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異世界転生 竜と共にあらんことを  作者: 紫電のチュウニー
第三章 ウラドマージ大陸、序幕
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第93話 ウラドマージ、鈴の音の洞窟へ出発

「私がついていくのはいいんですけどぉ。まだ依頼は受けられませんよ?」

「えー!? 何でだよ姉ちゃん。俺たち三つ終わっただろ?」


 昨日の宴会を終え、俺とラディ、キュルルにナギを連れてマージを訪れている。

 三つの依頼報酬受け取りと同時に、再度三つの依頼を受けようと考えていたが……どうやら報酬受け取りと同時に受注というわけにはいかないようだ。

 

「次々に優秀な方が依頼を受けては報告を繰り返すとですよ? 美味しそうな依頼だけをひたすら受け続ける人が出ちゃうんですよね」

「それは確かにそうですね。休憩期間って訳ですか」

「その通り! 依頼は沢山あるんですけど、ベテランさんは目も肥えてますから。当然、マージとしても依頼制限を個人に付与したりもするんです。まぁお二人は駆け出しなのであんまりないんだけど……」

「わわ、わりゃしのせいで……ごめんなさいです……」

「気にすんなって。鈴の音の洞窟に行ければどーにかなんだろ?」

「そうだね。ナギさんもいるし、頑張っていこー!」

「まふっ! 任せて欲しいのでありまふ!」

「ツファル族の方でしたよね? 女性……なのですか!?」

「はい、ナギと申しまふ」

「まふまふで可愛い感じれす。よよしくお願いします!」

「なんか護衛対象増えてねーか、これ」

「ミルルさんって治癒術を使えるんですよね? それならいてもらった方が絶対良いよ。僕じゃまだ、ラディが怪我しても上手く治せないもの」

「それって薬草とかじゃダメなのか?」


 うっ……なかなか良い質問だよラディ。

 でも、薬草だってそんなに沢山持っていけないし、治癒術みたいに即効性があるわけじゃない。

 ゲームみたいに体力が二十五回復した! とかだったら面白いんだけどね。

 

「一応薬草も持っていくでありまふ。でも、治癒術士一人は必ずいた方が良いですよ」

「ふーん。俺たちってけっこー危ない冒険してたんだな」

「そうだね。灰様樹の森に向かったときもそーだったもんね」

「ああ。クルンの兄ちゃん、大丈夫だったかな……」

「きっと大丈夫……だよ。そう信じることしか出来ないんだから」

「キュー、キュキュー!」


 話が少し暗くなってしまったが、そんな俺たちをミレンの後ろから隠れるようにして見つめる女性陣。

 なんでナギさんまでそうしてるのかなぁ。


「さて、んじゃ出発するかぁ!」

「待って待って。ミレンのお母さんの許可もらわないと」

「大丈夫れす。わりゃしからちゃんと伝えてきたのれす。ミレン、おっちょこちょいで忘れちゃうれすから」

「くーっ! 何て可愛い子。もう、嫁? 私の嫁にしていいですかっ!?」

「お嫁にはまだ早いから婚姻を解除しに向かうんですけど……」

「そーだったんですか!? そんな勿体ない! 一体誰との婚姻を解除するというのですか!」

「俺たちのだろ?」

「……どういうことなんですか!?」

「そういえば事情を説明して無かったっけ」

「ああ。全然。一言も伝えてねーぞ」

「実は……」


 これまでの経緯をミルルさんとナギさんにも話しておいた。

 するとミルルさんは……「ああ。何てことなの。一人の少女に二人の男が奪い合う。ダメよ、ダメなの。私はまだ幼いからあなたたちとは結婚出来ない。でもいつか……許されるなら私はあなたたち二人の

どちらかと……ああ、でもお二人の想いのどちらかを裏切るなんて、私には、私には……」

「結婚しないために清廉潔白を示すため、その洞窟へ向かうんですけど!?」

「婚約破棄!? 若干九歳で……ああ、なんてこと……」

「まぁ俺たち、変なしきたりに興味ねーもんな。それにやっぱよ。女だって強くねーと」

「あはは……ラディより強い女の子ってどんな感じの子だろ……」

「まふっ! ナギのような子に違いありません!」

「そーいやナギって女だったな。俺より強いか勝負してみるか?」

「あのぉ……」


 はっ!? ミレンを放置して話が暴走していたようだ。

 こんなことしてたら日が暮れてしまう。そろそろ出発しよう。


「ミルルさん。地図を」

「もー。私は反対なのになぁ。分かりましたこれも仕事です。この辺には詳しくないですよね? 説明しますよ。まず現在地が最も西にあるこの地点です。マルンモーのお肉を取った位置が町を出て少し南に進んだこの荒れ地。鈴の音洞窟はこの荒れ地から更に東へ進み、浅瀬を抜けた先にあります」

「結構遠いな。一日じゃ着かねーのか」

「そうみたい。一泊は必要かな」

「この浅瀬で魚が取れまふ。魚取りはナギにお任せ下さい!」

「頼もしいです。まずはこの浅瀬を目指しましょう。川周辺は危ないかもしれないので、少し離れたところでフェスタを張ろうか」

「おお。フェスタが二つあれば問題ねーもんな」

「それじゃ今度こそ、出発ー!」

「まだだって……食糧とか何も準備出来てないよ……」

「それでは私が直ぐに準備してきます! ついでにお化粧直しも。オホホホ……」

「キュルルちゃんも一緒に行くれすか!?」

「うん。毎回置いてったら怒られちゃうもん」

「キュー! キュー?」

「か、可愛い……」

「この子、人の言葉が分かるのかしら?」

「大分分かるようになってきたんじゃないかな。ね? キュルル」

「キュー!」

「しっかしキュルルも大きくなってきたよな」

「うん……そろそろラディの作ってくれた装備もきつくなってきたかな?」

「んじゃさ。ゼフィスの兄ちゃんに用意してもらおうぜ」

「でも、無料じゃ作ってくれないでしょ?」

「情報は金になる……だろ? 何か金になりそうな情報、仕入れてくればいいじゃねーか」


 四人でしばらく話し込んでいると、荷物を抱えてお色直しもすませたミルルさんが走ってやってくる。

 走ってやってきたのでお色直しも若干乱れている。

 この人はきっと気にするけど気に出来ないタイプの人だ。


「ぜぇ、ぜぇ……はい、準備完了です! 」

「んじゃ改めて……出発だ!」


 港町を出て道なりに進み始める俺たち。

 気温は……体感だけど三十度以上の常夏感がある。

 乾燥しているから日本の夏とはまるで違う。

 時折通る風が実に心地良い。

 汗をかいても直ぐに引いていってくれる。

 だが、水分補給は定期的にしないと危ないだろう。

 

「にしても、なんでミレンはそんな涼しそうな顔してられんだ……」

「わりゃし、そんな顔してりゅれすか?」

「慣れてるんだろうね。僕もまぁ、平気かな」


 何せ日本の夏は暑い上にジメジメしてる。

 こんなもんじゃすまない。

 荒れた大地をゆっくり進んでいるが、キュルルはあちこち匂いを嗅いでいる。

 何か懐かしい匂いでもするのだろうか? 


「ここウラドマージの気候は高温かつ雨がほぼ降らない乾燥地帯です。水がいつでも不足しがちですが、川はあります。これは地下水脈が走っており、そちらが地上へ流れ込んでいる場所があるようですよ」

「へぇー。姉ちゃんってダメダメかと思ったら結構真面目な顔も出来んだな」

「あらー。悪いこと言うのはこのお口かしら。初めて、もらっちゃいますよ?」

「わわっ。顔近づけんなよ姉ちゃん!」

「あはは……やっぱりミルルさんだね」

「だってぇー。可愛いお顔なんですもの。将来は絶対、美男子になること請け合いです! はぁ……私ももう十年若かったらなぁー。平均年齢低すぎですよ、このパーティ」

「そーいえばナギはいくつなんだ?」

「まふ? ナギはええっと……一、二、三……」

「おい。年齢指で数えだしたぞ……」

「もしかして算術は習ってないの?」

「まふ……お師匠様に教わってる最中です……」

「わりゃしも計算苦手れす……」

「そっか、そうだよね。学校があるわけじゃないんだから猛勉強しないとだもんね」

「ファウはすっげーんだぞ。難しい計算直ぐ終わるんだぜ!」

「まふ? そんなことお師匠様でも出来ないでありまふ!」

「わ、わわ……わりゃしより可愛いだけじゃなくて計算も……はう……」

「ラディ。僕はたまたま早くから勉強しただけだよ。みんな勉強すれば直ぐ出来るようになるから」

「んじゃ、旅の最中教えてやれよ。そんな長い旅じゃねーけど」

「お願いしまふ!」

「わ、わりゃしも……」

「私も!」

「……なんで姉ちゃんまで混ざってるんだよ」

「だってぇ……この若さに混ざりたいんですもの……くすん」

「あはは……それよりほら。ちゃんと見て歩かないと転びますよ。ね? キュルル」

「キューールル!」

「キュルルは暑いみてーだな。氷を定期的に吐きながら進んでる」

「うん。飲み水は僕が用意するから」


 冒険はまだ始まったばかり。

 鈴の音の洞窟では一体何が起こるのか。

 期待と不安を胸に、俺たちは荒れ地を進んでいった。

いよいよ鈴の音の洞窟へ向けて出発です。

出発者名はファウ、キュルル、ラディ、ナギ、ミルル、そして護衛対象のミレン。

五人と一匹の冒険の始まり始まりー!

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