表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

(1)

はじまりました!

「おじさーん、これっていくらになるぅ?」


とある質屋のカウンターに、派手な身なりの女性客がやってきた。

しゅっとした面長の顔に切れ長の瞳。

髪の毛はばっちり巻かれ、ミニスカートに黒いブーツ。

しっぽのようなふさふさのキーホルダーをバッグにつけている。


かなりのべっぴんだ。水商売の女かもしれない。

これはいいものを持ってそうだと、質屋の親父は期待した。


「どれどれ、見てみましょう」


「はーい!」


女がバッグを逆さまにすると、小さな茶色い粒がコロコロとカウンターに落ちた。

それは、どんぐりの実だった。親父は思わず、椅子からずり落ちた。


「いやいやいや、バッグからどんぐりって! お客さん、こんなん引き取れませんよ!」


親父はズレたメガネを直しながら呆れた。

心の中で「ヤぁバい客きちゃったなぁ~」と嘆きつつも、顔には出さず接客を続ける。


「こんなどんぐり、そのへんに落ちてるもんじゃないですか。

そんなんにいちいち値段つけてたら、うちのお店潰れちゃうから!」


女はしばらくきょとんとした顔をしていたが、「そおかしら。それなら……」と、どんぐりに向かってパチンと指を鳴らした。


その瞬間ピンク色の煙がモコッと指から湧いた。

そして、煙が散ったあとには、どんぐりの数だけの大粒のルビーがあった。


カウンターにゴロゴロ転がるルビーを見て、親父は大興奮した。


「うひょっ! うひょっ! ちょぉぉぉっと! 

こんな大粒のルビーがっ……ひい、ふう、みい……! 10粒も!」


「これなら、お金貰えるぅ?」


「もちろんです! もちろん、もちろん!……でもこれって、さっきまでどんぐりでしたよね?」


「てゆーか、今もどんぐりよ」


「……んっ……?」


「んー、まあ、なんていうか術で一時的にルビーに見せてるだけだから」


「ま、まさか! 次の日どんぐりに戻っちゃうとか?」


「戻っちゃうというか、今もどんぐりなのよ。ただ、ルビーに見せてるっていうだけで」


「はあ~~~~~? 一体どういう……」


ルビーをよく見ようと、親父が指で持ち上げると……。


「軽ッ! めちゃくちゃ軽ッ!」


「うん。だからさ、ルビーに見えてるだけで、それどんぐりだからね」


「じゃあだめじゃねえか!」


親父は思わず、手に持っていたルビーを投げ飛ばした。


床に落ちるときの「スコーン!」という乾いた音も、まさにどんぐりそのものだった。

よろしくお願いします^_^

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ