小説を書き始めてかわったこと LINE文末の。(まる)
「ねぇねぇ、バイト始めた?」
美咲が突然、そう問いかけてきた。
「んーん。してないよ。なんで?」
特に欲しいものもないからバイトはしていない。
就職のためにはバイトしておいた方がいいのかもしれないけど。
「バイト先の店長がLINEしてくるんだけどさぁ、文の最後に『。』がついてるの」
制服が可愛いからって理由で美咲はバイト先を選んでたっけ。
「んで?」
ちょっと言い淀んでいる美咲に先を促した。
「佳奈のLINEに。がつくようになったのは何でかなって」
「ふぇ?」
心臓がドクンと跳ね上がる。
慌ててスマホを取り出しLINEを確かめた。
たしかについてる。
ばっちりついてる。
短い文にまでついてるよ。
「な、何でだろ。スマホのせいだよ、きっと」
小説を書き始めたからか、文末に。がつくようにスマホが学習しちゃってる。
まだ、うまく書けないから美咲やみんなにばれたくない。
動揺を抑えつつ、スマホに責任に押し付けた。
でも、ちょっと言い訳が苦しい。それはわかってる。
美咲もちょっと細目になってこちらを見ている。
「ま、いっか。生きていればいろいろあるもんね」
「そうそう、色々あるよね」
追求を逃れられてほっと息をついたのを見計らったかのように、美咲はやさしい笑顔を私に向けてくれた。
「何をしているかわからないけど、話せるようになったら教えてね」
「ありがとう、がんばるよ」
美咲に読んでもらえる日が来ますように。