第51話 褒賞入手と王国千年祭
ラーギルさんから渡された褒賞。それは、以前テントだと思っていたフェスタだった。
一つは開いているもので、一つは収納されているものを目の前に用意してくれている。
収納されている方の大きさは随分と小さめで、ニ十センチ四方、厚みは五センチほどだろうか。
前世でもこれくらいの縦横幅に出来るものはあったし、おまけに全自動組み立てで軽いというラギ・アルデの力以上に凄いものがあったと記憶している。
しかし厚み五センチとはならなかった。しかも、背負っていけるリュック形式になっている。
どう見ても組みあがったものの大きさにはならないようで、これはラギ・アルデの力を使って大きくすのだろう。
「これは冒険者の褒賞としてぴったりのものだ。何せまだ売られていない代物でね。実験段階なんだよ。今回は最年少がファウ君だが、十歳合格同年二人目も同時だったので、ラディ君にも同様のものが送られる」
「非売品の品物なんですか?」
「これ、どーやって使うんだ? 開け方が分からねーんだけど」
「君たちはどちらも無属性ラギ・アルデの力を行使出来るね?」
「ああ。出来るぜ」
「少々練習が必要だ。いわゆる中級の部類に当たる無属性となる術。しかしわずかな適性があれば使えるようになるだろう。見ていなさい。フラシタルアートマ」
ラーギル先生が棒のようなもので小型フェスタを叩くと、それは大きさを
変えて組みあがっていく。
驚いた。アートマは確かに物体の長さを変えたり出来る便利な無属性術だけど、こんな使い方があるなんて。
だが、大きさは子供二人が入れる程度だ。変えられる大きさの限界がちゃんとあるのだろう。
そうでなければ物凄く小さくしたり、物凄く大きくしたり出来てしまう。
その素材が持つラギ・アルデの力を越えることは出来ないから、これがこの素材の限界ということだ。
この世界にどんな素材があるのか気になるところだが、書物をみたり、依頼をこなしていくうちに、不思議な素材に触れられるかもしれない。
「すっげー! 楽ちんに組み立てられて、戻すときは小さくなるんだろ? よおし、俺もやってみる! えっと……フラシタルアートマ!」
……と、ラディが指でやろうとしたが何も起こらない。
中級程度であるなら、簡単にはいかないのだと思う。
「まずはこの中に入ってみるといい。構造がどうなっているのか把握してみなさい」
言われた通りにラディと二人で中に入ってみると、寝袋が一個と、椅子になるものが括り付けられていたのが目に入った。
寝袋の中は取り外して水洗いが出来そうだし、寝るところには困らないだろう。
一通り確認して外へ出ると、直ぐに元の大きさへと戻してくれるラーギルさん。
「数日は練習が必要だと思うが、やり方は私が教えよう。ファウ君、ラディ君。改めて冒険者試験の合格、おめでとう」
「ラーギルさん……有難うございます。あのときのお話の続きです。僕を門弟として認めてもらえるでしょうか」
「その話、俺も聞いたけどこの人でいいのか?」
「うん。僕はこちらからお願いしたいくらいだよ。少しネビウス先生にも似てるからね」
「うーん……そうだな。それじゃ俺もお願いするよ。ファウがそう思うなら信用出来る人ってことだろうしさ」
「ふむ。私の指導は甘くないが、本当にいいのかね?」
『はい!』
「分かった。ではまず利点について話そう。それは一時的な依頼受注数の増加、依頼への助言。それと昇格の促進だ」
「前の二つは分かりますが、昇格の促進ですか?」
「左様。門弟となった者は依頼一つに対して倍の働きを持ったこととなる。もちろん一つ上の任証に上がるまで。君たちで言うなら銀任証までだ」
「ってことは俺の場合一つ上がったらおしまいってことか?」
黙ってうなずくラーギルさん。
つまり門弟システムって最初のブースト機能みたいなものなのかな。
確かに受けない手はない仕組みだ。
助言がもらえるというのも有難い。
受注可能依頼が増えるのも嬉しいけど、期限付きだからそれ以降は最大三つなのか。
マシェリさんはきっと、受けなかったんだろうな。
「教える側の利点は何なんですか?」
「支払われる報酬の増加や任証制限の解除、それから一人門弟が昇格すれば貢献度が上がる」
「貢献度ってのは何だぁ? 俺、そろそろ限界かも」
「あはは……多分冒険者による、依頼をこなすともらえる点数……みたいなものですか」
「ふむ。やはり察しがいいね君は。本当に九歳とは思えん。その通りだ。冒険者となった時点で貢献度はゼロから始まる。これはすべて個々の国において管理されるものであり、例えばエストマージでファウ君が一つの依頼をこなし、貢献度を一獲得したとする。これを他の国に移すことは出来ない」
つまり国ごとに貢献度は違うってことなんだ。
まぁ、全く貢献してないのに共通だったらおかしいもんね。
つまり国家貢献度っていうのかな。
どの国においてどのような働きをしたのかという値か。
「その貢献度ってのが溜まるとどうなるんだ?」
「君たちはまだ子供だから知らないかもしれないが、世界には制限されるべき鉱物などがある。それの使用許可証を発行してもらえたり、貢献度を消費してその任証に肩書きを付与したりと様々だ。まぁ肩書は冒険者として有名になるような行動を取らないと、付与出来ないがね」
「肩書きって何だ?」
「二つ名ってことだよラディ。例えば……オオグニ髄一の剣使い……みたいな」
「それがあるとどーなるんだ?」
「冒険者としての知名度が増し、依頼達成の確実さなどの評判、名指しの依頼が入るようになる。他にも利点はあるが、今説明する必要はないだろう」
肩書きか……どうせなら獣医としての肩書きの方が欲しいかな。
竜医みたいな肩書きとか、凄く欲しいなぁ……そう呼ばれるように努力しよう!
「ラーギルさん。僕、医術を学びたいんですけどそれってどうしたらいいですか?」
「君にはまず、図書館の利用権利を得るための依頼をこなしてもらおうと考えている」
「ファウは本当に文字の読み書きが好きだよな。俺はどっちかっていうと剣術の指導を受けてーんだけど」
「ラディ君には一つ、私が欲しいと思うものを取って来てもらう依頼を頼もうか考えている。とはいえ君たちはまだ最初の依頼をこなしていない。それらの話は最初の依頼が終わってからだろう。ティオンの門弟となるのなら、私とティオンの依頼併せて二つずつ、受け持ってもらうことになる。私の下を訪ねる場合は王城の北西にある騎士詰所でラーギルへの面会を求めて欲しい」
「分かりました」
ラーギルさんにお礼を告げると、俺たちは王城を出て千年王国祭へと向かう。
既にかなり時間が経過していたためか、お城の外は大賑わい。
特にトとマの商店街通りは普段あるお店の外側に、いっぱい露店が並んでいる。
ここでキュルル用の何かを買おうと思っているのだが、目移りしてしまう。
ひとまずラディと二人、お店で食べ物を取ってからマトフさんに挨拶しに行く。
その後、キュルルへの贈り物を探すと、ラディの目に一つのものが止まった。
「これなんかいいんじゃねーかな。ほら」
「お洒落な布みたいだけど、これをどうするの?」
「キュルルの皮服に着けるんだ。そうすると……入れ物になる! あいつも一緒に連れ歩くかもしれねーんだろ? そうすると荷物持ってくれて素材を持ち帰れるようになる!」
「それってキュルルにも働けってことかぁ……うーん、複雑な気持ちだなぁ」
「何言ってんだ。働かざるもの……何だっけ?」
「食うべからず。そうだね、キュルルにも手伝ってもらっていいのかな」
「とーぜんだ。だからこそあんなに凝った装備を造ったんだぜ。それにキュルルの息はすっげー役に立つじゃんか」
色違いの布を二枚購入して、それをラディに託す。
ラディは器用で、キュルルが装備している革製品は全部ラディが造ったものだ。
この布もきっと上手く加工して、いい感じに仕上げてくれるに違いない。
――その後、お土産を買い終え、お祭りを十分に楽しんだ俺たち。そして……「なぁファウ。クルンの兄ちゃんが言ってたあれ、どうする?」
「僕は受けたいと思ってる。時間が分からなくて苦労してるから」
「そっか。んじゃ、明日行ってみるか!」
「そうだね、そうしよう!」
ラディと意見が一致し、俺たちは明日、クルンさんの家に向かうことにしたのだった。




