってみると、十分な隙間がある。
そこには十分見たくないような虫もいたので、風のラギ・アルデでそれらを外においやると、クルンに扉となる部分を造ってもらった。
野営はここで出来そうだ。
後はどうやってラディに合図を送るかだけど……これはラディと狩りをしていたときに決めていた合図だ。
ここまで見て取れるか分からないけど試してみよう。
「ガルンヘルア!」
上空に大きめの炎の玉を放出する。
そして……「ガルンリキド!」
落ちて来る炎の玉に水の玉をぶつけて相殺する。
これを何度か繰り返す。
めざといラディなら気付いてくれると思うんだけど……どうだろう。
音が出るわけじゃないのと、他の冒険者が下を見て探し物をしているというのを信じて行った。
これで別の冒険者が先に来てしまったらそのときはそのときで考えよう。
――それからしばらくは、クルンが休める場所を土で固めてくれて、俺はクルンへ水を提供していた。
「ふう。これだけ固めれば大丈夫だろう」
「有難うクルン。やっぱりそう簡単にはいかない依頼だね」
「それは分かっていたことだよ。これで例え見つからなかったとしても……」
「あ、誰か来た。良かったラディだ! あれ? あれは……」
こちらへ戻って来たラディは……深紅色の石を片手に持ち、満面の笑みを浮かべてみせた。
「へへっ。ついでに見つけてきちまったぜ、ファウ! クルン!」
あれがまさかシンクゲイドルの化石?
しかもそれだけじゃない……何だろうあれ。
ラディは紅色の小さな生物までも抱えていた。
この後書きは見直しで書いたものですが……風斗ってなんだよ! と思いました。
はい、すみません。このころの作者はてんで見直しが出来ておりませんでした。
作家レベル三くらいです。アルミラージに眠らされてフルボッコサンダーです。
すみませんでしたー!




