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アムール・コンフィット  作者: 鈴ノ音 光
1/8

01.

思いつきと勢いで書いた短編小説です。

少し甘さが物足りないかもしれませんが、よかったらお召し上がりくださいませ。

01.

子供の頃から念願だった、パティシエという夢。

それを35歳で叶えた俺、佐藤英輔さとうえいすけという男は明日、ついに自分の店を持つという夢を叶えるのだ。


けれど、これはまだ夢の始まりに過ぎない。

日本中の人々を、俺が作った菓子で笑顔にする──それが子供の時からの、俺の夢。

だから、自分の店を開いてからが、やっと夢のスタート地点なのだ。




そして今日は、店の宣伝を兼ねた催し──俺が作ったスイーツの、試食会を開いている。


「明日オープンの『パティスリー・アムール』です!宜しくお願いします!!」

俺の可愛い一番弟子、三ツ谷翼みつやつばさが、元気な声で宣伝してくれている。

(まあ、俺の弟子は今のところ彼女一人なのだが……)


俺も彼女に負けないよう、ニコニコと笑顔で自慢の菓子を、今後お客様になるかもしれない人たちに振る舞う。

「美味しい」「旨い」という言葉と、笑顔になる人たちの表情は、俺にとって何よりの喜びだ。




──そんな中。


「………」

ふと目に入ったのは、俺と同じ歳くらいの、眼鏡でスーツを着た男。

俺の自慢の菓子を食べて、表情一つ変えないその男の姿は、俺にはかなりの衝撃だった。




「何だ、あの人……」

「凄いですね……佐藤さんのお菓子を食べて、あの表情!まるで鉄仮面ですよ!!」

男が無言で立ち去ったのを見て、俺と翼は思わず本音を口にする。


甘い物が苦手だったのだろうか……なら何故、味見を?

ああいう人は、きっと俺のお客様になってくれないだろうなと、少し落ち込んだのと同時に、悔しかった。


日本中の人々を、俺が作った菓子で笑顔にする──それが子供の時からの、俺の夢。

だというのに、笑顔どころか、彼の表情一つ変えられなかったなんて。




「元気出してください、佐藤さん!」

「……ああ、そうだな!凹んでなんか居られないな!」

まだ夢のスタート地点で、挫けてなんか居られない。


俺は何とか笑顔を貼り付けて、試食の菓子を振る舞いながらも──やはり先程の男の事が、妙に気になって仕方がないのだった。

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