第27話 初仕事
買い物を終え、荷物も一度宿に置いて新しい服にも着替えた。
そして今は――「目を逸らすな! 撃て!」
「ガルンヘルア!」
「グルウウウウウウ!」
……狩りに来ている。
正直なところ、足がすくむ。
でも、獣の皮を持って帰る必要があるらしい。
ガルンヘルアが使えるのを分かっていたから、俺は後方で支援。
場所は町から出て直ぐの草原だ。
他にも冒険者らしき人がいるけど、違う場所で狩っている。
町から近いこの場所によく出現するのがロブゥ……昨日食べたお肉がそうだ。
「マシェリさん! 東にももう一匹います! うわ、こっちへ突進してくる!」
俺の方へ突進してくるロブゥが一匹いた!
急いで走って西寄りに回避すると、直ぐにUターンして戻って来る。
四足歩行で体長は一メートル程。
突進されてぶつかったら、骨の一つや二つ折れてしまいそうだ。
Uターンしたロブゥの道をふさぐようにガルンヘルアを放っていくと、ロブゥはマシェリさんの方向へ走っていく。
的確に誘導出来た!
「いいぞ。はぁっ!」
そのままロブゥを一閃すると、どさりと倒れる。
これで二匹。あらかじめ借りておいた荷車に乗せる。
この荷車自体の貸し出しは無料だったが、返却時にちゃんと借りたお金分の代金が取られる。
貸出場がそのまま解体場所になっていて、肉の料金から荷車貸し出し料金、解体
料金を差し引いたお金がその場でもらえる。
つまりその場でもらえるお金は雀の涙だ。
その代わり、依頼品の皮を都まで運べばそれなりにお金がもらえるらしい。
荷車をわざと壊したり、持ち逃げしたら犯罪者だ。
「よし。持って行こう。これで三つ依頼達成だ」
「マシェリさんならもっと難しい依頼も受けれるんじゃないですか?」
「言ったろ? 依頼は三つしか受けれないんだ。これが三つ目。一番ついでの依頼だよ」
「そうでしたね……それじゃいよいよ都に向かうんですね」
「ああ。エストマージへ向かう。宿に戻ったら今後の話をしよう」
「都までは近いんですか? キュルルの件が……」
「心配ない。一日もあれば到着するから間に合うだろう。それに都の方が都合がいいだろう?」
「そうですね。あまり長く宿にいてもお金が心配ですし……それは都に行っても同じかな」
「いや。都には師匠がいてね。その件も含めてゆっくり話すよ」
この町とは早くもお別れか。
目的地へはどうやって向かうんだろう?
師匠っていう人も気になる。
――荷車を引いて町に着き、ロブゥを解体してもらう。
しばらくすると、担当者は綺麗に洗浄された皮を二枚持って来た。
それ以外の渡された代金は銀貨三枚だけ。
一匹で銀貨一枚と銅貨五枚ってこと!? 命懸けでそれだけ?
……きっと皮が高いんだ。そうに違いない。
「マシェリさん。依頼の皮を渡すといくらもらえるんですか?」
「革細工商会の見習いに頼まれた仕事だ。皮二枚で金貨一枚だな」
「何て割の悪い仕事を引き受けてるんですか! もっと多く……いや無理だ。アイテムボックスとかあるわけないんだし……せめて重さを軽く出来る、ラギ・アルデの力が使えれば……」
「ついでの仕事なんだ。直ぐ終わったし気にしなくていいよ。今回の依頼は全部合わせても赤字だと思うけど」
「赤字で冒険者やってたらいつか破産しますよ!」
「よく知ってるな。確かに二回程破産したぞ」
「はぁ……お金の管理は僕がやった方が良さそうですね……」
「なぁに。いざとなったらフェスタで野宿すればいいさ」
「それはどうしようも無い時だけにしましょう! 女性が野宿なんて襲われたらどうするんですか!」
「そうか? 襲って来るような奴は返り討ちにしてやるさ」
そういう問題じゃないと思うんだけど。
この世界の女性冒険者ってそんなにたくましいの?
でも、マシェリさんはどう見ても強そうだから、相手があくどい手段で来なければ負けないのかな。
と、話し込んでいたらキュルルが腹ペコの様子。
「キュルルー……」
「キュルル、お腹空いたよね。急いで宿に戻りましょう」
――キュルルに催促されて急いで宿に戻る。
既に服を着替えてしまったので、残念そうな顔をしているリシュナに挨拶だけ済ませて、部屋で餌を上げる。
ロブゥを退治するついでにキュルルの餌補充も行ったので、しばらくは餌に困らないだろう。
「先に今後の話を済ませよう。キュルルの発熱は四日後に来るかもしれないのだろう? 明日、ここを発つとして、エストマージに到着すれば残りは二日。充分余裕はあるだろう」
「そうですね。宿代は先払いですか?」
「ああ。今日分までは払ってある。明日の朝、ラギ車に乗ってエストマージへ向かうぞ」
「ラギ車?」
ラギって本当に便利なんだな。
前世で言う馬みたいなものかな?
いや、紙にもなるから山羊? うーん。それにしてはもっとたくましくて大きかったな。
「そのラギ車で都まで一日掛かるんですね」
「ああ。乗車には片道で銀貨三枚」
「……往復で銀貨六枚!? 宿代はいくらだったんですか?」
「宿泊で銀貨二枚。食事で大体銀貨一枚から二枚だよ。何を食べて飲んでもいいやつにしたから、一泊銀貨五枚だったんだ。どうだ、お得だろ?」
「全然お得じゃないです! 僕の分もそれにしたんですか?」
「ああ。昨日払っておいた」
「ああ……それも借金に書き足しておきます」
「借金? そう言えば何か書いてたけどそれは何だ?」
「勝手とは思いましたけど、マシェリさんのお金管理がずさんだったので、ラギ皮紙に書いてるんです。僕が借りたお金も忘れず返せるよう、一緒に」
「ファウ……凄いな。真面目に細かくお金勘定する奴、見たこと無いぞ」
「それは冒険者だけです! 商売人だったらちゃんと記帳してますよ」
全く。お金はもめごとの種になりやすいからしっかりしないと。
昨日と今日分を合わせて金貨一枚の宿代借金を追加。
既に借金はキュルルの服と自分の服とラギ皮紙一枚分。
金貨二枚と銀貨三枚。
そして宿代が合計金貨一枚。
明日、ラギ車に乗るからさらに銀貨三枚増える。
併せて金貨三枚と銀貨六枚だ。
……旅立ち前にこんなにも借金があるなんて。
いや、元々裸一貫で死ぬ寸前だったことを考えると、まだマシなのかな。
肝心のマシェリさんの所持金は金貨一枚とロブゥの肉引き取り金を合わせて銀貨十二枚。
明日六枚無くなるから……金貨一枚と銀貨六枚しかなくなる。
……急いで返さないといけないよね、これ。
何せ俺の借金の方がマシェリさんの所持金より多いわけだし。
「マシェリさん。都に着いたら僕に出来そうな仕事、直ぐ教えて欲しいんですけど」
「そうだな。師匠に相談してみようと思っている。君の今後も含めてだけど」
「お師匠さんていうのは、マシェリさんの冒険者としてのお師匠さんなんですか?」
「いや。トリシュタイン・ネビウス。彼は共に旅をした仲間であり、ラギ・アルデの力の使い方をある程度教えてくれた、術士だよ」
「術士……?」




