第34話 キュルルの恩返し
夜分の投稿となります。
明日も二話、お届け出来たらと考えております。
日曜日から一話ずつ、四十話までは休まずお届け出来るよう頑張ります!
――あれ。何か凄く、温かい。
「おや。起きたか」
「この声は、マシェリさん? うわぁ!」
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
目覚めたらマシェリさんに膝枕のようなことをされていた。
慌てて起きようと思ったけど、ご自慢の力でねじ伏せられてしまった。
「ほらじっとしてな。キュルルまで起きちゃうだろう?」
「あ……キュルルにも膝枕してくれてたんですね」
「ああ。考えてみればこの子はファウより子供だからな」
「はい。キュルルは良く頑張りました。僕だってもっと頑張らないと」
「何言ってるんだ。やっぱり凄いよファウは。あんなにも真剣に取り組んで。見てみろこいつの幸せそうな顔を」
「キュー……キュ……」
「可愛い寝息立てて……これから忙しくなるんだろう? ファウ」
「はい。すみません説明もせずに。僕、マトフさんのお店で働きます」
「分かってるよ。挨拶してきた」
「ええっ!? どうして分かったんですか?」
「他にいないだろう。ファウのことを知ってる人」
「はい……」
「それでな。店での仕事は三日に一度だ」
「三日に一度でいいんですか?」
「ああ。どのくらい仕事が出来るかは、ラギ皮紙を見せた。それ以上の計算も出来る。文字も書ける。熱心だし知識もある。そして何より……」
「何より?」
「ファウは可愛い!」
「僕、男なんですけど」
「しばらくは我慢して看板娘をやるんだな」
「男の子だって看板になれるでしょう!」
「まぁ、お客さんが男だと思ってくれたらだろうな。ファウ、リシュナにもらってた袋、開けてみたらどうだ」
「そういえば……」
マシェリさんに解放されて、自分の荷物から贈り物を開けてみた。
といっても、袋は竜の牙とかが入っている袋に入れたんだけど。
「これは……前掛けだ。リシュナと初めて会った時に着けてたものと同じ……」
「おかしいな……でも、よかったな。それを着けてれば、そのまま仕事に出れる!」
「もしかしてマシェリさん、女性服だと思ってたんじゃ……これもちょっと女の子用っぽい。はぁ。リシュナの思い出すって、やっぱりそういうことか……」
女の子の服が入っているよりはいいか。
あのとき着ていた服で仕事へ行かなきゃいけないなら最悪だった。
「それと、仕事に行かない日は私の仕事を手伝うか、師匠の下でラギ・アルデの訓練を行う。再来年……ファウを冒険者認定試験に受けさせる予定だ」
「僕が……再来年? でも最年少はマシェリさんの十歳だって」
「お前が更新してみせろ。きっとお前ならできる。ああ、それとだ」
「まだ何か?」
「私に計算を教えてくれ! 頼む!」
「もちろんです。少しでも返せる恩があるなら良かったです。早速始めてみましょうか」
「お願いするよ。ファウ先生」
「その呼び方はちょっと……どうやってやりましょうか」
「そうだな……まずはその葉っぱで試してみてくれるか」
「バイオレの葉ですね。じゃあ、左手に八枚、右手に三枚。右手から二枚、葉を落としました。残った左手と右手の葉を合計した枚数を袋にいれます。同じ袋をもう一袋用意しま
す。袋の中身は全部で何枚の葉が入っていますか?」
「えーっと……八に三枚で二枚で……九枚で、二十枚だ!」
「う……思ったより重症でした……」
「何?」
「十八枚です。二十枚ってどこから出てきたんだろう……落としたのを詰めちゃったのかな。計算については簡単にする方法がいくつかあるので教えます。マトフさんのお店では計算が主な仕事ですか?」
「いいや。恐らくは宣伝だろう。何かいい方法とか知っているか?」
宣伝か。そうすると広告が大事だけど、どうやって広告しているのだろう。
まさかたまたま気になった人を見つけてうちに買い物を! ってだけじゃないよね。
……ラギ車の出来事を考えるとあり得る気がしてきた。
「そうすると……チラシは紙が高いからダメ。ショーウインドウ方式かな。何屋さんか外からでも中からでもよく分からなかったし……いや、他にもテレビとかスマホとか何も無いし……媒体が少ないからうーん」
「おーいファウ。考えるよりもまず、キュルルに服を着せてお礼に行ったらどうだ?」
「ええっと。それって大丈夫何でしょうか?」
「大丈夫だ。ラギにしか見えないよ。大きくなったら見せられないだろ?」
「そうですよね……わかりました」
その後、元気に回復したキュルルを連れて、マトフさんのお店まで伺った。
やはりというかお客さんが全然いない。
仕事は二日後からで、明日にでも仕事内容をもう一度相談をしに伺う予定だ。
深くお礼を告げ、ネビウスさんの家へと戻る。
キュルルを抱き締めてその日はゆっくりと休んだ。
そして翌朝――すっかり元気になったキュルルは、驚くことが出来るようになっていた!




