(完結)
これでおわりです。
お楽しみください!
女は人差し指を胸の前でツンツン……しながらうなだれた。
「わかったあ。どうせ全然お金貰えないしぃ、帰りますう~」
親父はちょっと淋しい気もしたが、おおよそほっとした。そしてふと気付いた。
「あっ、そうだ! あの金剛力士像も、明日になったら葉っぱだかどんぐりだかに戻るんだよな?」
「あ、あれ? あれだけ本物なんだけど!」
「はあ!?」
すると突然、ピンク色の煙が店中を埋め尽くした。
カウンターの中も一面ピンク色に染まり、親父には何も見えない。
しばらくすると煙はだんだん薄くなり、やがて捌けたが、女の姿が見当たらなくなっている。
そしてそこらじゅうに、どんぐりの実と落ち葉が散らばり、ただ、金剛力士像だけが相変わらず店のど真ん中に鎮座していた。
「何でよりによってこれだけ本物なんだよ! いい加減にしろ!」
親父はやむなく、慣れないスマホで苦労しながら美術骨董屋を検索し、出張査定してくれる店を探した。
「今すぐ! すぐに来てください、お願いしますぅぅぅ」の声に、二つの業者が応えてくれた。
彼らは質屋の店内を見ると、揃って呆然とした。
「あのお、買い取りはいいスけど、これドアから出せないんですけど……」
業者の男たちは口を揃えて訝しんだ。
「親父さん、一体これどうやってお店の中に入れたんですか?」
親父はもう説明するのが面倒だった。
「俺が知りたいくらいだよ!」
業者たちは、まるで狐につままれたようにキョトンとしていた。
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