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(2)

次は何が持ち込まれるかな?

お楽しみください〜

「だーめだめだめ! こんなのうちじゃ引き取れません!」


親父はルビーだかどんぐりだかわからない粒を全部両手で払い落とした。


女は口を尖らせ不満そうにしていたが、再びけろりと続けた。


「じゃあこれは?」


「……まだ何かあるんですか?」

 

は、また指をパチンと鳴らす。

すると店の天井まで届く大きなピンク色の煙がモコモコとあがった。

親父の視界はピンク色に染められた。


やがて煙が捌けると、そこにはさっきまではなかった金剛力士像がそびえ立っていた。


石でできたその像は、手狭な店内に対してあまりに巨大で、肘や金剛枡こんごうますがガラスケースや棚にめり込み、そこらじゅうにヒビが入っていた。


「わーーーーー! なんだこりゃ! 

デカ過ぎ、重過ぎ! 

見ろ、そこのロレックス入ってるガラスケースに枡が突き刺さってるじゃねーか!」


「いや、でもこの力士像、マジモンの国宝級のヤツ。

しかも、『あ』のほうね。ほら、『あ・うん』の『あ』」


「そんなの知るか!」


「これ、作られたの鎌倉時代だよ。マジ古くない? 

で、で、おいくらぁ? 今度はめっちゃ自信あるし!」


「引き取れるかーーーー!」


「うっそ! ダメなの!?」


「こういうの預かってくれるのは、美術骨董のお店! うちは違うの」


「そうなんだ!?」


「それか博物館にでも持ってけ! 

てか、美術骨董の店だっていきなりこんな石像持ち込まれた迷惑だぞ! 

店ん中ぐっちゃぐちゃになるだろ」


「そうかも! てか、今もうぐっちゃぐっちゃだもんね」


「そもそもこれ、うちの自動ドア通らねえじゃねえか。

どうやって外に出すんだよ! この高さと幅! どう見ても不可能!」


「たしかにィ!」


「『たしかにィ!』じゃねえよ! もー無理無理無理! 

うちで扱えるのは、ブランドもののバッグとか、腕時計とか、宝石とか……」


「宝石さっき出したじゃん?」


「だから、あれはどんぐりだろ! どんぐりじゃダメなのよ。

うちはね、そう……貴重品! うちで扱えるのは貴重品だけ。

どんぐりはその辺に落ちてるから。貴重じゃないの、全然。むしろありふれてるのよ。わかる?」


女は、やっと理解ができたというように、切れ長の目をパチッと見開いた。

そして、鬱陶しいくらいにうんうんうんと繰り返し頷いた。


――変な女だが、たしかに美人なのは美人だ。


親父は一瞬女に見惚れた。

続きます!

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