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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第二章 冒険者

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第48話 合格祝い

 ネビウス先生の家の前まで着くと、マシェリさんが扉の前で剣を磨いていた。

 この二年間、本当に忙しそうに活動していたマシェリさんは、二ツメ金任証まで昇格し

ている。

 お祝いでマシェリさんの贈り物を用意した。

 いつも髪を後ろで一本留めにしているから、似合いそうな髪留めにしたらとても喜ばれ

た。 

 マシェリさんはこちらに気付くと立ち上がり、近くまで来る。


「マール。久しぶり」

「ああ。何で宮廷風術師のあんたがファウと一緒なんだ? それにラディも一緒か」

「ひっでぇ。俺はついでかよ、マール姉ちゃん」

「そんなことはない。それより……」


 あれ、何か目配せしてる? 家に行けってことかな。


「私はティオンと話がある。二人とも先に戻ってな。他に何か二人に伝えたいことがあるなら、私が聞いておくから」

「えっ? ちょっとマール。私はまだ……」

「いいから。ほら行くよ。近くの飯屋でいいだろう」

「もう! ファーヴィル君ー、また明日、絶対行くからねーー!」

「はいー。送って頂いて有難うございましたー!」

「何だったんだ? マール姉ちゃん」

「多分……キュルルじゃないかな」


 室内だとキュルルに皮細工の装備は着せてないから、ばれちゃうといけないもんね。

 ティオンさんは宮廷風術師なわけだし。


「そっか。中に入ったらばれるかもしれないもんな。それより早く報告に行こうぜ!」

「あ……僕マシェリさんに合格したって伝えるの、忘れた!」

「何言ってんだ。ティオンの姉ちゃんが一緒に来たんだから合格に決まってるだろ?」

「そっか。多分伝えてくれるよね……ネビウス先生。只今帰りました……あ」


 部屋の中には巨大な氷が再び! 先生は今、俺が助言したせいで大変な研究を行い始めているのだった。

 それは……かき氷。

 ラギ・アルデの力で生み出した氷を削ってかき氷にしようとしている。

 氷の用途は多様だが、氷を薄くスライスしてサラサラの氷を作り、それを食べるなどという発想は、本来そうそう生まれるものでは無い。

 氷を水にいれて飲んだりすることはあるのだが……。

 そもそもかき氷の発祥は平安時代ともいわれるほど歴史が深いものだったが、削り氷(けずりひ)とい

うかき氷とは少々ことなるような食べ物だったらしい。

 日本こそ、その発祥の地とされるかき氷は、まさに日本人だったからこその発想なのかもしれない。

 

「ファウ。ついに完成したのだよ。見てみたまえ。この洗練された道具を!」

「おお、先生! ……ってそうじゃなくてですね。僕、冒険者試験合格しました!」

「俺もだぜ。へへっ。相変わらず面白れー先生だな」

「ふむ。君らが合格するのは当然なのだよ。誰が指導したと思っているのかね?」

「あはは……キュルルはどこに?」

「部屋で待ちくたびれて寝ているのだよ。早く行ってあげたまえよ」

「はい! 行こ、ラディ」


 与えられたいつもの部屋。

 あれから二年。部屋にも少しものが増えた。

 とはいっても自分のものが増えたというより、キュルル用のものが増えた。

 トイレは今や完璧だし、キュルルのトイレはとてもいい肥料になるみたいで、先生が買い取ってくれる。

 まさかそんな還元方法があったのには驚いたけど、ドラゴンの落とし物……だし貴重なのかな。

 

「これほどラギ・アルデの力に満ちている素材が簡単に得られるなんて役得なのだよ!」と言って喜んでいた先生を思い出してしまう。

 

 そのお金でキュルルの餌を買っている。

 仕入れてもらっていると言った方がいいのだけれど。

 それは、マトフさんのお店で販売開始したドリュード。

 これはマシェリさんが持ち帰ったものをお店で買い取ってもらったらしく、マトフさん

がこの果実を気に入って食べている。 

 ラディもこの果物が好きなようで、良く買っている。

 人気商品としてお店の見やすい位置に並べてある。

 次にお店へ向かうのは明後日だけど、明日は千年王国祭だから顔出しはするつもりだ。

 王国祭では毎年少しの時間だけお店を開く。

 そのため俺たちの出番は基本無い……というより「子供は楽しんでおいで」と温かい言葉をもらい、去年はラディと町の王国祭を一緒に楽しんだ。

 色々な出し物があるだけでなく、他の大陸から珍しい物を売りに来たり、異国の音楽を奏でに来たりと凄い賑わいをみせていた。

 あれがまた楽しめると思うだけで心躍ってしまうのは、子供の体の影響だろうか。

 そう考えながら部屋に戻ると、キュルルは起きていて部屋の扉を開けるのをじっと待っていた。


「キュルルーーー!」

「ただいまキュルル。僕たちちゃんと合格したよ!」

「キュ?」

「くぅー。久しぶりのキュル……いただきまーす!」

「あ、ずるいよラディ! 僕も!」

「キューー!」


 ラディも俺もキュルルが好きすぎて、よく飛びついて撫でまわしている。

 キュルルは俺たちの愛情を一身に受けて育ってくれている。

 ラディと一緒にエストマージ周辺を散歩したり、一緒に狩りをしたり。

 すでにラディのことを兄弟のように思っているかもしれない。

 いや、それは俺もだ。

 ライバルでもあるかもしれないし、兄弟のような存在にも感じている。

 だからこそ、最近考えるようになってしまった。

 このままこの場所にいたい……でも、俺はずっとここにいられない。

 何時かラディとも別れが来る。

 その日を覚悟して……今はまだ、一緒に笑いあっていたいと思う。


「キュ?」

「ううん。大丈夫だよ」

「おいファウ。明日の王国祭でさ、キュルルにも何か一緒に買ってやろうぜ」

「そうだね。どんなものがいいと思う?」

「そうだなー。どうせなら何か、二つで一つになるような奴にしねーか? こっちが俺でこっちがファウみたいな」

「うん、考えておくよ」

「決まりな!」

「おーい二人とも。そろそろ食事にしようと思うのだが」

「いっけね! ネビウス先生。俺、親父たちに合格したこと伝えてこねーと! それじゃな、ファウ」

「あ……うん。相変わらずだなぁ……あ、先生。今日は僕が食事作りますよ」

「食事はもう頼んであるのだよ。ラディ君も戻って来て今日は泊っていくだろう」

「ええっ!? そうなんですか。なんて根回しのいい……」

「君たち二人は必ず合格すると思っていたからね。どうかね? 一ツメ銀任証くらいから始められたかね?」

「銀任証からって……いえ、実はですね……」


 試験の経緯を話すと、少々大きめなため息をつくネビウス先生。

 

「困ったものなのだよ。いや、しかしアーティン卿の言う通りだ。君はまだ九歳。前人未踏の領域に立ったわけだ」

「僕、実感があまり湧かなくて。試験も落ちたと思ったから……」

「それにしても相反の力を見せてしまったのは失態なのだよ。広めないとは思うが……ラーギル殿に知られてしまったのは少々残念だ。きっと依頼を増やされるのだよ」

「やっぱり……それでですね。徒弟について聞いたのですが、僕、ラーギルさんには指導員になってもらおうかと考えています」

「ふむ。それは悪くないのだよ。彼は実に多くの知識を所持している。しかし、竜のことは伏せておくのだよ」

「はい……やっぱり王国に知られるのはまずいのでしょうか?」

「竜といっても色々なのだよ。しかしあの竜は……」


 考え込むネビウス先生。やっぱり……この国にとっていい存在ではないのだろう。

 先生の話では、竜と共に生きれる場所は限られるし、連れて歩くことが出来るとするならば、エストマージ以外にすべきとのことだった。

 特にこの国……スミグニ族やオオグニ族の大人には伏せるべき事項で、ラディは子供だから分かっていないだけらしい。

 もっと大人になったら色々教えてくれるとのことだったが、その頃にはここにいないんだよね。


「さて、そんな話よりも注文していたものを取りに行ってくるのだよ。今日はご馳走だ。沢山食べるといい」

「あの、僕が行きましょうか?」

「いいのだよ。君はやることがあるのだろう?」

「はい……いつも時間まで取ってもらってすみません」

「構わないのだよ。このかき氷とやらを必ず成功させてみせる。それだけで十分な成果となるのだから」

「あはは……僕も実は楽しみにしてたり」


 ネビウス先生も少し笑顔をみせると、直ぐに出掛けて行った。

 俺のやること……それは日記をつけること。

 高価だったけど、日記を付けられるように白紙の束を購入した。

 紙質はそこまで良くないけれど、自分専用の日記帳だ。

 今日あったことは忘れずに記しておく必要がある。

 俺が文字を書くのを、キュルルは隣でいつも不思議そうに見ている。

 その間、キュルルは大人しくじっと待っていてくれる。

 いたずらなんてしない。俺の真剣な表情を見ているのかもしれない。

 現世でも、こうして文字を(つづ)ることに幸せを覚えてならない。

 

 ――そして時間が流れ……「よし! 終わったぁー」

「キュー……キュー……」

「寝ちゃったか。よしよし」

「キュー……」

「帰ったのだよ。ファウ君」

「お帰りなさい。直ぐ行きます」

「お邪魔しまーす」


 ネビウス先生と一緒にラディも来た。

 その日は遅くまで祝福され、マシェリさんからは祝いにとネックレスをもらった。

 しかもそのネックレスのトップは、竜のツメ跡のようなデザインで、とても恰好良かっ

た。 

 

「有難うございます。大事にします!」

「ふふっ。ファウちゃんにはもっと可愛いのを買ってあげたかったんだけどね」

「もう。僕は九歳ですよ。可愛いのなんて!」

「ラディちゃんももーっと可愛いのにしてあげたかったんだけどなぁ」

「酒くせー! 本当マシェリ姉ちゃんは酒癖が悪いよな」

「あーははは……そうだね。でも、僕たち」

「ああ! これであのドラグに……」

『絶対勝つ!』


 アスランさんと俺とラディ。

 約束しあったあの日。ひと時も忘れることは無かった。

 

「こらこら。そんな焦っても仕方ないでしょ。まずは特訓。それからね」

「はーい……」

 

 こうして俺たちは宴の夜を過ごしたのだった。

 明日はいよいよ千年王国祭と任証をもらえる日だ。

 どんな依頼が受けれるのかも気になって仕方がない。

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