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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
少年編  第一章 出会い

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第32話 自分に出来る事

「はぁ……はぁ……ここだよね、トの六って場所……」


 ……トの場所とマの場所は、城へ抜ける道にある商店街エリアだったんだ。

 この世界へ来て、俺を知ってる人は多くない。

 本当に雇ってくれるのかも分からない。

 それでも、今の俺に興味を持ってくれて俺が迷惑を掛けていないと思う人。

 たった一人しか思い返せなかった。

 マシェリさんにはこれ以上頼るわけにはいかない。

 ネビウスさんにはこれからお世話になる。

 部屋だって貸してもらってる。

 キュルルは自分で助けるって決めたんだ。

 マシェリさんもネビウスさんも、俺を子供だといって何でも手助けしてくれる。

 それに甘えてばかりいて、いいわけなんて無いんだ。


 ――商店街通りにある綺麗な外観のお店まで来ることができた。

 驚くことに窓の部分が一部透明に見える。

 ガラスなのかどうかは分からないけど、外からちゃんと中が見える。

 ネビウスさんのお部屋には無かったから、高いものなのだろうか。

 店内に入ると直ぐに扉を閉めて、周囲を観察してみる。

 商品は小物を含め、様々なものが並んでいるように見える。

 店内は店員の女性以外誰もいない。


「すみません。このお店、トの六の住所であっていますか?」

「あっていますよ。何かお求めですか?」

「僕、マトフさんにラギ車で仕事へ誘われて伺った、ファウって言います。マトフさんはご在宅ですか?」

「あら。主人のお客さんだったのね。直ぐに呼んできますね」


 優しそうな女性だ。奥さんかな? 

 お客が誰もいないってことは、苦労しているのかもしれない。

 これだと……厳しいのかな。

 女性は直ぐにマトフさんを連れて来てくれた。


「おや? 君は確か……ラギ車で会ったお嬢さん」

「僕、男なんですけど」


 これで何人目だ! いや、今はそんなことどうでもいい。


「あの。それよりもここに、アセナキの根って置いてないですか!?」

「アセナキの根? あるにはあるが……」


 女性の店員と顔を見合わすマトフさん。

 少し驚いた顔をしている。

 本には特に記されていなかったけど、珍しいものだったのかな。


「本当ですか!? お願いします。譲ってください!」

「……何か訳ありのようだね。話を聞いてもいいかな」

「はい。あの……譲ってくださいと言っておいて図々しいのは承知の上です。僕の、大事な家族を救わないといけない。なのに僕、お金すらもってなくて。だからここで働きます。どうかお願いです。この通りです」


 この世界で今自分がやっているお願いの仕方が、正しいかなんて分からない。

 でも、気付いたら俺は土下座をしていた。

 それほど真剣だった。

 キュルルを失うかもしれないなんて、考えたくも無かった。

 まだ、キュルルと一緒にいて日は浅いけど。

 俺にとってはかけがえのない家族。

 ――あの日会えなくなった家族と一緒なんだ。


「うっ……ううっ」

「あなた……」

「……ああ。これを持っていきなさい。急ぎなんだろう? 話は今度来た時にでも聞くから」


 そういって、アセナキの根と思われる包みを渡してくれるマトフさん。


「でも僕、担保になる様なものは何も……」

「大丈夫。これは売り物じゃない。仮にこのまま君が戻らなかったとしても、犯罪者にはならないから」

「でも、僕は働いて返さないと!」

「うん。だから信じて待っているよ。君の大切な家族が良くなって、元気に笑う君が戻って来るのをね」


 ポタポタと、目から落ちる雫。

 俺の目からは涙が止まらなかった。

 自分の思いを正直に伝えれば……思いは伝わり返ってくるのだと、本当にそう思った。

 ――前世の父の言葉が、頭をよぎる。

 

「竜也。母さんを頼む。助けて欲しい時はちゃんと誰かに相談しろ。きっと、助けてくれるから。人っていうのは相手が真剣であれば真剣であるほど、ちゃんと相談に乗ってくれるものだぞ――」


 お父さん。あなたの……言っていた通りでした。

 俺は結局、前世で誰も頼れなかった。俺が頑張れば母さんは大丈夫だって。

 でも、きっと俺が死んで――母さんは、母さんは……。


「うわあああああああああ……有難う、ございました……このご恩は、必ず、必ず返しますから……!」

「ああ。待っているよ」


 俺は涙を拭い包を受け取ると、もう一度深く礼をして受け取ったアセナキの根を手に持ち、ここまで来た道を引き返すため走りだす。

 今まで考えないようにしてきた思いが……爆発してしまった。


 ――七歳の体からふぁうれる涙……それは、ずっとずっと小さい雫で、キュルルの許へ帰る道を濡らしていった。


 ファウが去った後のお店では――「あなた……いい子見つけたわね」

「俺もそう思う。本当にたまたまだったんだがな。あんな顔する子は初めて見たよ。ロロアも生きていれば、あんな風に育ってくれたのかな」

「きっとそうよ。それで、本当に雇うの?」

「それはあの子次第。これでも俺は商売人だ。人や物を見る眼は持っているつもりだ」

「そうね。お店の宣伝は上手くいっていないけど」

「それはこれから何とかしてみせる。なぁ……今日は少し飲むか」

「そうね。付き合うわ」

ファウという子の思いを込めた、大事な場面。

人はなにかをなすとき、感情的になる。

その思いが強ければ強い程涙は流れ、涙は自分にも他人にも強い感情を与えます。

泣きたいときは多いに泣き、笑いたいときは大いに笑おう! 

それが人間なのだから。


追記です。末尾部分が若干三人称視点なので、どうしようか迷いましたが残すことにしておきます。

本来は一人称視点ナレーターで統一しないといけないのですが、この部分は消したくなくて。

視点に気付いたのは2024年の4月頃なので、この辺はまだまだでしたね。

早い段階で修正をかけれてよかったと思っております。

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