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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
少年編  第一章 出会い
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第29話 エストマージ国、到着

「ファウ、大丈夫かー」

「うう、まさかこんなに揺れるなんて……」


 ラギ車に乗り、既に日が暮れ始めた。今は二回目の休憩。

 俺は……乗り物酔いをした。

 前世では車や船、飛行機に乗ったことくらいある。

 どれも乗り物酔いなんてしなかった。

 道の整備具合や乗り物の性能が段違いに良かったことを痛感した。

 あれは、過去の研鑽(けんさん)の賜物と言える。

 どれほどの年月を掛けたら、あんなに崇高(すうこう)な乗り物が出来るのか。

 それに比べてこのラギ車は……揺れが激しくてとても気持ち悪い。


「少し……あー駄目です。もうちょっと……」

「全部出しちまいな。ついたら師匠のとこで食事を取らせてもらおう」

「う……今食べ物の話は……」


 今朝取った美味しい食事は全てここに置いていこう。

 キュルルがとても心配しているようだが、それは食べちゃダメ! 


「ふぅ、ふぅ……お水を……」

「あまり飲み過ぎるなよ。ほら」

「はい……何でマシェリさんは平気なんですか」

「慣れてるからな。今後はこんなものじゃ済まないぞ。早く慣れておくんだな」

「うっ……これより酷いとか考えられない……」


 お母さん竜に乗った時は全然平気だったのに。

 外を見ている方が落ち着くのかな。


 ――再び馬車に乗り、気持ち悪さを抑えながらエストマージを目指す。

 隣にいるマトフさんが大きく息を吸ってみろとポーズをとっているが、それどころでは無い。

 道中幾度かトラブルはあったものの、無事にエストマージへとたどり着けた。

 朝に町を出発して到着は早朝。本当に丸一日かかるんだ。


「おーいファウ。着いたぞ。大丈夫か?」

「は……い。少し気持ち悪いけど、ようやく慣れたようです」

「キュルルー……」

「キュルル、元気無いな。既に兆候があるのか?」

「……いえ。熱はないようです。ずっとくっついてたから、体温に変化があれば直ぐ分かりますよ」

「そうか。なるべく早く師匠の家へ向かおう」


 まだ具合は悪いが、キュルルを連れてラギ車から降りながら返事をする。


「……はい! ……って、うわぁ!? ここがエストマージの都ですか。想像を絶する大きさだ。それに……」


 自分が想像していたものとは比べ物にならないほどスケールの大きい都市だった。

 ここが異世界だとはっきり分かる。

 今まで見て来た世界とは全く異なる世界。

 それが今――俺の目の前に広がっていた。

 高すぎる城壁。美しく彩られた周囲の木々。

 まさに城塞都市。

 高い城壁の外からでも分かるほどの建物が見える。

 中央位置付近にうっすらと見えるようなお城。

 この周囲は道も整備されている。

 ラギ車に乗っていたから全然気付かなかった。

 途中から乗り物酔いが楽になったのは、道が段違いに良くなったからだ。

 これが……巨大都市。


「さぁ行くよ。ファウ。お前の滞在許可証を発行しないと」

「う……まさかここでもお金が」

「いいや。七歳で見受け人の私がいるから大丈夫だ」

「何から何まですみません……」

「いいよ。それにちゃんと手伝ってもらう予定だ」

「はい!」


 俺とマシェリさんはエストマージへと足を踏み入れる。

 入り口……巨大過ぎる程の門前には、いかつい恰好をした髭おじさんがいる。

 甲冑は被ってない。

 しかも人数は四人。厳重な見張りだ。

 外部からの敵が多いのだろうか。

 ここでまず、不審そうな者は排除されるのかな。

 そして、入り口でも相変わらずラギ・アルデで調べられる。

 青色の光のものはどんどんと通されていくが、その奥で手続きが必要らしい。

 マシェリさんは首からぶら下げている物を見せ、それが紙だと分かる物にサインをして俺も通してもらえた。

 あの紙、今まで見たどれよりも高品質だ。

 しかも使用していたのはインクっぽい。

 証拠に残す物が消えちゃったら困るもんね……あれをどうにかして手に入れたいな。

 俺はこの旅で日記をどうしても付けたいと考えている。

 とても長い旅になる。

 帰った時にそれらをただ話して聞かせるより、伝記にした方がいいと思った。

 どうにかしてこの町で手に入らないかな。

 ……マシェリさんに相談する必要がある。

 この町に来るまでに考えたことを。


「まずはジの五に向かうよ。ファウ」

「ジの五? そういえば場所を表すのが、エストマージの文字で表してるんでしたよね。そうすると、時計周りに一番東って事ですか?」

「察しがいいな。しかし時計っていうのは何だ?」

「時間を計測する道具なんですけど……ここにはやっぱり売ってないんですか?」

「そんな便利な物があるのか? ……いや待て。聞いたことがある。確か師匠に……しかしそんな名称だったかな」

「いえ。恐らく買えない物だと思うのでいいです」

「そうか。では先を急ごう」


 時計が安くなったのなんて近年の話だ。

 ましてや精工に時間を表せる時計なんて、高い文明がないと不可能だ。


「どうした? まだ気持ち悪いのか?」

「いえ。少しこの先のことを考えていて」

「師匠の下へ着いたら私は仕事の報告に向かうから少し外すよ」

「そうなんですか? 僕、迷惑じゃないですか?」

「そんなことは無い。誰の師匠だと思ってるんだ。私より余程、お人好しだよ」

「ちょっと、緊張します……」


 ――広い街中を多くの人を通り過ぎながら歩いて行くと……信じられないような人を見た! 


「あ、あの! ああああ、あの人。人? 人!?」

「ん? オオグニ族か。初めて見るか?」

「オオグニ族!? 人……ですか?」

「……外見が異なる者は気になるか?」

「いえ。当たり前のように思っていましたけど、そうですよね。遺伝子的に日本人と外国人だってまるで違うわけだし……」

「どうした?」

「いえ。何でもないです」


 明らかに人種が違う。亜人……と言えばいいのかな。

 でもそれは、向こうから見た俺だってそうだ。

 これほど大きい都市だ。色々な種族がいたっておかしくない。

 もしかしたら小説で読んだような、耳の長い種族とか、小さくて力強い種族とかいるのかな? 

 凄く気になる。

 でも、同じような人しか住んでいない方が本来は不自然なんだ。

 前世だって違う外見の知的生命体が住んでた可能性だってあるわけだし。

 ――そんな周りの人々を見ながら歩くこと一時間ほどは経っただろうか。

 立派な家……というか研究室のような場所に着いた。


「ここが師匠の家だ」

「不思議な形ですね」

「師匠。入るよ」

「ええ!? そんなノックもせずに」

「今開けるな!」

「えっ?」

「うわ、凄い……冷気?」


 部屋が氷で埋め尽くされてる。ここは一体何なんだ!? 

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