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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第二章 冒険者

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第55話 冒険への旅立ち

 エストマージ門前。ここでは外へ出るときにもチェックが入る。

 何度か狩りに出かけたことがあるのだが、ここの兵士はとても優しく紳士的だ。

 とはいってもルークアシェンダリーで毎回確認はするのだけれど。

 しばらく待っていると、クルンが手を振ってこちらへ来た。

 随分重そうな荷物を背負っている。


「待たせたね。少し荷物が重くなってしまって」

「もしかして、それフェスタですか?」

「ああ。少し大きくて……」

「もし僕らの片方を使えそうだったら、置いていきます?」

「ええ? でも子供用のサイズで入れるかな」

「おっちゃん。少しこの場所借りていいか?」

「うん? ああ、フェスタを広げるのか。構わないが……」

「んじゃ、いくぜ! フラシタルアートマ!」


 ラディがそう唱えつつ、指ではなく持っている棒でフェスタを突くと、ガタガタとフェスタが動き出し、徐々に形を変えていく。

 しばらくして……少しだけ歪んだフェスタが見事完成した。


「よし! ちゃんと成功したぜ! まだ三回にいっぺんくらいしか成功しないんだよなー」

「大分出来るようになってきたね。ちょっとだけ歪んでるけど……」

「これは……十分なスペースがある。驚いた……本当にこれを貸してもらってもいいのかな?」

「ああ、使ってくれよ。俺はファウのとこで寝るからさ。その寝袋取り外せるから、寝袋だけ持って来て

くれよな」

「これは凄いね……私も入手したいのだが、これをどこで?」

「おほん。終わったならさっさと片づけて欲しいのだが?」

「おっとおっちゃんすまねー。もう一個ついでに聞いてもいーか?」

「ふう。これでもまだ、三十前なんだがなぁ……」

「えぇっ!? 嘘……はっ!? すみません……」


 思わず口を()いて出てしまった。

 立派な髭が生えてるから、もっと年上かと思っていたのだけれど。 

 髭の兵士さんはため息をつき、がっくりしている。

 ラディはその隙にフェスタを片付け終えた。

 クルンはフェスタを置いて来ると告げ、俺たちに兵士への質問を委ねてくれた。


「ちゃんとクルンに信頼されてるね」

「ああ。おっちゃん。オーレイス・ジョーカーって人に、冒険者依頼の件で質問があるんだけど」

「おや、君たちは冒険者なのか? まだ子供なのに? ……いや、その首飾りを見れば明らかだな……分かった。呼んでくるから少し待っていなさい。それと、私を呼ぶときはおっちゃんではなくお兄さんだ!」

「はーい」

「まったく……少し髭も整えるか……」


 確かにその髭で年齢相応に見えないのは間違いないと思う。

 高校のときも髭を生やしたおじさんみたいな同級生、いたし。

 ……しばらく待っていると、その人より断然若いきりっとした目つきの清楚な男性がやってきた。

 背も高く健やかな雰囲気がある。

 この人が隊長? 並んでたら、髭の人の方が隊長にみえるんだけど。


「やぁ待たせたね。ログが随分と自信を無くしているようだったが……」

「気にしねーでくれよな。おっちゃんて言ったら随分落ち込んじゃったんだ」

「おや。彼は私より四つも年下だ。それはさすがに可哀そうだろう」

「えー? 兄ちゃんがあのおっちゃんより四つも年上なの? 信じられねー」

「ラディ、失礼だよ。ああ、またあの人しょげちゃった……あの、それよりも僕たち、冒険者の依頼で来たんです。灰様樹の森で取れる化石についてなんですけど」

「……君たちがその依頼を? だとするともう一人必要なはずだが」

「今フェスタを置きに行ってます。しばらくしたら来ると思いますから」

「そうか。ならば兵士詰所で話そう。ここではちょっとね。もう一人が到着するのを待とうか」

「分かりました。直ぐに来ると思います」

「ちぇっ。俺たちだけでちゃんと聞こうと思ってたのに」

「三人で組んだのなら最初から最後まで三人で行動する。これも大事なことだぞ」

「それはそうですね。つまり簡単な話ではないってことですか」

「察しのいいお嬢さんだ」

「うっ……それ、久しぶりに……」


 もう突っ込むのも面倒になってきた。

 他人の外見で驚いて、自分の外見でも驚かれるのはもうしたくない……。

 きっと二次性徴さえくれば、間違われなくなる! 

 クルンさんを待ってから事情を説明して、全員で兵士詰所へと赴いた。

 ここでもキュルルは大人気で、誰も竜とは気付いていない。

 こんな愛嬌があって可愛い生物、そうそういないと思うんだけどなぁ。

 ラギだってキュルルみたいに可愛いのを見たことがない……と思うのはきっと親ばかに違いない。


「さて。人払いも済んだし説明しよう。シンクゲイドルの化石についてだったね」


 オーレイスさんの話によると、シンクゲイドルの化石というのは竜の一種という話だった。

 その鱗は深紅色であり、とても貴重だったものなんだとか。

 それが数年以上前にほぼ絶滅してしまい、現在では化石がわずかに取れるだけ。

 その化石が発見出来る可能性があるのが灰様樹の森にある、【竜の嘆き】という場所らしい。

 なぜか竜が泣くような声を聴いたという情報が後を絶たずにその名前がついているんだとか。

 この三人依頼については、達成されるまで内容が変わることが無いらしく、想定以上に難しい依頼のようだ。

 達成報酬を考えると、ばからしくて受けない人がほとんど。

 それもあって、五年もの間同じ依頼が出続けているそうな。


「竜の嘆きという場所は、灰様樹の森のどの辺りなんですか?」

「簡易的な地図を写させてもいいことになっているが、紙などはあるかな?」

「私が所持しています。書き写しましょう」

「でも、紙だって高いものなんじゃ……」


 と、皆まで言うより先に、クルンさんはこちらへ微笑み、サラサラと書き写し始める。

 俺とラディは目を合わせてため息をついた。


「二人とも、そんなに気にしないでくれ。こういった地図を描くのが私の趣味なんだ。ほら」


 あっという間に書き上げてしまうクルンさん。オーレイスさんもラディも関心している。

 一長一短で出来ることじゃない。きっと努力してきたのだろう。


「うわぁ……すっげー。滅茶苦茶細かくて綺麗だ」

「見事だ。これなら道に迷わずに向かえるかもしれないな。いい能力を持っている青年だ」

「さて。これで準備は整いましたね。二人とも、行きましょう」

「ああ。最高に楽しみだぜ」

「うん。オーレイスさん。お世話になりました」

「街道が敷設されていない危険な道だ。気を付けて行ってきてくれ」


 きちんとお礼を告げて城門を出る俺たち。

 北を目指さないといけないのだが、北には王城があるため南門しか存在しない。

 ぐるっと回りこむ必要があるのだが、西寄りには川が流れている都合もあり、東側から迂回して行く必要がある。

 東へは街道が敷設されているが、北方面へ向かう道は全くない。

 つまり、この時点で既に草原や荒れた土を歩いて進まないといけないのだ。

 エストマージを離れた俺たちの冒険が、いよいよ始まろうとしていた。

お気づきの方はいるかもしれません。

オーレイスさんはミルルさんのメモにのっていたイケメンです! 

ちょっとした登場シーンでした。

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